夢女子の喜びを脳が覚えている

3月にKindleを買い、5カ月が経とうとしている。実用書から文学、漫画やレシピに雑誌など、Kindle Unlimitedを活用しつつ、気になるものは購入しKindleライフを楽しむ日々だ。

ある夜のこと、なんとなく時間を持て余しているが脳みそを使う気にならない。こんな時はあまり考えずに読める漫画…悪役令嬢転生ものでも読もうかと思い、Kindleを起動した。

「悪役令嬢」で検索すると、たくさんの漫画が並ぶ。読む前から見える!見えるぞ!と思いつつもつい読んでしまう、これが人間の性である。そこからなんとなくひとつを選び、読みはじめた私は驚愕した。

あろうことか、キュンとしてしまったのである。なんということだろう。それはまるで遠い日に読んだ夢小説を彷彿とさせる感覚。すべてが自分に都合よく、なぜかイケメンたちに本気で好かれてしまう世界。

チャラい男は私に惚れたが故に更生してしまい、俺様系はどうしても離れたくないとつらそうな顔を見せる。私は転生する前の記憶を活用し、幼いころから文武両道の立派な淑女になっている。

私はその感覚を知っていた。とある漫画の暗殺部隊に紅一点で入隊した主人公、私こと##NAME##の夢小説を読んでいるときの感覚だ。

簡単なスマホゲームにハマっていくように、脳が成功体験を勘違いし、快楽を得ている。途中で怖くなり、そっとページを閉じた。

一度依存症になると、脳はなかなかその快楽を忘れられないという。夢女子として過ごしてきたあの時の感覚を、脳は死ぬまで覚えているのだろう。いつの日か老人ホームにはいっても、##NAME##の話で盛り上がっている自分が見える。

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