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【朝の読み聞かせ】新学期最初の読み聞かせにおすすめの本

転入生を迎えたクラスに

4月になり、1年生のときから朝の読み聞かせの時間を共にしてきた子どもたちももう5年生! クラス替えがあったので、初めての子もちらほらいますが、新学期最初の読み聞かせに何を読もうか、5年生ともなるとけっこう選書に悩みます。この時期、『さくら』(長谷川摂子文 矢間芳子絵・構成 福音館書店)なんてどうかなあ、と思ったのですが、文章がもう幼い子向けと感じられてしまうなど、彼らが読み聞かせてもらって満足できる本、しかも10分程度の長さとなるとなかなか難しい。

ということで、選んだのが『ぼくのいぬがまいごです!』(エズラ・ジャック・キーツ&パット・シェール作・絵 さくまゆみこ訳 徳間書店)、既に品切れのようで、中古でしか入手できませんが、こんなときこそ図書館の出番です!

ストーリーはホワニートというプエルトリコ出身の8歳の男の子がニューヨークに引っ越してきたけれど、スペイン語しかわからない、しかも飼っていた犬がいなくなってしまって途方に暮れている・・・というところから始まります。行く先々で出会った子どもたちに助けられながら、無事犬と再会するという、筋立てとしては単純ですが、言葉が通じない心細さの中でも大好きな犬をみつけようとがんばるホワニート、そしてそんなホワニートを地元の子どもたちが一生懸命助けようとする様子がとても素敵です。たまたま、クラスに転入生もひとりいたので、そんなところからも共感を持ってもらえるかも・・・と選びました。

スペイン語に触れる

もうひとつ、この絵本を選んだ理由は、高学年になった子どもたちに「異文化との出会い」をポジティブに感じてほしかったから。最近の子どもたちは学校で英語の授業もあるわけですが、この絵本は英語以外の言葉で生きている人たちもたくさんいる、ということを自然に教えてくれるような気がします。

私は子どもの頃観ていた「セサミストリート」でプエルトリコという地名、そこに暮らす人々がスペイン語を話すことを知りました。(プエルトリコ出身者のマリアというお姉さんが美人で好きでした。)読み聞かせの前に子どもたちに「プエルトリコって知ってる?」と聞くと、「知ってる!」という声が何人かから挙がりましたが(すごい!)、念のため、地図帳を開いて、プエルトリコの場所とニューヨークの場所を示し、「プエルトリコはアメリカの一部だけどスペイン語を話す人が多い」ということを説明しました。ちなみに、我が家にあった小学生用の地図帳にはプエルトリコが載っていなかったので、高校生の長男の地図帳を使わせてもらいました。

『ぼくのいぬがまいごです!』には、ホワニートが話すスペイン語がたくさん出てきます。私はスペイン語を勉強したことがないので、アプリをダウンロードして、絵本に出てくる言葉の発音を調べてみると・・・Rの巻き舌がむ、難しい! 練習はしましたが、どうしてもうまく発音できず、読み終わった後、「ごめんね、ちゃんとしたスペイン語は後で調べてみてね」と子どもたちに伝えました。それにしても、今はネットやアプリで外国語の発音もすぐ調べられるのですから、本当に便利な世の中です。

おまけに、ほっこりした日本の昔話を

『ぼくのいぬがまいごです!』が私の読む速さでだいたい8分弱、始まりが遅くなったこともあり、15分の読み聞かせの時間で2分程度の残り時間がありました。これで終わりにしても良かったのですが、先生もまだ帰ってきていなかったので、日本の昔話「鳥呑み爺」をストーリーテリング(本を見ないで語る)で語ることにしました。

3分かかるかかからないかの短いお話ですが、「あやちゅうちゅうこやちゅうちゅう にしきさらさら ごよのさかずき もってまいろか びびらびん」という鳥の鳴き声が楽しく、その鳥を呑んでしまったおじいさんが幸運をつかむというストーリーが年齢問わず子どもたちを惹きつける、いわゆる「ハズレのない」昔話です。私がストーリーテリングの勉強を始めた最初の頃に覚えた話で、いくつかテキストがありますが、私は言葉のリズムが心地よい『日本昔話百選』(稲田浩二・稲田和子編著 三省堂書店)を元にしています。

この子どもたちが小学校1年生のときにあるクラスで語ったおはなしではあるのですが、その後クラス替えも何度かあり、聞いたことがない子もいるし、何度聴いてもおもしろいおはなしだし、いいかなあということで語ることにしました。ストーリーテリングの良さは、聴き手の目を見ながら語るので、反応を直に感じられること、そして、聴き手と語り手がおはなしの世界を一緒に楽しめることです。不思議な鳥の鳴き声、そしておじいさんがつい鳥を呑んでしまうあたりからぐぐっとおはなしに惹き込まれていく子どもたちに、改めてこのおはなしの持つ力を感じました。鳥のさえずりがにぎやかな季節、子どもたちがこのおはなしをきっかけに鳥の声に耳を傾けてくれると嬉しいなあと思います。

読んでいただいて、ありがとうございます!