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「祈り」


─昭和20年─8月6日

広島に原子爆弾が落とされた日。
朝8時15分─

戦中の恐らくは貧しい朝餉(あさげ)の時間を襲った、未知の破壊の脅威─。
数多(あまた)のあまりにも尊い生命たちを瞬時に奪い去った。

生命を繋ぐ大切な食事。
例え貧しかろうが、少ない食材を工夫しその日、生き抜くための糧。
爆風で飛び散る茶碗、味の薄い汁物、漬け物に少ない麦飯─。

目玉焼きに赤出汁の味噌汁、好物の赤ウィンナに炊き立てのご飯を
目の前にし、画面の向こうでその日を語るご老人の声に思わず箸が止まった。

9日は、長崎─

毎年、喪に服す心づもりはありながら欲するまま自由を謳歌し、裕福にさえ欺瞞を口にし、成す術なき辛抱など存ぜぬことと笑う。

語りながら時折、言葉を詰まらせ、詰まらせる度浮べるその皺深い目尻の涙が胸奥深くに沁み込み、僕も涙が止まらなかった。

ごめんなさい─。
ごめんなさい─

僕もきっと、何処であなたと繋がってる─。

せめて掌を合わせ、
両の掌を合わせ、

たくさんの生命の弔い、あなたの更なる長寿を心の底から祈ります─

 よしの かい


ただ
陽のままが
いい
雲のいく先を
こうして
仰ぎながら

咲くために
根づき

咲く
生命を
教わり

雨に
風に

大地に
寄り添われ
生きる


絡めた
この指が

あなたの
温(ぬく)みを
通じて

どうか
朝(あした)
きっと
たくさんの

幸せに
繋がりますように─

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