効率厨な生活
家の中の収納をしまいやすく取り出しやすいように改造し、日用品や基本的な食生活を固定化することで、生活における「決断」を減らしている。
ミニマリストという言葉は、一時期ちょっとしたブームになっていたと思う。断捨離からさらに踏み込んだ生活様式は、とてもシンプルでかっこよく見えた。とはいえ、雑貨やかわいいものが大好きな自分はミニマリストになれないだろうと思いつつ、興味本位でいろいろと調べたことがある。
その中で、人間の脳みそは「決断」を繰り返すことで疲れていくという情報を得た。スティーブ・ジョブズが同じ服しか着ないのはそういった生活の「決断」を減らすことで「決断疲れ」を減らし、より重要なことの決断に力を使うためだったというのは有名な話だ。
そんな情報だけを持っていて特に実践していなかった自分の生活を振り返ると、平日の朝は自分の服装に悩むところからはじまっていた。たくさんの色の洋服を持ち、組み合わせを選び、靴の色のコーディネートまで考える。
食生活でもそうだ。スーパーに行くと1から10まですべてを巡り、どれを買おうか悩む。価格の比較や脳のレシピデータベースにアクセスすることを考えると、決断の量は相当なものになりそうだ。
そこから30歳を目前とした今、それらの生活すべてに無駄が多いことに気づいた。当時は「無駄だって生活の余白、必要だし楽しいこと。だからまあこの生活もいいんじゃない?」と思っていたが、前述で挙げたような無駄は趣味や娯楽を楽しむための体力を奪っていると実感したのだ。じわりと忍び寄る体力の衰えとともに。
知識だけが積みあがっても、自覚し行動しなければ習慣を変えることはできない。しかし、知識を備え自覚した私は行動の鬼となった。
まず服の整理を始めた。もちろん、休日のファッションは大切な自分の趣味のひとつだから、仕事用の服をひたすらに整理した。アイテムだけを見て「かわいい!」と買い、持て余していた服たちを処分し、シンプルで使いまわせそうな服を購入した。
食生活も、ダイエットという意味も込めて、スーパーで買う基本的なものを固定化した。スーパーで悩まず、決まった場所で決まったものを買う、これがとてもすがすがしい。もちろん、思い付きで食べたいものがあればそれを優先する。
とはいえ、これは一人暮らしだからできていることであって、だれかと同居していたらそうはいかんのだろうと思う。同居している人の好きな食べ物を作りたいという乙女心が顔を覗かせる。
平日における基本的な生活が仕組み化されてから、少しの余裕が生まれた。そうした余裕は、自分の好きなことに費やしている。「決断」に使っていた力を、好きなことを楽しんだり調べたり考えたりする時間に使うことができている。
初めて一人暮らしをして、初めて正社員として仕事をして。余裕なく走り続けてきた今、少しずつ余裕を手にしている自分に安心している。これから先、余裕のない日々もまた来るのだろうが、その中でもこの感覚はたまに思い出したい、大切なものだ。