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ARはフィルターバブル問題を助長するが、同時に解決策にもなる

フィルターバブルという問題がある。

パーソナライズ、レコメンドのアルゴリズムが普及した結果、各ユーザーが自分が見たい情報しか見えなくなり、偏った思想・考えを持ってしまう問題である。

この問題は、スマートフォン、そしてそのメインコンテンツであるソーシャルのタイムラインが助長したが、ARグラスの普及、そしてその上で動くARクラウドシステム、ミラーワールド的体験によってさらに助長されると思われる。

なぜなら人々がARグラス越しに見る現実世界は、もはやみんなにとっての共通の世界ではなくなり、その人ごとに最適な世界になっていくからだ。

ある街を見たときに、ある人からは美しい街に見え、ある人からはとても醜い街に見えるということもあるかもしれない。

このように、ARグラスとそれに連なる体験はフィルターバブルを助長するが、同時にそれらがフィルターバブル問題の根本的な解決手段になるかもしれない。

ARグラス、ARクラウド、ミラーワールド上では、ユーザーが自分の行動ログをかなりの範囲でデータ化することができる。

街を歩いているときに聞く音や、無意識に目を向けるもの、自分が話した言葉、何に反応し、何に目を背けたのか。

そうした自分の広範囲で微細なデータを集めていった先には、自分の高度なデジタルツイン、デジタルセルフが形成される。

そして、その自分のソフトウェア的なコピーは、自分以上に自分を知っている存在になっているはずだ。

Spotifyのアルゴリズムが自分以上に自分の音楽の好みを把握し、レコメンドをしてくれるように。

そして自分のSpotifyの利用データを眺めることで自身の音楽の趣味を客観的に把握することができるように、自己の高精度なデジタルツインを見つめることで自分自身を客観的に深く知ることができるようになる。

それによって、自分の偏りを客観的に認識し、無意識的な偏り=フィルターバブルを回避することができるようになる。

そんな自己俯瞰のためのソフトウェアが将来的に求められることだろう。



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梶谷健人 / 新著「生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方」
AIやXRなどの先端テック、プロダクト戦略などについてのトレンド解説や考察をTwitterで日々発信しています。 👉 https://twitter.com/kajikent