カラーテレビの紳士服①

 明治からの地主はもう誰だか分からず、同じ番地の並木が果てしなく続く。錆びた看板の並木。蒲団屋。書の字。奥にちじこまっている老夫婦の虹彩には虹が届かなかった。

 古のカラーテレビの液晶なのだろうか。虹色の縦線がshowwindowの替わりをしていた。ガラスの反射は絶えず、ピンクとイエローを行き来させる。

 日焼けした紳士服、肉片の断面。この境にて肉体は昭和と令和に分断され飾られた。

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