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pet

自分自身について少し書いてみようと思います。
東京に生きる25歳の内実についてです。
自分自身の整理含め、これを読むと僕がどんな人間か、ひいいてはどんな人間だったのかが分かるだろうという試みです。
また、過去についてではなく、現在・今日時点にスコープを当てて書きます。
これは日記みたいなものであり、「故人は生前こんなものを・・・」にも変換できるものでもあり、また僕が生きながらえた場合、POPEYEで“25歳の時、何をしていたか?“の特集でもあった際にはその時役に立つものにもなるでしょう。
では早速。

〜pet〜
僕は夜行性の生き物をおよそ3匹飼っています。
ヒョウモントカゲモドキ・スーパーマックスノーの音像くんと、伊達邦彦と、トラヴィス・ビックル。
彼等は夜になるとまるで妖怪の様にむずむずと動き始め、朝になると何もなかったかの様に社会に溶け込みます。

①まずは音像くんについて
可愛い。以上、それ以上でもそれ以下でもない。ペットだから。
彼はペットとして毎日彼の仕事を全うしている。
“3匹“に共通していることは“よく働く“ということ。次。

音ちゃんは可愛いね

②伊達邦彦について
僕が彼を心に飼ったのはいつからでしょう。
前提に、まず彼を知っている人間がこの世にどれだけいるだろうかという話ではある。
僕は頃合いの飲み屋に入って、しばらくすると店主にジャブを打つ。
「僕、松田優作好きなんですよ。」
「探偵物語は、見た?」
「6話の失踪者の陰が好きです。」
店主はここで手にボクシンググローブをやっとはめてくれる。
店主がリングに上がってくる。
僕は大体このやり口で懐に入りに行く。
大都会東京を持ってしても、この年齢で松田優作の話をする人は少ないようである。
だから飲み屋の店主はよく僕のことを覚えてくれる。僕はただ松田優作の話がしたいだけなんだけど。

中野にある松田優作を愛してやまない店主が営むお好み焼き屋・広島風お好み焼き“優ちゃん”もそのうちの一つである。
僕が初めてこのお店を見つけたのは、新居の内見を済ませて横浜ホンキー・トンク・ブルースを聴きながら歩いていた23年の5月。
この看板を見つけてすぐに道場破りを挑んだのである。
僕は来店するたびに「若い女の子きました?」と聞く。
「20年きてねえよバカヤロー。」と寺さん。
なるほど、こんなお店を20年以上開いていても(年齢問わず)女の子が飛び込んでこないのかと私。
「GET THE OTHER ONE,,,,」


ここのレモンサワーをぜひ飲んでみてほしい。僕はここのレモンサワーが一番好き。

少なくともこの世の25歳の中で僕が一番松田優作のことを愛している。
もし「家、ついていっていいですか?」に出演することが叶って僕の部屋が紹介されたら、僕には沢山の友達ができるでしょう。おっさんの。
僕が好きな松田優作の話は現世ではほとんど誰ともお気軽にできない。
僕が好きになるものの対象が例えばK−popだったならば、僕はどれほどに幸せだっただろうか。
そんな“同世代の人が抱えていない孤独”は皮肉にも僕の優作愛を加速させてしまう。
「GET THE OTHER ONE,,,,」
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ペットの話に戻る。
松田優作についてはまたするとして、(その時僕はボクシンググローブを付けたいな。)
“伊達邦彦”は、映画『野獣死すべし』より松田優作演じる主人公“伊達邦彦”をここでは指す。
僕は心に彼を飼っている。
僕のユーモア・思想・行動・仕草・ファッション等々は彼に起因するところがある。誰にも気づかれないそれらである。
この映画に僕は強く惹かれてしまった。
これは非常に危険なことである。
世界中の様々な事件についての話で僕は一晩を過ごせるが、そんな僕の統計知識によれば、例えば僕が重大事件を起こした時に画面に映るメガネと髭の専門家はこう言う。
「彼にはその兆候がありました。」

僕は毎日伊達邦彦に命を狙われている

伊達邦彦。
29歳。東京大学卒のエリートで頭脳明晰・元射撃競技の選手。
かつては大手通信社の外信記者として世界各地の戦場を取材し散々の地獄絵図をカメラに納めてきた。
しかし、それは彼から社会性や倫理観を奪い、彼は“野獣”と化していく。
通信社を退職後は翻訳のアルバイトをしながら趣味の読書とクラシック鑑賞に没頭、ひっそりと社会から隔絶した生活を送っていた。
そんなある日、彼は銀行強盗を計画する。
野獣になった彼を止められるものは誰もいなかった。

衝撃だった。
生涯映画ランキングの中ではこれから先どれだけ母数が増えても確実に3本の指に入ってくることを自負している。
25歳の誕生日には家中のアルコールを大量に摂取し、もうまたこの映画を見ていた。
あの目。僕は目が好きで、よく目の絵を描いている。
しかし、あんな目は、ない。ありえない。言葉にできない。
目を殺す(演技)というか、あれはもう、、、とにかくすごいのである。
僕は彼に自分を重ねてしまった。陶酔しきってしまったのである。でも僕は銀行強盗は犯さない。
三菱銀行人質事件の犯人である梅川昭美は大藪春彦を読んでいたというが、彼はこの映画は見ていない。
倉内太君は「誰でも一度くらい銀行強盗しに行く時が来る。」と歌っているが、僕にはまだ、その時は来ていない。

僕は伊達邦彦に半分取り憑かれている。
名優・松田優作は映画『キング・オブ・コメディ』より、ロバート・デニーロ演じるルパート・パプキンを見て言葉を失ったという。
その演技を見て、デニーロには勝てないと気づいてしまったらしい。
松田優作が憧れたロバート・デニーロ。
そして彼が演じる映画『タクシードライバー』のトラヴィス・ビックルにも、僕は半分取り憑かれていた。

③トラヴィス・ビックルについて

「you talking to me?」


映画『タクシードライバー』
僕が人生で一番見た映画。
これを書いている今も見ている。
1976年の映画。『野獣死すべし』より4年昔の映画である。
アメリカンニューシネマの傑作。
主人公の名前はトラヴィス・ビックル(26歳)
ベトナム戦争帰りの元海兵隊である。
彼は戦争によるPTSDの影響で深刻な睡眠障害を抱えていた。
定職に就くことができない彼はある日タクシー会社に面接に行く。
「昼間が本業で、こっちは“ムーンライト”か?」
学のない彼には面接官のその質問の意味も分からない。
トラヴィスは深い孤独の中、ニューヨークの夜の街をひたすら流す。
トラヴィスはそこで目にする麻薬と性欲に溺れる若者や盛り場の退廃ぶりにフラストレーションを募らせていく。
彼もまた“野獣”と化し、大統領暗殺計画を企てる。
もう彼を止められるものはいない。
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2つの映画の背景には“ベトナム戦争“がある。
彼らは生き延びてしまったのである。生還しても歓迎されることはない。
そんな彼らが抱える孤独と、僕が抱える孤独。
無いものが無い現代に生きる僕がどこに共通点を見出したのかは分からないが、しかし確実に僕は彼らの孤独で孤独を埋めている。
僕は明るい。企業に勤めて3年弱。何の問題もない。会社で忘年会があれば司会だってやる。
しかし家に帰るとほとんど半狂乱で毎晩朝まで踊っている。
ここ最近は乖離が激しい。
自分の中から自分が抜けて、居場所のない2人の男が入り込んでくる。

“どこにいても俺には淋しさがつきまとう。
バーや車、歩道や店の中でもだ。逃げ場はない。俺は孤独だ。〟

僕と同じ。
この映画を見たある者は、「この映画は俺のことだろ」とスコセッシに言ったらしい。ジョン・ヒンクリーは本当に大統領暗殺未遂事件を起こした。
ではジョン・ヒンクリーと僕の共通点は、それはあまり感じなかった。
伊達邦彦とトラヴィス・ビックル。
僕は彼らを飼っているつもりなのだが、時々飼い犬に手を噛まれる時がある。その時、かまれた僕の右手拳にはかさぶたができる。
でも、翌朝には会社に出社し、稼いだ金で音像に餌をあげて全員が生き延びている。

ここまで書いていて、後半になるに連れてぐっと誤った方向に力が入ってしまい、いつも通り偏った思想や脈略のない自分語りのぐちゃぐちゃな文章になっていることに気づいた。
この文章自体、フォレスト・ガンプのようなものを最初はイメージして書いていた。(彼もベトナム戦争の帰還兵である。)
しかし、物語を・最後まで書ききれない。
基本設計書は正しく、それ通りに作れば良いものを、作業者が悪い。
6回途中1失点、尚もノーアウト1塁2塁の場面で僕は筆を置いてしまう。
これが治せない。
だからここでは一旦、こんな言葉でプツンと火消しをします。

一杯の紅茶を飲むためなら、世界が滅びてもかまわない。
by ドストエフスキー 『地下室の日記』より

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ここまで読んで、いわば厨二病のような、そういった類の違和感を感じたらあなたの感覚はきっと正常なんだと思います。
なぜならばもしこの主義思想表現が正常であったとして、今日も渋谷ですれ違う人全員が同じような感覚を持っているとするならば僕はそれが許せないからです。
正気と狂気。
この狭間で僕は毎日ブランコを漕いでいる。
正気に舵を切った分、同じ分だけ狂気へと出力される。

“正気がおわり狂気がはじまる時、おそろしいことは、この世界の外観は依然同じように見えているということです。駅の前にはタバコ屋があり、そのタバコ屋の赤電話には街路樹の緑の影がさしている。
すべてこの世には事もなし、何の変化もない世界でただ彼は「迷惑をかけられ」て困っているのです。正気の世界はプールの飛び板の端のような危険な場所でおわるのではありません。それは静かな道の半ば、静かな町の四つ角のところですっと、かげろうのように消えているのです。”

三島由紀夫『行動学入門』ー“正気と狂気”より。
彼もまた、英雄的な死というものができなかった人間である。
あなたは大丈夫ですかね。

2023年11月9日 

「何も心配することはない。 僕も最初はそうだった。 不安はじき消えます。 だって君は今、確実に美しいんだ。 それは悪魔さえも否定できない事実だ。」
「夜の街は、売春婦、街娼、ヤクザ、ホモ、オカマ、麻薬売人といった人間のクズが歩き回っている。奴らを根こそぎ洗い流す雨は、いつ降るんだ。」



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