遺品整理の仕事【9回目】
2022年6月10日(金)
いつもより遅い9時半出勤だった。
この日は「エアコン設置の立ち会いをしてほしい」と言われていた。
「遺品整理の仕事でエアコン設置の立ち会い?」と不思議に思ったが、どうやら遺品整理現場にあったエアコンを、遺族の方が自分の家に付けたいという内容のようだった。
その際、業者が提示する金額に、うちの取り分を上乗せして請求するというのが目的らしい。
金額のやり取りは、「業者とうちの会社」「お客さんとうちの会社」で、少し離れて別々にやり取りをしてほしいと指示を受けていた。
「現場行ったら業者から請求書もらえると思うからそれで対応して~」と、立ち回りについては直接説明を受けた。
↓前日夜のLINE
「お客さんのおらんところで金額聞いて教えてくれる??」というのは「運送費がなくなったけど、22,000円で施行可能か」という確認。
50kmの道のりを軽バンを運転して向かう。
近くまで来たところで道に迷ってしまい、エアコン業者さんに電話で道を教えてもらった。
依頼主にあいさつをする。
依頼主は少し離れた部屋で待機し、わたしはエアコンの設置を行う部屋に入った。
することがないので、ただぼーっとエアコンの設置作業を見ていた。
「見られたら作業やりづらいじゃないですか」「車で待機しててもいいんですよ」「施行前に請求書渡さなくていいんですか?」などと、なにかにつけて遠ざけようとしてくる。(※うちの会社は施工後に請求書を渡す)
何度も見ないように言われたが、することがないので結局作業を見続けた。
作業中、エアコン業者さんに設置金額を確認すると「22,000円です」とのことで、安心してグループLINEに報告をした。
1時間半ほどで設置完了。
エアコン業者さんがお客さんに完了の報告をしに行く。
お客さんが設置されたエアコンを笑顔で確認し、わたしは請求書を出そうとファイルを掴んだそのときだった。
「それではエアコン設置代金として22,000円いただきます」
なんとエアコン業者がお客さんに請求をしていた。
どうしてこうなっているのか分からずパニックだった。
お客さんはうちから伝えていた金額より安いエアコン設置代金に喜んで、早くお金を払ったような気がする。
もう、うちの請求書は出せない。
お客さんにあいさつをして家を出て、すぐさま社員の藤田さんに電話をした。
「は?うちと業者間、うちとお客様間でやり取りしてって言うたよな?」
「社長に連絡して」と電話を切られ、社長に電話をすると、まったく同じことを言われた。
頭がうまくまわらず謝った。
電話を切っていままでの流れを考える。
「現場行ったら業者から請求書もらえると思うから~」って言われてたし、なんならエアコン業者も「施行前に請求書渡さなくていいんですか?」とか言うてたやん。
あれはなんやったんですか。話通じてると思うやん。
エアコン業者は「いや、前は直接、お客さんに請求しましたけどね」と言うし、なにが真実か分からない。
社長は「利益なしや」と言っていたが、社員の藤田さんが電話でエアコン業者を詰めたようで、エアコン業者から5,000円の利益をもぎ取っていた。
↓エアコン業者から渡された5,000円
そのあと、エアコン業者にうちのエアコン設置見積もりをしてもらう予定だったので、各々の車で事務所まで走った。
エアコン業者が3台分のエアコン設置場所について確認し、わたしはそれに立ち会った。
工事の内容と、見積もりが出来上がる日数を確認して解散。
この時点で時間は15時前だった。
ほかの施行現場にいる社員の藤田さんに電話をする。
「もう施行は終わりそう」とのことで、社員の藤田さんはわたしも施行現場に行くのか行かないのかで悩んでいた。
が、おそらく「来なくていい」と判断をするのが恐かったようで「じゃあ一応きて」と言われた。
軽バンで現場に向かいながら「わたしの昼休憩忘れられてるな」と思った。
現場に向かう途中で、ストレスと空腹で強い眠気が襲い、車体がヨロヨロとしていた。わたしは嫌なことがあると眠くなる。
これはまずい、とファミマに車を停めて、勝手に15分寝た。
今日は昼休憩ないし、これくらい許されるだろう。
そのあと現場に到着したが、やはりほとんどすることはなかった。
現場で立花さんを見かけ、少し笑いながら「さっそくもう嫌、やっぱり辞めたい」と言った。
しばらくこの仕事を続けたいと思っていたのに、昨日の今日でこんなに心境が変わるとは思わなかった。
軽バンで事務所に帰り、バイトの給料や経費計算をしていた。
すると社員の藤田さんが近くにきて「分からんかった?」と言った。
「業者とうち、お客さんとうちでやり取りしてって念押ししたけど、分からんかった?」
「すみません。業者から請求書がもらえるという話も聞いていたので、やり取りの流れが出来上がってるのかと思ってました」
「それは自分の思い込みやん」
「では今回のことはどうやったら未然に防げましたか?」
「業者に、お客さんと話すときはうちを通してくださいって言うべきやったな」
知らんがな。じゃあ言うとかんかい。
いつもは愛想よく接していたけど、このときはもう愛想のへったくれもなかった。
テンション低く「はい」と言った。
話の最後に、社員の藤田さんが仲直りの感じで「ニコッ」としてきた。
その空気に飲まれ、意思に反して「ニコッ」としそうになるところを抑え、真顔を貫いた。
社員の藤田さんは悲しそうな顔で「どうしたん……」と言っていた。
気分になれなかったので、今日は事務所の風呂に入らず20時半ごろ退勤。
今日のことは悔しかったので、誰かに聞いてほしくてお母さんに電話をした。
「だからその仕事辞めときって言うたやん。はよ辞め!あんたその仕事向いてないし!」
そう言われてからも、うだうだと愚痴を言った。
電話を切り、もう少しこの仕事を続けようと思った。
せめて1ヶ月は続けたい。
サポートしてもらえたらうれしすぎてヒョーー!!ダンスダンス!!!🕺🕺🏻🕺🏼 そのあとはサポートしてもらった画面をスクショして何回もニヤニヤします。