書。
たった1文字、あるいは詩の一片などを筆で記す。
ただそれだけのことですが、字の上手下手だけでなく、墨の濃淡、はらいやはね、かすれ、書体、大きさ、位置取りなど、様々な工夫で文字や詩の奥にある内面を表現するという、私にはとても難しい分野です。
そんな書の個展に、先日お邪魔しました。
書家は福島県出身の根本みきさん。
会場は色鮮やかな手毬が飾られているはれてまり工房さん。
今回は、地元福島59市町村をくまなく訪れ、その中で抱いた心の内を表現した作品たちとのこと。そのため1文字に工夫をこらせた作品もあれば、詩になっているもの、墨絵が添えられているもの、立体になっているものなど、たくさん展示されていました。
それまでの私なら「すごいと思うけど、よくわからない」で過ぎてしまう書でしたが、ご本人から説明をいただいたことで「なるほど」、「これはすごい!」、「この想いは共感できる」と、途端に表情豊かなものに見えてくるから不思議です。
たとえば、上の2つの写真。
その表面に記されている文字の反対側には、対になる文字や言葉が記されています。たとえば、「光」と「闇」みたいなものが球の表と裏にある。希望があるけど、その実、不安が同じくらいある。
また、球の中には失敗した書がたくさん詰まっているそうです。根本さんは「SDGsでしょ」と茶化していましたが、失敗(経過)が内にあっての文字(感情)の表出なわけですから、「心そのものを表現したともいえるのではないか」と、個人的には思いました。
編集者やライターにとって、人脈は非常に大切な宝です。
私もこれまで何百・何千という人と出会い、話してきましたが、どうしても全員とは関係性を維持できていません。が、一部の人とは今も何らかの形でつながっています。本当にありがたいことです。
根本さん、そしてはれてまり工房さんとも、末永くつながっていけたなら、またひとつ、心が豊かになれそうな気がします。