遺品整理の仕事【10回目】
2022年6月11日(土)
9時出勤。
施行の準備をして現場に向かう。
今日は初めて、社員がわたし1人だけで施行を行う日だった。
バイトは立花さんと、新しいバイトの人が1人来ていた。
新しいバイトの人は面接終わりに気合が入ったようで「トレーニングしてきます!」と言い、その日のトレーニングで腰を痛めてバイトに来れなくなっていたそう。
そのため数ヶ月前に面接をしたが、今日が初出勤だった。
声が高く、デニス植野みたいな見た目の人だった。
自分で配送業をしているが、特殊清掃もしてみたいからと応募したらしい。
酒に酔ったら全裸になってチ○コを出し、透明なコップで隠す「アキラ1000%」というギャグを持っているらしい。
現場に到着。
入口には門番がいて、入門許可証が必要とのことだった。
一度中の待機所で入門許可証に記入し、外に出てからまた入り直して、駐車券カードをもらわないと中には入れないようだった。
中で作業ができる制限時間は4時間。
入門許可証が受理されて中へ入ると、なんとなく色素が薄く、暗く、温度が低いような錯覚がした。
エリアの中には区画分けされた多数の団地が並んでいる。
さらにはスーパー、病院、ショッピングセンターがあり、なんと幼稚園から大学までの学校がエリア内にあった。
世間から隔絶された異質な街のような印象を受けたが、エリア内に駅があるので誰でもここに入ることは可能。
団地数が多いため、施行を行う団地を見つけるのに苦労した。住人の方に教えていただいてたどり着いた。
依頼主の遺族の方にあいさつをする。
便座カバーとお風呂のフタと、指定された紙袋と、貴重品があれば置いてほしいと頼まれた。
施行を開始する。
2LDKの部屋で、荷物はそこそこあった。
今回は派遣の方が4人来てくれた。
新しいバイトのアキラ1000%が初日とは思えない素晴らしい動きで、丁寧かつ的確に派遣の方に指示を出してくれている。
本来であれば社員のわたしが指示を出せるようにならないといけない。
わたしは台所に取りかかった。凝り性だったのか調味料が多く、味噌が何種類もあった。
飲み終わった梅酒のパックを切って、入れ物にするのが好きだったようで、それがいくつも見つかった。
遺品を外に運び出す際、エレベーターで派遣の人と一緒になり「どうやってこの仕事に応募したんですか?」と聞いてみると「派遣から応募して派遣の人が人を選んでます。ここの人当たりきついときありますけど、慣れれば楽なんで」と言っていた。
派遣の人はみんな優しく、重い遺品も率先して運んでくれた。
パッカー車(ゴミ収集車)業者も来てくれていた。
だがパッカー車に入り切らない残りの遺品が、どう考えても1.5トンのトラックに乗り切れる量ではなかった。
時間が15時ごろになり、派遣の人はもう少しで終了の時間だった。
パラパラと雨が降っていた。
とりあえず載せられるだけの遺品を乗せ、わたしと立花さんがトラックに積んだ遺品を倉庫に置いて戻ってくる。
その間、アキラ1000%に残りの遺品の見守りをしてもらうことになった。
エリアから外に出るタイミングで、制限時間の4時間を少し超えてしまっていた。
立花さんが門番に話しに行ってくれて、エリアの外に出た。
遺品を倉庫に置いて、施行場所へ戻る。
また入門許可証を待機所で記入し、待機所から外に出て入り直し、入門許可証を受理してもらい、エリア内に入った。
住人の方はどういう生活をしているのか気になる。
施工場所の団地へ向かうと、トラックが横付けできないようにバーで遮られていた。
少し離れた場所へトラックを停めて、わたしとアキラ1000%で遺品を往復して運んだ。
立花さんは積み込みをしてくれた。
積み込みが終わったのは16時半をまわったころだった。
コンビニでご飯を買い、遅いお昼を取ろうということになった。
ご飯を買ってトラックに戻ると、アキラ1000%が「トラック移動しながらお昼食べますか?」と聞いてきた。かなり空腹だったので「運転するわたし食べられへんやろ!」とキレそうだった。
立花さんが「コンビニの前で食べたらいいんじゃない」と言ってくれたのでお昼が食べられた。
トラックで3人横並びでお昼を取ったので横幅がギチギチで狭かった。
立花さんがよく話すお気に入りのダーツバーの話を始めた。
「まあ別にそういう目的ではないけど、一応店員さんが女の人でよく行ってるんですよねー」とアキラ1000%に向けて話す。
アキラ1000%が「え、それ金額なんぼくらいですか?」「えっそれ高ないすか?僕が行ってるとこのが断然安いっすよ」と言うと、女の人が目的ではないと言っていたのに、立花さんが「まあ店員が女の人やから」と張り合いだし、微妙な空気になった。
わたしはどちらにも意見せず、おもろいなーと思いながら黙って聞いていた。
食べ終わって、倉庫へ向かう車内でもダーツバーの話が続いていた。
倉庫に遺品を下ろし、18時半ごろ事務所へ戻った。
バイトの給料計算と経費計算をする。
北海道に行っていた社長が、社員用のお土産を渡してくれた。
昨日の出来事を気にしてなのか、社長から「うまいこと目的を理解していったらいいから。分からんことは聞いてな。分かってるもんやと思って進めてしまってるから」と言われた。
そのあと「今度嫁がやってるオンラインショップの服屋のスカートあげるわ」と言われて、社長なりの機嫌取りなのかと思ったが嬉しかった。
「女の子やのに事務所のお風呂入るのタフやね」と言われて、「じゃあ東京行ってくるわ」と社長は東京に消えた。
事務所のお風呂に入って退勤。
2022年6月12日(日)
休み。
サポートしてもらえたらうれしすぎてヒョーー!!ダンスダンス!!!🕺🕺🏻🕺🏼 そのあとはサポートしてもらった画面をスクショして何回もニヤニヤします。