MacBookのUSキーボードは生活を豊かにする
真夏の吉祥寺は、アロハシャツ姿のカップルやサンダルを履いた家族連れを向かい入れ賑わっている。パラソル付きのテラス席があるカフェで、僕はMacBook AirのUSキーボードを叩いている。
僕はMacBook Airを買った。先日、大学一年生の頃から使っていた旧タイプのMacBook Airが火を吹き、買い替えたのだ。
新しいMacBookを買うにあたり、キーボードをUSタイプにした。
appleの公式サイトからMacBookを購入すると、キーボードの種類を選べる。一般に、日本で売られているキーボードはJIS(日本語)タイプだ。今回僕が買ったUS(英語・アメリカ)タイプは、キーボードの盤面に平仮名が刻印されていない。その分、アルファベットがキーの真ん中に刻印されている。
とてもシンプルだ。シンプルにデザインされたMacBookには、シンプルなキーボードが適している。白い綿のTシャツには、ジーンズが適しているのと同じだ。
USキーボードとJISキーボードには決定的な違いがある。それは、Enterキーとspaceキーの大きさだ。USキーボードはJISキーボードに比べEnterキーが小さく、spaceキーが大きい。
USキーボードは、英語をうつのに適したキーボードだ。そしてJISキーボードは、日本語をうつのに適したキーボードだ。パソコンで文章をうつ際、英語の文章は単語と単語の間にスペースが入る。なのでスペースを入れるspaceキーをよく使う。一方日本語の文章は、平仮名で打った単語を漢字・カタカナに変換する。なので変換を決定するEnterキーをよく使う。
それぞれのキーボードは、よく使うキーが大きく設計されている。その差は僅かだが、ある場合には(例えば一辺2cmにも満たない小さなキーを操作して文字をうつという繊細な作業をする場合には)キーのサイズは大きな意味を持つことになる。
僕は日本語の文章しかうたない。にも関わらずUSキーボードを使っている。案の定何度もうち間違える。Enterキーが小さいため、Enterキーの上にある「¥」のキーを押してしまうのだ。JISキーボードを使っていた以前と比べ、確実に作業スピードは落ちた。ナイキのランニングシューズから下駄に履き替えて走っているようだ。だが僕はUSキーボードに心底満足している。
僕にとってキーボードは、文字信号をコンピュータに送信する入力機器以外の意味を持たない。キーボードはあくまでキーボードであって、キーボードで波に乗ったり、キーボードでトマトを切ったりはしない。キーボードは文字をうつものであって、それ以外の役割は当てられていない。
だからこそ、シンプルさが重要だ。
MacBook Airを開き、真新しい鼻腔を打つ香りを嗅ぎ、USキーボードで文章をうつ。文章が途切れたら、ブラウザを立ち上げ、お気に入りの映画を観たり、今晩のディナーを予約しても良い。その合間にコーヒーを飲むことだってできる。
やがて僕は、MacBook Airを閉じ、コーヒーの最後の一口を飲み、席を立ち、勘定を払い、外に出る。駅に向かって歩いているときに、僕は肩のあたりに微かに、USキーボードの静かな励ましを感じることになる。それは決して不思議なことではない。何故ならUSキーボードは僕にとっては、大事な個人的反映のひとつなのだから。
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