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人と自分は違う。その上で「伝える」ということ - 『今夜もウェブで会おう』 (第20通目)

コミュニケーションの基本は「話は通じないもの」と諦めること?

区切りバナー「梶」

将軍川くん

ある時気がついたんだけど、話って「通じない」ものなんだね。

話せばわかるっていうのはウソで、ほとんどの相手には、わたしの意見を理解する土台がない。(逆にいうと、わたしと同じ人生を歩んできた人だけが、わたしのことを完全に理解できる)。
つまり、わたしも、相手の言っていることを100%は理解してないんだよ。

それどころか、周りにいる人をランダムに捕まえて話した場合、簡単なことですらほとんど伝わらないんじゃないだろうか。
相手に話を理解してもらえる、というのは稀有なことなのではないか。

そうか、そういえば、今までもそうだったような気がする。

……とまあ、そんなことを思った。

それ以降、自分の考えを他人に理解されるとか、わかってほしいとか、そういう期待は持たないようになった。

さて、最近は在宅ワークがほとんどだから、直接会ったことのない人と、お互いに考えを探り合いながらプロジェクトを進めるようになった。

仕事ってさ、作業の塊みたいなものだから、自分とまったく違うタイプの人間とも、作業主体の話だったら通じるんだよね。だから、仕事中にふと

「ああ、こんなにタイプの違うこの人と、話ができている!面白いなぁ」なんて思ったりすることもある。


でもやっぱり、仕事以外のコミュニケーションでは、こちらの言いたいことは、ほとんど伝わっていない、と考えるのが正解だろうね。
特に「夏場は水分をとった方がいいですよ」というような常識的なことじゃなくて、「わたしは虫の気持ちがわかるんです」くらい、マニアックな話はね。

そしてきっと、わたしも「通じないだろうなぁ」と思って諦められたことが何回もあるんだろうなぁ。人っていうのはすごく個別で、交わっていると錯覚していても、ほとんど交わらないまま、一人で死んでいくものなんだろうね。

ちなみに、心の底までわかってくれているんじゃないか、と思っていた人が、じつはものすごく相槌のうまい人だった、なんてこともあるしね。

そこで「(知ってるつもりでも)人と自分って違うんだよね」ってことを、改めて書いてみた。

そういう経験をしたことはある?




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「常識」や「普通」なんて、努力無しには存在しない

区切りバナー「将軍川」

梶さん

よく「常識」や「普通」という言葉にゾッとすることがあるよ。

生まれや育ちが違う人間同士が、まったく同じ「常識」や「普通」の感覚を持つことはない。
ウチもなんだかんだ、これまでの人生で「常識はずれ」で糾弾されることがちょくちょくあった。人間科学・社会科学・心理学関係の本を読み漁ったり、社会的に問題なさそうな人の行動をコピーしたりなど、陰の努力を重ねてようやく「普通」になったって自分では思っても、結局、まだそんな目に遭っている。
だから、「常識」や「普通」という概念を正義の剣みたいに振り回している人たちにとても腹が立つんだ。

先月、うちのベルリンのスタジオで「スタジオ内に知らない人がたくさんいる」ということで揉め事があった。

夏休みで何週間もベルリンを離れる人たちが、留守の間スペースを又貸ししているだけだったから、ウチにとっては別に何の問題もないことだったんだ。
けど、数人は怒り出した。その矛先は、コロナで仕事がなくなり、スタジオ料金がしばらく払えなくなった子に向けられた。彼はデスクを複数人に又貸した上、どんな人が借りるか紹介しなかったということだった。でも、これまでデスクを複数人に貸し出し不可という明文化されたルールはなかったし、少なくとも彼はデスクを借りる人たちの名前は言及していた。
みんなが「こんなのは常識でしょう?」「これくらいするのが普通なのにね」みたいに議論している中、新たなマトにされることを覚悟でウチは言ったんだ。

「問題は、誰にでもわかる明確なルールが存在していないことでしょ?」

この明確なルールなしでは、「常識」という言葉も使えないとウチは思うんだ。
そもそも、ウチが使ってるスタジオには、国、価値観、経済状況、育った環境、英語レベルがバラバラな14人が一つのスペースに集まってる。「常識」なんてここでは存在してないんじゃないかな。
だから、いかなる詳細も「常識」だからと省略されず、簡単な英語で段階化されたデスクの又貸しのルールが必要なんだよ、ということを説明したら、皆が分かってくれたんだ。

実はウチも去年、この存在しないふわっとした言外のルールのせいでちょっとだけ無礼者呼ばわりされたから、プチリベンジできて超気分良かった。
ルールがないから、みんなが守らないんだよね。

梶さんは、仕事でのコミュニケーションは簡単って言ったけど、案外そうでもないとウチは思う。
ウチ会社にいた頃、業務の説明で「常識だから省略された」部分を、自分の「いつもどおりのやり方」でやってしまい、成果物が使えなくなってしまったことがあった。
その業務の指示をウチに出した人のヘソの居所が悪くなって、そこから嫌がらせを受け始めたなんてこともあったな。

これまでの経験から考えると、同じ「常識」を共有するには、幼稚園児に伝わるようにシンプルかつ、超濃厚クリームシチュー背脂倍乗せくらいシツコいコミュニケーションをしないと無理だと思うんだよ。仕事であれプライベートであれね。

このカジュアル極まりなく見える文通連載企画も、こうしてきちんと動き出すまでに半年かかったから驚きだよね。梶さんとは長い付き合いだから、もう二人の間に「常識」は存在すると思ったけど、案外そうでもなかったね。

でも実は、ウチとしてはそこまでに驚きじゃない。
だって、自分の「常識」と他人の「常識」は、全然違うって小さい頃から散々思い知らされてるし。


将軍川



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🍬おまけ

アイコン_かじ

高校時代、同じ部活だった同級生に子供が生まれたから会いに行ったよ。赤ん坊って自力で移動できないのか...と思った。

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