[朝の読み聞かせ]サンタを信じなくなった年頃の子どもたちに
読み聞かせでは季節感を大切にしたいと思っています。ということで、今の時期は、やっぱりクリスマスの本!
ただ、「クリスマスの本」と言っても、それこそ山のようにあります。読み聞かせる相手は小学校4年生の子どもたち。「あれもいいな」「これも読んであげたい」とあれこれ迷った末、『急行「北極号」』(絵と文 C・V・オールズバーグ、訳 村上春樹 あすなろ書房)を選びました。
まず、なんと言っても絵が素敵! 「光の魔術師」と言われるオールズバーグの素晴らしい絵を子どもたちにぜひ見てほしかったのと、この本は絵本にしては文字が多いので、逆に小学校4年生ぐらいからの方が理解できるように思いました。村上春樹さんの訳文も、ちょっと大人っぽいですし。
サンタを素直に信じられない年頃だからこそ読んでほしい
4年生ぐらいになると、そろそろ「サンタの真実」がわかってくる子が多くなる年頃です。そうなると、キリスト教のバックグランドが薄い日本の子どもたちにとって、クリスマスは単なる「ほしいものをもらえるお祭り」になってしまいがちです。
私はクリスチャンではありませんが、クリスマスという行事のあたたかさや喜び、サンタという存在の意味について、少しでも子どもたちに伝えられたらいいなと思っています。『急行「北極号」』は、その点でもぴったりの絵本です。
ストーリーは、クリスマス・イブの夜中に主人公の男の子がサンタの鈴の音が聞こえてこないかとベッドの中で耳をすませているところから始まります。ところが聞こえてきたのは、機関車の汽笛や車輪がきしむ音!(鉄の私などは、それだけでワクワクしてしまいます!)男の子は家の前に停まった機関車「北極号」に乗り込み、他の子たちと一緒にサンタや小人たちがいる北極点へと向かいます。そこでは、サンタが「北極号」の乗客の子どもたちからひとりを選び、その子にクリスマスのプレゼント第一号を渡すというのです。
選ばれた主人公の男の子は「サンタのそりをひくトナカイの鈴がほしい」と言い、願い通り、サンタから鈴を受け取ります(どんなプレゼントでももらえるのに「鈴がほしい」というところが、なんとも素敵です)。それなのに、男の子は帰りの汽車の中で、大事な鈴を落としてしまったことに気づきます。がっかりして迎えた翌朝、他のプレゼントに混じって、小さな箱があり、そこにはなくした鈴がサンタの手紙と一緒に入っていました。
これまで耳にしたこともないような素敵な鈴の音に、男の子も男の子の妹も喜びます。でも、その音は男の子の両親には聞こえません。そして、男の子の友達や妹も、大きくなるにつれ、鈴の音が聞こえなくなっていくのです。それでも、大人になった男の子の耳には鈴の音はまだ届きます。
「心から信じていれば、その音はちゃんと聞こえるんだよ」という言葉で、絵本は終わります。「サンタなんていないんだよ」と訳知り顔に言うことのわびしさがぐっと響くエンディングです。
今日は子どもたちが集まるのに時間がかかり、時間内に収めるために、あまりゆったりと読むことができませんでしたが、読み終わったとき、始める前のわさわさした空気が嘘のように、しんとした表情の子どもたちがいました。感想を聞かなくても、たぶん子どもたちなりに感じてくれたことがあったんだな……と、ちょっとじんとしました。まさに、絵本の魔法を感じました。
本当はクリスマスの後はお正月準備、ということで、もう一冊『十二支のお節料理』(川端誠 BL出版)を読もうと思っていたのですが、時間切れで、一冊だけで読み聞かせを終えました。でも、絵本の余韻を残すという意味では、結果的にはそれでもよかったのかなとも思います。
反省点いろいろ
さて、ここからはいくつか読み手としての反省です……。
今回、ちょっと忙しかったこともあり、十分練習ができませんでした。時間を計るのに1回、前日に、本番と同じように絵本を持って読むのを2回。絵本の読み聞かせの講座で「10回は事前に練習しなければならない」と教わりましたが、本当にそれぐらい読まないといけないんだ、と反省しきりです。
というのも、この絵本、字は横書きなのですが、左端に字が書いてあるページもあれば右端に字が書いてあるページもあり、右手で絵本を持って左手でページをめくると左端に書いてある文字(これがまた小さいのです)がとても読みにくい。老眼になりかけの私には光の加減で一瞬読めなかったりすることもあり、それこそほとんど暗記するぐらいに読み込まないと、ちゃんと読めない本だった……と、終わった後、つくづく思いました。まだまだ修業が必要です!
あと5日でクリスマス。子どもたちにも大人たちにも、良いクリスマスが訪れますように!
読んでいただいて、ありがとうございます!