警察が嫌いだ

何が再現だよ、何が現場検証だ。
被害者家族でもあり加害者家族でもある君は心の中でそう思っていた。
実際偉いのかもしれないが、こんな団地に私服とはいえ押収のため段ボールをもった大人5人がぞろぞろ訪ね、形式的に被疑者ですなんて書類を見せてあがってくる姿、どう誤魔化するのだろうか。引っ越し業者で通る筈がないだろう。
光の早さで噂の種だ。恰好のネタ。
だいたい1人はどう見ても鑑識だ。しかも女、娘。ドラマでみるような制服でどう見てもカメラが入っているショルダーバッグを大切そうに抱えている。
そしてさも自然な動作でマジックテープのワッペンだかエンブレムだかを外したり付け直したりしている。あ、それ外れるんですね。便利なんですね。なんて言うと思っているのか、この馬鹿者めが。

決してそんな言葉尾首にも出さずに私は
「よろしくおねがいします」
そう慎重に真剣な面持ちで受け答える。

少し涼しくなったとはいえ暑さが残る9月、緊張と不安で背中を伝う汗と共に私達の攻防が始まる。