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「家事の道具」を扱う「伝え手」として

東京・高円寺にあるセレクトショップ「日本の手仕事・暮らしの道具店cotogoto(コトゴト)」さん。 扱っているのは、日本の職人さんの手によるこだわりの雑貨。全国にファンも多い、いわば伝え手のプロです。

家事問屋として、初めて展示会に出たときからのご縁で、工場取材や家事問屋展、ワークショップなど、さまざまな取り組みをご一緒してきました。

このコラムでは、cotogotoさんに家事問屋との出会い、商品開発、伝え手としての思いなどを綴っていただきました。

【プロフィール】日本の手仕事・暮らしの道具店cotogoto(コトゴト)
2012年オープン。オンラインショップと東京・高円寺の実店舗を運営するセレクトショップです。 扱っているのは、日本でつくられた暮らしの道具、家事の道具。料理を盛る器、調理の道具、洗濯や掃除の道具、また日本の季節を楽しむ道具など、家にいる時間が、毎日の家事が、少しでも楽しく、心地よくなるような道具を揃えています。 https://cotogoto.jp/

家事問屋のものづくりに「向き合う」姿勢

「家事問屋」との出会いは、企業向けの大型展示会。2015年、家事問屋さんの初出展のときでした。 広い会場をフラフラと歩いていると、角地に構えたブースが「キラキラ」していました。
吊り下げられたお玉やザルにピンチハンガー、台の上に整然と並べられたボウルやバットに水切りカゴ。遠目からでもわかるくらい、よく磨かれたステンレスの美しい道具たちが、照明の光を受け、キラキラと輝いていたのです。
眩い輝きの中に吸い込まれ、その時の胸の高鳴りは今でも鮮明に覚えています。 展示会場内はもちろん、キッチンツールを扱うブランドは数多くありますが、ひとつのブランドのブースが放つ雰囲気に、こんなに心惹かれたのは初めてでした。

その頃のcotogotoは開店からわずか3年、「暮らしの道具店」と銘打ってはいるものの、まだまだキッチン回りの道具の品揃えには納得がいかない状態でした。 お客様に提案できるアイテム。cotogotoのスタッフ皆が納得できるキッチンツールのブランドを探していたのです。

ブースの中に入り、いくつかのアイテムを手に取り、それまでの思いが確信に変わり、すぐにお声をかけさせていただきました。

しかし、担当の方から返ってきた言葉は「小売店との取引については経験がなく、まだ何も決まっていなくて。今回は、どんな反応があるか知りたくて」 …

一瞬、目の前が暗くなりましたが、口走っていました。 「先になってもいいので、お取り扱いさせてください!」と。まだ社内の確認も取っていないのに。

展示会後、経験も実績もない当店との取り引きを前向きに検討してくださったこと、何度も新潟から高円寺の店舗へお越しいただいたこと、いろんな話をしたこと。

そして、こんなに小さな店にも正面から真摯に向き合ってくれる家事問屋さんのその姿勢こそが、これから取り扱うすべての商品に一貫している「芯」の部分なのだとわかるまで、そう時間はかかりませんでした。

取り引きが正式に始まり、改めて家事問屋の商品を使わせていただきましたが、一つひとつの商品の使い勝手については、ここで言うまでもありません。 「ありきたり、なのに使いやすい。」家事問屋が掲げるこの言葉はとてもシンプル。けれど、商品を使うたびに、そのあまりの深さにハッとさせられます。

毎日、毎日、台所に立ち、家事を行う人の目線に立つ。どんなに小さな不便も不満も見逃さない。「まあいっか」で日々やり過ごしてきたことも徹底的に掘り下げる。 その結果が、すべての商品のかたちやサイズ展開、パーツ販売などに現れています。

隅々にまで目を配り、とことん考え抜かれた商品には、「ここまでやるか!」と思わずにはいられないのです 。

家事問屋×cotogoto 初めての商品開発

cotogotoスタッフの間では、かねてより悩みがありました。けれど、解消してくれるものにはなかなか出合うことができませんでした。

それは「器の収納」です。店頭でのディスプレイや在庫のストックはもちろん、器好きのスタッフたちは自宅にもたくさんのお気に入りの器があります。それらを上手く、そして、素敵に収納する術を考えあぐねていたのです。

「なにかいい商品はないですかね?」ある日、何の気無しに家事問屋さんに尋ねたところ、二つ返事で「じゃあ一緒に作ろうよ」とまさかのひと言。

セレクトショップであるcotogotoにとっては、初となる完全オリジナル商品でしたが、家事問屋さんとなら、これほど心強いことはありません。とは言え、こちらは初めてのことだらけで、できることと言えば「ああしたい、こうしたい」という子どものような拙い「使い手」の希望をただただ伝えることだけでした。

そして、図面の引き方もデザインの仕方すらもわからない私達に、優しく寄り添い、わがままな要望にも根気強く付き合っていただき、試作を繰り返すこと約半年。ようやく完成した「ディッシュスタンド 18」と「ディッシュスタンド 26」。今では、当店の年間売上の上位に常に位置するヒット商品となっています。

「ディッシュスタンド」に限らず、家事問屋の商品が売れる理由が、この時はっきりとわかりました。

家事問屋は「作り手」でもありながら、「伝え手」、「使い手」、すべての立場にしなやかに入り込み、それぞれが求める機能を、かたちを、鮮やかに作り上げることができるのです。

お客様は、かたちにもデザインにも価格にも満足をし、「作り手」たちは、作ることを無理なく継続することができる。この良い循環を、楽しみながら作っている家事問屋は本当にすごいと思いました。

▼「ディッシュスタンド商品開発記」はこちらからご覧いただけます。

作り手⇔伝え手⇔使い手、好循環の作り方

もうだいぶ前になりますが、家事問屋のルーツやものづくりの姿勢の裏側に何があるのかを知りたくて、新潟の工場にお邪魔させていただいたことがありました。

そこで見せてもらったのは、母体となる「下村企販」や、分業制のものづくりのこと、地域のメーカーや職人さんとのつながり、関わる人々の絆、問屋の意義、そして、価格競争や後継者不足という危機。実際に商品を使う「使い手」に寄り添うその一方で、商品を作る「作り手」を心底想っていることを知りました。

▼工房訪問の様子はこちらからご覧いただけます。

「使い手」と「作り手」の間に立つのは「伝え手」です。家事問屋はより「作り手」に近い「伝え手」、cotogotoはより「使い手」に近い「伝え手」。

そうであるはずですが、「使い手」にも「作り手」にも深くまでしなやかに潜り込み、それぞれの「願い」に向き合う家事問屋さんの姿勢を目にするたびに、いつも、私達は頭が下がります。

店頭でどの商品にしようかと迷っているお客様や、オンラインショップでお問い合わせをくださるお客様に、家事問屋さんほど真摯に向き合えているだろうか。そして、お客様からお預かりしたお金がどう巡るのか、そこまできちんと考えて商品を取り扱うことができているだろうか。家事問屋さんの話を聞くたび、身が引き締まります。

「使い手」のお客様と向き合いながらも、商品作りに携わる「作り手」にも寄り添うべき「伝え手」、その本当の意味と役割を、教えてくれたのが家事問屋さんでした。「家事問屋」ブランドの商品を扱うのに恥じないショップでありたいと思います。


そして、家事問屋のパートナーとして相応しいショップになれるよう、これからのcotogotoも進化を続けます。

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