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『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス 「人の価値って何だろうね」と、思慮深く
このnoteは、まだ本を読んでいない人に対して、その本の内容をカッコよく語る設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。
『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス
【「アルジャーノンに花束を」を語る上でのポイント】
① 知性とは何かって考えさせられると言う
② 小説の手法が凄いと褒める
の2点です。
① に関して、とりあえず「考えさせられる」と言っていれば、何か深い考えを持っていると思わすことができます。
② に関して、この小説は、主人公の日記の体裁で書かれています。ダニエルキイスが生み出した手法を褒めることで、小説偏差値が高いアピールができます。
○以下会話
■6歳児の知能のチャーリー(32)
「泣ける小説か。そうだな、そしたら、『アルジャーノンに花束を』がオススメかな。この小説は、ダニエル・キイスというアメリカ人が書いたSF小説で、世界的に読まれている作品なんだ。
『アルジャーノンに花束を』は設定が面白いんだ。あらすじは、パン屋で働くチャーリーという6歳児並みの知能しかない、知的障害を持った32歳の男性が主人公の話なんだ。単純労働しかできないから給料は安いけど、優しい心の持ち主で周りをいつも笑顔にして、愛されてたんだ。
そんなチャーリーはある日、大学教授による脳手術を受けることになるんだ。手術を受けたチャーリーは日に日に頭が良くなって、いろんな学問を修めて、言語も何ヶ国語も習得して、心情も変化していくんだよ。良いこと尽くしのように思えるけれど、これまで親しんできた周りの人との溝ができてしまい苦悩する、という話なんだ。面白い設定でしょ。
■日記の文体の変化で追うチャーリーの知能レベル
小説の手法も面白くて、この小説は文章が主人公チャーリーの日記になってるんだよ。手術を施した大学教授が、IQの変化を追うために「経過報告」としてチャーリーに日記を書かせてて、それを僕らが読むという構造になっているんだ。
その文章は最初は平仮名だけしかなくて、「たのしかつたよ。」みたいに文法もめちゃくちゃで読みにくいんだよ。だけど、手術を受けて数日経つと、段々と漢字も増えてきて、最終的には、形而上的な話とか、物理学とか哲学とかめちゃくちゃ難しい話をするんだ。そしてチャーリーが僕ら読み手のIQを超えていくんだよ。実際にペラペラってページめくったら分かるんだけど、この手法の時点で面白い小説だって分かるよ。
■知らなきゃよかったこと?
この小説の肝は知性を持ったチャーリーの葛藤なんだ。チャーリーは手術される前は、いつも天真爛漫に振舞って幸せに暮らしていたんだ。でも手術によって知性がつくと、周りの人の言動を理解できるようになって、仲が良いと思っていた友達が、本当はチャーリーのことを馬鹿にしてあざ笑っていたり、期待してくれてると思っていた母親が、本当は嫌悪していたことが分かるんだ。知性がついたせいで世界の「本当の」動きが分かってしまったんだよね。そして、知性が高くなりすぎたせいで、周りと会話が合わなくなって孤独に襲われるんだ。知性が僕と僕の愛する人との間に楔を打ち込むって小説では表現されているんだ。
■手術の欠陥を自分で発見してしまう
そして、ここが一番辛いところなんだけど、IQが高くなったチャーリーは自分に施された手術を研究して、自分にされた手術の欠陥を発見してしまうんだ。
チャーリーと同時期に同じ手術を受けていた、アルジャーノンというネズミは、当初知能を測るゲームで高い成果を出していたんだけど、急に知能が低くなって体も弱くなって最終的に死んでしまうんだ。チャーチーはこの事実を自分で発見してしまうんだよ。悲しい宿命だよね。
最終的には、チャーリーもアルジャーノンと同じように知能がどんどん低くなって、最後には手術する前の5歳児の知能よりも低くなってしまうんだ。そして文字が書けなくなって経過報告が途切れてこの小説は終わるんだよ。
■知性とは何か。人間とは何か。
僕がこの小説で一番印象的だったのは、手術をした教授がアルジャーノンとチャーリーを学会に連れて研究結果を発表するシーンなんだ。
教授は学会で「私は優秀な人間を作りあげた。チャーリーという人間を作ったのだ。」と発表するんだ。この発言は、手術前のチャーリーの存在を否定する発言なんだよ。そしてこれは、この小説のテーマの「知性」について深く切り込んでる場面なんだ。
確かに教授はチャーリーのIQを高くしたけど、IQが低い時もチャーリーは存在したよね。IQの値を人間を判断する軸にしたら世界はめちゃくちゃになるよね。だけど、教授は「使い物にならなかった」チャーリーから、知能の高い「使い勝手のある」チャーリーに変えたことで、確かに「優秀な」人間を作ってるんだ。
第二次世界対戦中、優生思想という思想が流行ったんだ。この思想は端的にいったら、優秀な遺伝子だけを残して劣った遺伝子は排除するという考え方なんだ。この「劣った遺伝子」とは、いわゆる障害者のことなんだ。
実際に日本でも戦時中、障害者から強制的に生殖機能を失わせて、子供を産めない体にすることが行われていたんだ。今聞くと怖いなって思うけど、例えば今日でも出産前にダウン症の検査をして疑いがあったら堕ろす選択肢もあるよね。これはまさに優生思想なんだ。相模原障害者施設殺傷事件を起こした植松死刑囚の発言も優生思想に基づいてるよね。
人間の価値は絶対知能では決まらないけど、例えば頭良い人と悪い人だったら良い人の方が価値ある気がしちゃうし、今の社会でも、昔の優生思想ほど極端ではないけど、学歴が良かったり、能力が高い人が重宝されることは自然に受け入れてるよね。僕も気づかない内に、自然に優生思想に染まってるのかな。そもそも人を何かの尺度で測って価値を決めようとするのが間違ってるのかな。良くわからないや。
暗くなっちゃったけど、テーマが重いだけで、小説自体は読みやすいし、主人公が凄い魅力的でほろっと泣けるから是非読んでみて。」
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