追悼 楳図かずお〜ホラーの巨匠、逝く
楳図かずおが亡くなった。
88才死去、胃がんであった。
平均寿命を越えてるので、往生ではあるが、何か寂しいものがある。
私の人生の成り立ちで楳図作品との関わりは極めて深い。
特にホラーというジャンルにおいて、多大な影響を受けた。
もちろんギャグ漫画のまことちゃんも書いてあるが、昔のインタビューの記事でギャグ漫画もホラーの一部と考えているというのを目にしたことがある。
だとすればホラーとギャグは紙一重なのか‥
○スリラー熱演の楳図かずお先生
これぞホラーとギャグのドッキング⁉︎
もう子供の頃の記憶なのではっきりしないが、
耳鼻科に置いてあった楳図先生のヘビ少女を見たのが初体験であった。
先生の漫画は白と黒のコントラストが特徴的で圧倒的な怖さを感じたものである。
そして最大の恐怖は人間心理の怖さを強烈に描き出したことにある。
現代ホラーの巨匠スティーブン・キング以前にこの種のホラーを描いていたのが楳図かずおだと思う。
1969年に書かれたおろちは不老不死で超能力を持つ謎の少女おろちが人間社会に潜む恐怖を抉り出す。
モダンホラーとしての側面が強い作品である。
○おろち〜姉妹
年を取ると醜くくなるという呪われた一族。
姉妹の立場が逆転したとき、本当の恐怖が襲う。
そして私が最も衝撃を受けた作品を紹介しておきたい。
楳図かずおの最高傑作といわれる漂流教室。
小学校ごと未来へタイムスリップするSFであるが、楳図かずお先生のこと、ただのSFで終わるわけがない。
これは裏の十五少年漂流記といわれたゴールディングの蠅の王がモチーフにあるのだろうか。
蜘蛛のような恐ろしい未来人の姿や公害で変化した奇怪な植物たちや動物たちが読者を恐怖の世界に誘う。
しかしこの作品で一番恐ろしいのは人間である。
最初は協力しあっていた子供達も飢餓や未知の恐怖に対立、醜い争いに発展する。
今なら審査基準に引っ掛かる衝撃的なシーンがこれでもかというふうに描かれる。
テレビドラマ化され、原作と違うと批判されたが、いやこれは原作通りにやれないだろうと思ったのである。
○漂流教室
楳図かずおの作品は洗礼、わたしは真吾、14歳と恐怖の作品群が続く。
しかし晩年は負傷や病気に見舞われた。
私にとっては2022年のハルカス美術館で開催された楳図かずお大美術展が実質のお別れであった。
人間の情念の恐ろしさを描いてきた楳図かずお先生、今は安らかに眠ってもらいたい‥