遺品整理の仕事【20日目】
2022年6月26日(日)
朝起きると、ヤマトさんから「仕事頑張ってな」というLINEが来ており気分が悪くなる。
通勤中に、謎のミスト状の液体が飛散している場所があり、嫌な気分になる。
昨日、社長に強気な態度を取ったあとでストレスが強い。
10時出勤。
事務所には誰もいなかった。
1人でひたすら掃除をする。
床、2階まで上がる階段、3階まで上がる階段、屋上まで上がる階段に掃除機をかけ、すべてぞうきんで拭き掃除をする。
棚の掃除。
トイレの掃除。
キッチンの掃除。
風呂の掃除。
13時ごろに事務の女の人が出勤してきた。
「会社を辞めることが確定しました」と報告すると羨ましがられた。
お昼休憩を取ろうと、あまり食欲はないがローソンに行く。
パンとスパイシーチキンを購入。
事務所のお茶のミニ缶を2つもらう。
緊張とストレスで食後が気持ち悪い。
寝転びながら休憩する。
う○こがめちゃくちゃ出るので、何回もトイレに行く。
このときは「やたらう○こが出るな」と思っていたが、緊張とストレスのせいだったのだろう。
車庫の掃除。
屋上の掃除。
ソファの掃除。
別の棚の掃除。
17時になったので社長に連絡をすると「もうすぐ戻るから待ってて」と返事がきた。
社長との話し合いが怖すぎて震える。気持ち悪くて吐きそうになる。
そのまま1時間ほど時間がすぎた。
18時ごろに社長が事務所に入ってきて、緊張がさらに高まる。
向かい合わせのソファ席に座るよう促される。
このとき、マスクを着けるのが当たり前の時代でよかった。
怖すぎて自分の顔面を晒して話せない。
ライオンに立ち向かっているシカのような気分だった。
社長は紙タバコに火をつけて吸い始め、口を開いた。
「あのさ、残業代請求してくれてもいいけど、みなし残業45時間ついてるからそんなに残業代つかんよ」
え?と思った。
初耳だった。
求人のどこにもそんなことは書いていなかった。
「え、みなし残業の話しは知らないです」と言う。
「労働契約通知書に書いてあったやろ?」と言われる。
「どの用紙のことですか?」と聞く。
そんなものはここに入社してからまったく見た覚えがない。
社長がファイルを取ってきて用紙を探す。
「あれ、出てこんな」と言う。
社長がスマホの写真フォルダで用紙を探し出し「あった!」と言いながら労働契約通知書を見せてきた。
そこには、わたしではない筆跡で、わたしの名前が書かれた「労働契約通知書」があった。
ますますこの会社が恐ろしくなる。
「わたしこれ知らないです!こんな紙見たことないです!」と必死に主張する。
すると、社長もわたしが書いたものではないということを理解していたのか、早々に労働契約通知書の話しを終えた。
社長が労働契約通知書のファイルを閉じる。
「まあでも正確にタイムカードつけてるわけではないやん?」と言われる。
たしかにこの会社ではLINEで出勤と退勤の連絡を行っており、送信の時間も「確実に正確か?」と問われるとそうではない。
「だから残業代は、じゃあ5万円ってことでいい?今月の給料も、山下さんが言うてたように来月の5日とか早めに払うから」と言われた。
「残業代5万円」というのは、少なく見積もった金額ではあるが、正確なタイムカードの記録がなく、わたし自身で強い証拠を持てていないこと、加えて早めに給料をもらえるという条件もあったので、残業代の金額について了承した。
それに残業代がまったくもらえない可能性もあったため、残業代がもらえるという話しをつけられたことに安堵する。
大した仕事もしてないくせに、権利ばかり主張しやがってと思われているかもしれない。
社長は話題を逸らしたかったのか、気を逸らしたかったのか「奥さんがやってるアパレルのスカート持って帰りよ」と言い、スカートを渡してきた。
ボリュームのある、花の刺繍が入ったロングスカート。
激安海外通販で仕入れたものだと思う。
ちょうどこのタイミングで、遺品整理の施行を終えた1便が帰ってきた。
カー坊さんの服が真っ茶色になっていたので「どうしたんですか?」と聞くと、今日の施工はお屋敷みたいな家で、茶色の古い埃にまみれていたらしい。
カー坊さんに仕事を辞める話しをした。
その日の帰り道は、社長と話す前のストレス、社長と話している最中のストレス、それが終わった脱力感、安堵などで気が触れていた。
自転車に乗りながら、Hump Backの『拝啓、少年よ』を歌いながら帰った。
家に帰ったあとも落ち着かず、50分歩いてダイソーに行き、松屋で牛めしを食べた。
23時半ごろスマホを見ると、今日の労働契約通知書の件が悔しかったのだろう。
明日の予定に、退勤時にはなかった「立花さんの労働契約通知書」の予定が追加されていた。
サポートしてもらえたらうれしすぎてヒョーー!!ダンスダンス!!!🕺🕺🏻🕺🏼 そのあとはサポートしてもらった画面をスクショして何回もニヤニヤします。