「何処までも遠く、儚い宇宙ノムコウガワへ」
どこまでも遠く深い夜のダークブルーが広がっている
あたりにはカエルの鳴き声と鈴虫の歌声。時折なびく夜風が、まだ青々とした稲の長い葉を、しずかにゆらしている。
そんな空間の中で小さな小さな僕は、おばあちゃんの台所から持ってきた小さな便を田んぼの縁の崖に立てかけて、さっき沖田商店で買ってきたばかりのロケット花火を差し込んだ。
コトッ
小さな音を立てて、エンジ色に塗装された細い木製の柄の部分が地球に対してほぼ、垂直に立った。さらに、おじいさんの仏間から拝借してきた100円ライターを握りしめ、その導火線にいま着火しようとしている。小さな僕でも軽く試してみるとちゃんと火がつく。ジェダイの騎士にでもなった気分だったのだろうか、無敵の力を手にした気持ちだった。
肺いっぱいに田舎の大気をすいこむ。地球には自分一人以外のなにものさえもいないのではないかとすら思える開放感。最高だ。10円でこんな清々しい気持ちになれるのだなんて。
ジッ。
短い音がするとついに導火線に火が移る。二、三秒の間にそこから後退をする。緊張の瞬間だ。気がついたら後ろにおじいちゃんが立ってこっちをみている。「きちゃだめだよ」と、しぐさで示す。おじいちゃんはロケット花火を見たことがないのだろうか。
そんなことを思うよりも速く、「シャッ!」と短い音がしたかと思うと、空に小さな火花の航跡を残して僕の10円と引き換えに手に入れたロケットが宇宙に向かって飛び立っていた。
「バン!」
大きなアールを描いて空を飛翔した先で弾けるような気持ちの良い音がし、僕の10円が爆発する。
すごい!!
漆黒の空に掴みとれそうなくらいたくさんの夜空の星がまたたくプラネタリウムの空に僕の星が一つ、仲間入りしたみたいだった。超広角20ミリくらいの画角に小さな僕の視野は広がっている。
最高の夜の瞬間だった。
そんなことがふと、思い出されてすこし不思議な気がした。昨夜は八時過ぎには睡魔に襲われ倒れるように眠っていた。疲れが出たのだろうか。小さな僕は大きな僕になったけれど、心はまだあの頃のままから何も変わってないのかもしれない。
どんな仕事をしていようと
どんな生き方をしていようと
僕は僕らしく、ありのままでい続けたいと思う。あの頃の記憶がまだ残っているということは、きっと、まだまだ大丈夫のような気がする。今の僕にできる、最高のアウトプットで今週も乗り切りたい。
僕の一つの歯車から、僕に関わってくださる全ての歯車へ回転を伝達し、その回転を世界へどんどん増速させて伝えていきたい。
その方法はきっと、無限大にあるはずだ。
今日も、すばらしい一日に。