珈琲の可能性
逆流
「水車を使ってコーヒーを焙煎したい。どこかいい川ないですか」2020年夏、空き家ではなく川を探しに来た篠田拓郎さん。千葉市にあった純喫茶シノダを閉め、今新たな活動を始めようとしている。
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純喫茶シノダのコーヒー豆を購入希望の方へ
https://kaitaksha.stores.jp/items/615e6c8eacbcb05b2071c1f1
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この場所を選んだワケ
開宅舎 小深山(以下Kと示す):ぼくらが篠田さんと会ったのは川を探しに来ていたときでしたよね。川の流れを使ってコーヒーを焙煎したいと思ったきっかけってなんだったんですか?
篠田さん(以下Sと示す):この地域ならではのコーヒーを焙煎したいという思いがあった。川の流れはその土地のリズムそのものだから、川に水車を設置して、その回転を使ってコーヒーを焙煎できれば、それは本当のご当地コーヒーと呼べるのではないかって。あとは普段焙煎をしていて99%同じような味になる作り方がつまらないと思って。川の流れのような人間がコントロールできないものと向き合うことで、何か新しい方法が見つけられそうな感じがしたんだよね。
K:どうして市原市だったんですか?
S:市原の湖畔美術館に藤原式水車ってあるじゃない?あとは市原には「上総掘り」といわれる重要文無形民族文化財にも指定されている掘削技術もある。養老川という大きな川が南北を縦断していて、水車文化、井戸文化がある市原市。ここでやるしかないと思った。
大切にしていること
K:篠田さんが大切にしてることってなんですか。
S:以前、お店をある雑誌に掲載してもらったことがあるんだけど、そのときにも同じようなことを聞かれたな。
K:そのときなんて答えたんですか。
S:足し算は努力、引き算は美学。
K:かっこいい。
S:学ぶことは足し算。何事にもいろんなことを学ぶ必要があるよね。そこからシンプルなものにするのに引き算していく。そのためにはやっぱりたくさん学んでおかないと。
K:勉強になります。
S:あとは生き方として、どの業界にいても楽しいか否かで物事を判断したい。何がいいのかって言語化するのも大事だけど、直感的に「それ、おもしろいね」って生きていきたい。
これからのこと
K:水車を使ったコーヒー豆の焙煎はどこかでできそうですか?
S:今水車を作ってるよ。市原で知り合った人の家の近くに川があって、使わせてくれるそうなので、まずはそこで水車が動くのか実験してみようと思う。
K:いいですね。楽しみ。焙煎できるようになったらそのコーヒーを飲んでみたいです。市原市でお店や焙煎所みたいな拠点を持つ予定はあるんですか?
S:自治体って枠があるけど、そういう街の単位で動いていたワケじゃないんだよね。あなたはどこどこの人だからダメ。あなたどこどこの人だからいいよとか、そういうのは好きじゃない。新しいものを見つけていくのに田舎は可能性があるって感じてるよ。
野良焙煎
市原市立月出小学校は2007年に廃校になり、今では「月出工舎」という名前でいちはらアート×ミックスの会場になっている。今回お話を伺った小野剛さんが店主をつとめるヤマドリ珈琲は、月出工舎の1階にある焙煎所だ。取材に伺った日はカフェの営業日。廃校の一室を改装した店内で淹れたての珈琲を飲みながらお話を伺った。
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ヤマドリ珈琲について
https://yamadori-coffee.stores.jp/
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この場所を選んだワケ
開宅舎 小深山(以下Kと示す):小野さんが月出工舎に関わるようになったきっかけってなんだったんですか。
小野さん(以下Oと示す):2014年のいちはらアート×ミックスのときにボランティア団体の菜の花プレイヤーズとして月出工舎に関わっていたんですよね。
K:そうだったんですね。そのときはもう月出工舎はカフェスペースだったんですか?
O:もうぼくたちが来たときにはカフェスペースになってましたね。今年の7月から「TUKIDEYA×ヤマドリ珈琲」という形でメニューや営業スタイルなどを試験運営し、10月1日から本格のオープンとなりました。マルシェやイベントに出店する日を除く土日祝日に営業しています。
大切にしていること
K:小野さんは焚き火焙煎をすると伺ったのですが、味はどう変わるんですか。
O:まぁ、これは、結局味がどうこうじゃなくて雰囲気ですよね(笑)
アウトドアとかの外メシ効果じゃないですけど、焚き火でみんなでわいわいやりながら、焙煎して出来上がったコーヒーをその場で飲む。とにかく楽しみたいんですよ。
K:この月出工舎の雰囲気とピッタリですね。小野さんの名刺の肩書きが「野良焙煎人」って書いてあったのですが、この肩書きと関係はありますか?
O:自家焙煎ってよくいいますよね。室内で焙煎するのもいいのですが、外に出て焚き火とかで焙煎するのも好きで。1日に数組しか来ないようなところで、お客さんとお話しながら、ちょっとそこで焙煎からやりますかって、のんびり過ごしたいんです。だから「自家焙煎」じゃなくて「野良焙煎」かなって。ゆるさを求めてます(笑)
これからのこと
K:これから小野さんがやっていきたいことって何がありますか?
O:今コーヒーの木を育ててるんですけど、その木からコーヒー豆を採れるようにして月出産のコーヒーをここで出したい。
K:おぉ〜。
O:豆が採れるようになるまで5、6年かかるのでまだまだだいぶ先の話ですけどね。
K:今その木はどれくらいになるんですか?
O:去年の秋くらいに種を植えましたね。この木はブラジルの豆を分けてもらったんです。これしかなくてそんなにたくさん採れる訳ではないので、ほんとにたまたまその日に来てくれた人何人かだけが飲めるかもしれないです。
K:それめっちゃレアですね。
O:超レアですよ。
カフェのような場所
養老渓谷の駅前には角屋商店がある。地元の常連が座り缶コーヒーを飲むレジ前は、まるでカフェのよう。そんな角屋商店の店主である佐久間祥二さんにお話を伺った。
この場所を選んだワケ
開宅舎 小深山(以下Kと示す):しょうちゃんがここを始めたきっかけはなんだったんですか?
しょうちゃん(以下Sと示す)そりゃ親がやってたからね。子どもの頃から親父の姿をずっと見てたから。30まですぐ近くの介護施設で働いて、それからずっとこのお店にいるよ。もうすぐ30年だな。
大切にしていること
K:しょうちゃんが大切にしてることって何がありますか?
S:大切にしていること?んー、例えば、自分に部下ができたり、後輩ができたりしたら、ご飯いったときは全部先輩が出すものだって教わったね。自分が下の立場ときは上司が払ってくれて。オレも出すって言うけどさ、先輩は「いや、いい」って。ただ、「自分にも部下とか後輩ができたら全部払ってやれ」って。その話じゃないけど、今小深山くんとか若い人がこうやって何かやろうとしてるときに、自分も何かできないかって考えるようにしてるよ。
K:地域の人がそうやって思ってくれてることってすごく嬉しいです。レジの前にこんな立派な椅子があっていつも相談しに来ちゃいます。ここはぼくらのもう一つの拠点というか、お茶飲んで休憩するカフェみたいな存在です。
S:あんまり座ってると眠気を催すからほどほどにね。
これからのこと
K:これからのことについて聞いてるんですが、角屋のお店やしょうちゃんがこれからやりたいことって何がありますか?
S:店かぁ〜。俺の代で終わりだし、俺もそんなに長くやるつもりはないよ。お店を閉めたあとは土日祝日限定のカフェをやろうかな。
K:観光で来るお客さん向けですか?
S:そうそうそうそう。
K:今コーヒー屋さんがぼくらの仲間でいて、おもしろいことを考えてるんですよ。
S:コーヒーか。それならうちの店のそこに置いてもいいよ。このお土産コーナーのとこ。でもあれだな、コーヒー好きの人用のやつと、そんなにこだわりがないけどコーヒー飲む人用のやつが欲しいね。こだわる人は産地とか深入りとかこだわるじゃん。
K:そうですね。伝えておきます!
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