高級住宅街産うんこ
腹が痛い。
今は出勤前の電車内だ。途中下車は命取りなんだ。耐えてくれ!
真後ろに居る女の人2人の会話が直に聞こえる。
①「職場の人さー、40前半か若くて30後半かと思ったら29やってんけど!」
②「うっそー私らと同じくらいやん!私らも今35に間違われたらびっくりするもんなー!」
そんなこと聞いたらめっちゃ顔見たいやん、35には見えへんのか見たいやん!腹痛いけど見たいやん!
クソな奴なのでその思いのまま次に停車した駅で降りる人の流れに乗って、いや逆らって顔を見た。位置の関係上見えたのは②の人の顔だ。
あっ、確かに…35には見えん。32くらいかな。
顔が見られたので満足した。そして腹が痛い。結構漏れそう。耐えてくれ……!!
うわ尻部が若干湿っている気がする。アウトか……?私はここまでか……?
下車駅に着くと、尻に頑張ってもらいながらトイレへ向かう。綺麗なトイレに行っている余裕はない。綺麗なトイレは人気でとても並ぶだからだ。
選択肢は“注射針捨てないでください”とか書いてある怪しいトイレのみ。
久しぶりに怪しいトイレに入ると、トイレットペーパーのホルダーごと無くなっていた。
ついに管理も無くしたのか。
仕方ないポケティを使おう。(ポケットティッシュ)
いでよポケティ!!
「ポッケティ〜」(ポケティの鳴き声)
良かった。うんこ漏れてなかった。湿り気を感じていたあれは汗だった。
そしてありがとうポケティ。
「ポッケティ〜♪」
トイレを出て仕事場へと向かいながら
私はあの日を思い出していた。
今から2年前、社会人1年目。
一軒家の外観を見るのが趣味だった。今も好きだが、今よりもっと好きだった。
ゴールデンウィーク。
芦屋の高級住宅街が見たい。行くまでに少し距離と時間もかかるけど見たいと思った。
来たる日、私は芦屋へ向かった。
持っていた中で1番可愛いと思うワンピースを着て。
芦屋でランチを食べた。
天気が良かった。陽の光が私を照らすスポットライトのようだった。
バスに乗り六麓荘っぽいところへ向かう。六麓荘ではないかもしれない。
とりあえず高級住宅街に着いた。
いや〜すごい!でかい!でかいなーー
この人の家こっから……ここまで?!まじか!めっちゃでかいな!
うーん、でも外観の面白さで言うとイマイチかなー、大体の家めちゃくちゃシンプル。
あなんか書いてるわ、へー、外観変える時は申請出さなあかんのか、景観保護かすごいなー。
…………………………………
うんこしたい………………………………。
漏れる……うわ……ここ……………
住宅街やん………………………………借りられるトイレないやん………。
ピンポンして借りたいくらいやけど………。ちょっと今の時代は……無理やわ…………
バス乗るから………芦屋駅戻るから……耐えて……
お願い………
バチュッ
終わった。
もう漏れた。漏れたから仕方ない続きの住宅も見よう。むしろ見残しがなくて後悔ないし良かったかもね。良くねーけど。
残りの住宅街もきちんと見た。(うんこ漏れてるけど)
高級住宅街の香りを感じた。(香ってるのはうんこやけど)
そしてバスに乗った。あまり人に見られない1番後ろの席を選び右尻を浮かせ、斜めに急角度を付けて座席に存在した。バスはガラガラに空いていたので、立っていると「危ないから座ってください!」と注意されるのだ。座った方が危ないんだけど。
私芦屋の高級住宅街にうんこしに行ってるやん。
ゴールデンウィークの思い出
芦屋、高級住宅街、うんこやん。
1番可愛いと思うワンピース着て高級住宅街にうんこしに行くってどういう趣味や。
高級住宅街「これだからパンピーは困る。」
格を見せつけられた気がした。
芦屋の百貨店に入って、トイレを探す。トイレは急いで探してない。だってもう漏れてるし。
見つけたトイレに入り、しっかりうんこが漏れていることを確認した。お菓子が入っていた細長い袋の中にうんこパンツを入れて、芦屋百貨店トイレのゴミ箱に捨てた。
清々しかった。
私はうんこから解放された。そして皆は私がうんこを漏らしたことも、うんこパンツを捨てていることも知らない。そこが最高だった。
陽の光のスポットライトは、また私を照らしてくれた。そのスポットライトは尻にも当たっているような気がした。嘘です。
そして私は家へ帰った。
これが社会人1年目のゴールデンウィーク。
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