まずは「革」を知りましょう。革靴のお手入れはじまり編
はじめに
みなさん、ふだん履かれる革靴のお手入れはされておりますでしょうか?そもそも革靴のお手人れってなんでやる必要があるんでしよう?通勤中の道すがらや電車の中でサラリーマンの方々の足元を見ると、あまり(時にはほとんど)手入れをしていないのかなあと思う革靴たちとたくさん出会います。
革靴のお手入れをあまりされない方は、大体が以下の3つに分かれるかと思います。
A.そもそもやらない派 → 「手人れなんてめんどくさい」「革靴って消耗品でしよ」というの方
B.なんとなく派 → 「気が向いたときにクリーム塗ればいい」「壊れたら修理に出す」
C.何から始めればいいか迷子派 → 「やったほうがいいのは分かるけど何を買ってどうやればいいのかわからない」「プラシやらクリームやらワックスやら、道具揃えたら革靴より高くつくじゃん」
以下では革とはそもそもどのような素材かを解説した上で、お手入れの必要性について書いていこうと思います。ちなみに、最低限のお手入れであればプラシーつ( 1 , 000円前後)とシューツリー(2 , 000~3 , 000円)を使って、一回に1分で十分です。
と聞くと、なんだかできそうな気がしませんか?
これはとあるシューイベントで"Saphir"というシューケア用品メーカーの方に革靴を磨いていただいた時の写真です。ただし、これはあくまでプロの方の用具です。靴好き駆け出しの方は、ブラシ1個とシューツリー1つで十分です。
※今回の記事は「革の性質」についてが主となります。実際の手入れ方法についてお読みになりたい方はこの次の記事をご覧ください。
革とはどのような素材か?
何事も目的があって手段があるように、革という素材(目的)を知り、どのような状態がべストかを理解したうえでお手人れ(手段)をしたほうが革のためにも皆さんのためにもなるかと思います。というわけで、まずは革という素材について考えてみましょう。
「革」とは動物の「皮」をはぎ、毛を除去し"なめし"という加工を加えてものになります(革と皮は違うんです! )。
"なめし"とは、腐敗の元となる動物の脂を皮から取り除き、なめし剤に浸す等いくつかの工程を経て皮を柔らかく耐久性のあるものへと変える作業のことです。
革を柔らかくすると書いて"鞣す(なめす)"と読みますが、まさに「名は体を表す」ですね(ちょっと違う?)
まとめると「革」という素材は動物の「皮」に薬剤を加えて柔軟性と耐久性を与えたもの、と言えます。
さて、上の画像は、牛一頭の半身から取れる革です。なめし済みなのでここから靴が作られますが、この一枚から一体何足の革が作られると思いますか?
「10足?5足?さすがに2、3足なんてことない?」
メーカーや革にもよりますが、なんとこの大きな革からたった1足しか靴が作られない、なーんてこともざらにあります。5足なんて到底無理、2、3足作れればいい方ですが、それなりの質になってしまいます。それだけ、革は貴重な素材なのです。動物やタンナー、シューメーカーに感謝し、大事に履きたいですね。
革の理想的な状態とは?
以上の革の加工目的に照らすと、「柔軟性」や「耐久性」を保った状態が革の理想状態といえるでしよう。また、ファッションの観点からは「艶があること」や「傷がないこと」も重要ですね。これら革の理想状態に最も必要なこと、それは「乾燥を避けること」です。
なぜか。元々が動物の皮である革は水分や油分を含んでおり、これらなめしの過程を経て柔軟性や耐久性、艶を手に入れています。しかし、革靴は履けば履くほど外気や日光にさらされ、少しずっ水分や油分を失っていきます。また、汗や雨によって革靴が濡れ、乾いていく過程でも元々革靴が持っている水分・油分は取り除かれてしまいます。乾燥が進むと、柔軟性が失われ革が固くなり、深い皺が入ったり、ひび割れが起こったり、艶が失われていきます。 特に一度割れてしまった・裂けてしまった革を完全に回復させることはほぼ不可能なので、兎にも角にも乾燥は絶対に避けなければなりません。
次回、実際の手入れ方法のご紹介
さて、今回の記事では靴のお手人れの前提知識として、「革」という素材がどのようなものか、どのように扱えばいいのかをご紹介いたしました。途中でも書かせていただきましたが、やはり「なぜ手入れをしなければならないのか」を理解した上で靴と触れるほうが、お手入れのしがいや愛着も湧くと思いますので、拙稿ながら書かせていただいた次第です。次回から2回に分けて実際のお手人れ方法について記事を書こうと思いますので、そちらもお読みいただければ幸いです。
次回へ続く。
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