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文体のきれいなラーメン評論

本日は松戸の地元民に愛される名店『兎に角』のラーメンをご紹介いたします。


松戸といえば何より『中華そばとみ田』が有名で、セブンイレブンの店頭などでカップ麺や二郎インスパイア系の豚ラーメン、その他関連商品をご覧になった方も多いかと存じます。


店主の富田治氏は酒も煙草も嗜まない人物として知られており、その鋭敏な味覚をラーメン一筋に追求し、一時は行列が4時間待ちとなる大人気店となりました。近年は整理券制を導入し、朝七時の受付から僅か数分で完売となるなど、盛況ぶりは今もなお健在です。そんな伝説的名店となった『とみ田』と一時は双璧を成し、地元民に親しまれているのが今回ご紹介する『兎に角』です。
富田氏が茨城大勝軒出身であるのに対し、兎に角店主は津田沼の必勝軒で修行したとのこと。いずれも東池袋大勝軒の流れを組む店舗であり、今は亡き故・山岸一雄氏の哲学を隔世遺伝したとも言えるでしょう。

続いてラーメンのご紹介です。
今や定番として確立された魚介豚骨とはどのようなものか、簡単にご説明すると『ゲンコツ(豚の骨)、モミジ(鶏の足)などの動物系スープを長時間煮込んだ一番出汁と二番出汁を合わせ、そこに鰹節、鯖節や煮干しなどを漬け込むことで更に魚介出汁を取ったもの』です。

魚介出汁は風味が飛びやすいためまず先に動物系を煮込み、魚介を後から加えることによって旨味の濃度と香りの鮮度を両立します。動物系も2回に分けて出汁を取ることで旨味も風味も逃さないようにするところがポイントです。また火力も重要で、火が弱ければ旨味が引き出せず、強過ぎれば素材を焦がしてやはり旨味を損なってしまう。具材が焦げつかないギリギリの火力で、スープを数時間撹拌させ続けることによって旨味を最大化します。これは肉体的に過酷な重労働で、(とみ田レベルの品質を追求すると)一日のスープを作るために10時間など掛かりますから、心身との戦いであると同時に労働基準法の限界との戦いであるとも言えます。
世に様々な料理がある中、ここまで限界を突き詰めてたった一品の料理を追求する、というのはなかなか類を見ないものであり、そこもまたラーメンが人々を惹き付ける魅力の一つなのかもしれません。

そしてこれが『兎に角』のラーメンです。

兎に角 松戸店 (トニカク マツドテン)
ラーメン(普通) 850円 ネギ増し

油膜は殆どなく、濃厚さと香りの豊かさを両立したスープ。


麺は店舗奥の製麺室で作ったもちもちの中太ストレート麺。二郎系ほど太くはないが家系よりは太い、パンチのあるスープと釣り合う絶妙なバランスの麺です。
極太メンマは一本一本に食べごたえがあり、臭みもないため、メンマが苦手な方でも食べやすくなっています。


刻みネギの品質も良好です。松戸は150年来続くネギの産地であり、そのことは松戸がラーメン激戦区であることと無関係ではないのかもしれません。新鮮なネギが薬味として機能することで、濃厚なスープに味わいやすさが加わります。
燻製チャーシューは歯ごたえがあり、好みは分かれますが少食な方でも敬遠せずに食べられる程よい肉厚のバランスに仕上がっています。

濃厚なスープは食べているうちに飽きが来るのが難点。途中で一味唐辛子を加えて味変し、麺を食べたあとはスープに酢を足して締め。食べる段取りを組み立てていくのもラーメンならではの楽しみ方の一つですね。

本日は松戸『兎に角』の美味しいラーメンをご紹介いたしました。


……


余談
私はラーメンは好きですが『ラーメン評論』なるものが大嫌いで、ラーメンに限らず作り手の生みの苦労をこき下ろすご高説の類が一切受け付けません。
昨今話題の自称フードジャーナリストなる人物の文章も吐き気を催す悪文で、ついカッとなって筆を取った次第です。世のラーメン評論家、ブロガーの皆様におかれましては最低限私如きの素人より面白く、有益で参考になる文章を書いて頂きたいものです。

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