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不思議の国のアリスちっくな休日〈下〉

〈前ページからの続き〉

あれは昼下がりの午後のことだった。当時2歳の息子を遊具で遊ばせたあと、車を停めた芝生エリアまで歩いた。大人が歩けば5分もかからない距離が、よちよち歩きの2歳児の速度に合わせると、信じられないぐらい遠〜く感じる。駐車場までなかなかたどり着かない。明日は何しようかなぁ。川にかかる橋を渡りながら、楽しくない訳じゃないのに疲れて気だるい気分の私は、ぼんやり空を見ながら思った。

東屋を過ぎて、階段を降りたところだった。茶色の小動物がいた。             「えっ、あれ、ウサギじゃない!?」うさぎだ、うさぎだ!息子と私は声をあげて、うさぎを追いかけた。うさぎはぴょんぴょんと、柵の向こうの茂みに行ってしまった。しばらくの間私と息子はちょっと離れた距離からうさぎを見ていた。

携帯にあった写真データは、その時に撮ったものだった。息子はその時のことを言っていたのだ。

‥ちゃんと覚えているんだね。

私は言われてもピンとこないくらい、すっかり忘れていたのに。

‥‥嬉しいなぁ。

ーーー

あの遊具がとっても小さく見えた時、まるで不思議の国のアリスみたいだと思った。詳細はうろ覚えなのだけど、小瓶の中の薬を飲んで身体が伸び縮みするくだりがある。それに合わせて、机や椅子が大きく見えたり小さく見えたり。

まだ、息子本人が遊具を小さく感じるなら理解できる。だって彼は現実に身体が大きくなって伸びているのだから。

でも、既にいい歳した大人の私が、どうしてあんなに小さく感じられたんだろう。身長なんて伸びるはずもなく、下手すると1センチぐらい縮んでるかもしれないのに。

息子が今より幼い時は、付きっきりで。公園なんて、怪我をしてしまうんじゃないかと気が気じゃなかった。階段を登るのも、落ちるんじゃないかと心配で心配で‥。2歳児のおぼつかないスローな動きを、じっと傍で見守っていた。ほら、段差があるよ、手すりに掴まって、足元見ながら、そうそう足をあげて‥‥。

すごいな、全然自覚ないけど、あの時私、ある意味息子と同化してたのかな。多分、同化してたんだろうな。息子を見守りながら、息子の視点で遊具を見ていたのかな。

ーーー

現在、下の娘はつかまり立ち真っ最中。 

歩けるようになったら、お兄ちゃんの時みたいに一緒に公園に行こうね。取るに足らない、小さくて退屈であたたかい、そんな思い出をたくさん作ろうね。

息子と公園に行った翌日、私は機嫌良くそんなことをうっすら思いながら娘のおむつを替えていた。汚れたおむつを下げて、パンツタイプのおむつを片脚に通したその時、

シャーー‥‥  


みるみる滲みてく娘の服と敷布団。      みるみる引いてく私の血の気。       (おまっ、ちょ、マジか‥防水シート!敷いてる助かった‥これはお風呂入れないと‥えーとえーと何からどうしよう!)

やっぱり子育て中の日々は、思い出に浸る間もなく、嵐のように慌ただしく過ぎ去ってゆくのだった‥‥。


おわり

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よむ山よむちゃ
愚直なままに核心を突いてしまいたい。でも、人は自分以外のヒトに図星なんか突かれたくない。 つっこみどころ満載の人間関係で、心の折り合いをつけるために書いてみます。大人って面倒くさい。