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夏の生命

あるひとが、「夏は命が溢れすぎていて苦手」と、だいたいのところこういう意味のことを漏らした。
ああ、その感覚、わかるかもしれない。

無遠慮に不躾に放出される生命。
加減を知らぬ如く生い茂る草。昨日の芽生えは今日の草叢。
飛び回る虫、這いまわる虫。はやい呼吸。流れてゆく汗。どこを見てもエネルギーが凝縮されている。
頭上の白く熱い光線は肌も目も焼く。
強すぎる光に反比例して、影は闇のように濃い。

浮かれて使い果たされた生命は一足飛びで死に到達し、熱のために腐敗が速まる。

幻みたいに膨張した生命と、遠くないうちに迎える終わりの気配。

溢れる命の中にあって、それが失われる世界をより強く感知してしまう。
厭う。