ルネッサンスよ永遠に〜ヤードバーズが残した最後の伝説のバンド
ルネッサンスのオリジナルメンバー(正確には第二期メンバー)でリードボーカリストであるアニー・ハズラムが、9月に行われる米国公演がフェアウェルツアーだと発言したニュースが飛び込んできた。
主要メンバーであったマイケル・ダンフォードが2012年に亡くなり、翌年最後のオリジナルアルバム、消ゆる風が発表されてから危惧されてきたことだが‥
いずれにせよプログレッシブロックのひとつが今終わりを告げようとしている。
ブリティッシュ・ロックの名門ヤードバーズは伝説の三大バンドを生み出したことはよく知られる。
初代リードギターのエリック・クラプトンが参加したクリームはギター,ベース,ドラムのトリオ編成でブルースやジャズの即興演奏を取り入れ、大音量のサウンドを創出。
2代目のジェフベックは第一期ジェフ・ベックグループを結成して、ブルースやロックンロールを取り入れ、ハードロックの元となるロックサウンドを創り上げた。
そして3代目のジミーペイジはハードロックの枠に収まりきれない最強のバンド、レッドツェッペリンを生み出した。
しかしもう一つのバンドが生み出されたことはあまり表向きにならない。
ヤードバーズであったリーダー、キース・レルフはブルースにもポップにもはまらない独特の音楽を画策していた。
それが妹ジェーン・レルフと組んだルネッサンスの始まりである。
彼らは1969年にルネッサンスというバンド名のファーストアルバムをだす
しかしこのバンドは主力のキース・レルフとジム・マッカーティがすぐに頓挫してバンドは活動を休止する。
このバンドはのちにイリュージョンと名前を変えて、新たな活動をしていくことになる。
○フェイス・オブ・イエスタデイ
第一期ルネッサンス(イリュージョン)の曲をとる貴重な映像。淡々と歌い上げるフォーク調の佳曲。
そしてこの第一期ルネッサンスで助っ人で参加したギターのマイケル・ダンフォードにバンドの主導権が移り,ルネッサンスの名前をも承継するのである。
バンド・メンバーはキーボードにジョン・タウト、ベースにジョン・キャンプ、ドラムスにテレンス・サリヴァンという布陣。
現在ルネッサンスとはマイケルが協力者として参加し、歌姫アニー・ハズラムを迎えた時代を指している。
クラシックとトラッドを取り入れたシンフォニックなロックはプログレッシブ・ロックの中でも異彩を放っている。
まず彼らはこれからが本当の始まりだという意味が込められたプロローグという名のアルバムを発表し、活動を再スタートする。
○プロローグ
5オクターブという声域を持つアニーがスキャットで歌い上げる同名アルバムのタイトル曲。
ショパンの革命のエチュードを挿入した構成はクラシックを取り入れたバンドの境地だ。
続いて発表された燃ゆる灰は彼らの中で最高傑作といえる作品。
ルネッサンスの看板曲、カーペット・オブ・ザ・サンとタイトル曲である燃ゆる灰が収録されている。
他にも度々ライブで披露されているキャン・ユー・アンダースタンドと名バラードであるレット・イット・グロウが煇る。
○燃ゆる灰
二部構成から成る恐らくプログレッシブロック史上に残る大作。
アルバム・バージョンではウイッシュボーン・アッシュのギタリスト、アンディ・パウエルが参加、ブルージーなプレイを披露してエンディングを決めている。
○カーペット・オブ・ザ・サン
フォーク調のライブの定番曲、アニーのボーカルが爽快感で英国の牧歌的な風景が浮かび上がる
3枚目の運命のカードは前作、燃ゆる灰の延長線上にある作品。
このアルバムにはロシアの壮大なイメージを音にした大作、母なるロシアが収録されている。
そしてアルビノーニのアダージョをカバーした冷たい世界、淡々と歌われるバラード、君に想うが続く。
○母なるロシア
ロシアの壮大なイメージを交響詩のように仕上げた大作。スキャット、シンフォニックなメロディーとリズムが圧巻。
そして4枚目のシェエラザード夜話は初のコンセントアルバムだ。
レコードではB面に同名の組曲が収録されている。
それとブラックモアズ・ナイトもカバーしたオーシャン・ジプシーも入っている。
リッチー・ブラックモアとキャンディス・ナイトが組んだこのバンドは中世の音楽に影響を受けており、ルネッサンスの音楽も彼らに影響を与えたのではないだろうか。
○オーシャン・ジプシー
哀愁に満ちたメロディー、これぞルネッサンスの本髄。
そして5枚目は御伽噺、オーケストラを導入したシンフォニックな音作りと緻密にまとめられた短編集のような装いだ。
私的にはここでルネッサンスの歴史は閉じられたと思う作品で、これ以降ラストアルバムまでは聴いていない。
○姉妹
アニーの美しい歌声につらなるオーケストラサウンドと中盤のマイケル・ダンフォードのスパニッシュなアコースティック・ソロが印象的だ。
この後はポップなメロディーが中心となり、それなりの人気は博したようだが、一時的なもので失速していき1987年活動を停止する。
その後は2000年に再始動するも、2012年,マイケルが亡くなり、翌年ルネッサンスは最後のオリジナルアルバム、消ゆる風を発表する。
生前のマイケルの協力のもとに製作、最高傑作の燃ゆる灰を参考にした作品。
ポップス的なものはなく、プログレッシブロックの王道を行く内容であった。
○消ゆる風
アニーの高音ボイスが冴え渡る哀愁のメロディー、プログレッシブロックの王道的作品。
これ以降のルネッサンスはアニーを中心にバンドメンバーを変え、ライブ活動を続けてきたが、冒頭にもあるように最後のツアーを決断したようだ。
54年にも渡る音楽活動はプログレッシブロックの歴史の偉大な1ページとして残るだろう。
今は彼らの音楽に出会えたことを感謝したい!