カラーテレビの紳士服③

「殺虫剤はこんなに小さくても、蟲を殺せるのですね」
 己の足元を見つめていると気付いた、老紳士は、改築された食器棚から薄っらと覗く古びた白濁のワイドカラーシャツを、至極当然の事とし、錆びた影の底からまたも白濁したものを取り出した。
 雀蜂の黄色が、情け無く口を開けた昆蟲を、血肉色に押し上げ、潰す。「アプロード」溺死の文句を掲げた水和剤。その表紙は肉の為のもの。

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