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2023年2月
読んだ本の数:6冊
今日のわたしは、だれ?
ウェンディ・ミッチェル/筑摩書房
驚きとかなしみと共感に満ちた読書。
ひとりの人の内と外が噛み合わなくなる病(ALSを知ったときのおそろしさとかなしみに似ている)。忘れるのではなくて、わからなくなる。あるはずのものがなくなり、ないはずのものが現れたらパニックを起こすのは至極当然だ。しかし、わからないからといって感じないわけではなく、よい方もわるい方も、外からくるものによってひき起こされる感情(感じること)はながく保たれる。疎外されれば悲しいし、役に立てたと感じればうれしい。
非認知症者は認知症当事者を、自分とは全く別のいきもののようにとらえてしまいかねないのだが、それは正しい理解ではない。それはそれで、『認知症』へのショックを和らげるための態度ではあると思うが、よい解決策とはいえない。
02月11日
https://bookmeter.com/books/15396329
焼肉大学
鄭 大聲/ちくま文庫
読み終えて気づけば焼肉店へ駈け込んでいた。
伝統料理や家庭料理は意識的に創作したものではなく、必要と環境により生み出されるもののせいか、「歴史」はアイテムが変わるだけで根本的には同じような筋道で語られる。有り体に言えば、通読していてやや飽きた(これは、書きぶりと編集の問題)。
タイトルの焼肉以上に、汁物・鍋物に個性があって面白い。また、朝鮮通信使の接待のために、日本の側で朝鮮料理を調査していたというのは驚いたし興味深い。キムチはともかく、牛の肉は一般的には食べてなかったはずだものなあ。
02月12日
https://bookmeter.com/books/12359864
82年生まれ、キム・ジヨン
チョ・ナムジュ/ちくま文庫
うかうかしていたら文庫になった!
本を引き裂きたくなるほど(つらい?くやしい?かなしい?)どれもそうどれも足りない。内側がずっと叫んでいた。ルポや論文では読まれない、あまりきっちりした物語仕立てでは、キム・ジヨンと読者の距離が遠くなる。だからこのスタイルだったのかなと思うし、それでたくさんの人間に届いたのだとおもう。淡々と淡々とできごとが重ねられていって、感情は描写されなくても、むしろ描写が少ないことで読み手の補完がはたらく。
解説中の「『とはいっても』……ハッピーなケース」というのが痛い。どっちがマシかという話をしたいんじゃなくて、語り手は程度のことではなくて有無のことを語るのだから。登場する女性たちが皆、不条理に対して「はぁ?」と口ごたえするのが頼もしかった。
02月19日
https://bookmeter.com/books/20583272
大奥(全19巻)
よしながふみ/白泉社
最近ドラマ化で話題ですね。そういえば読みたかったなと。男女逆転をさらに逆手にとって現実をあぶりださんかというながれお見事。
慶喜どの悪者にされてんね~。
02月21日
https://bookmeter.com/books/17724878
あちらにいる鬼
井上荒野/朝日文庫
巻末の川上弘美の解説を読んだら、私の感想これだ!となってしまい考えるのをやめた…。鋭すぎる解説というのもこまるなあ。
タイトルが予感させるものを裏切る静謐な物語だった。『父と母とよその女との特別な関係を描き切った(カバーアオリ意訳)』かどうかは知らない。現実と作品がそのまま連絡しているなどどという考えは、あまりに退屈で失礼じゃないかとすら思いつつ、凡人からすれば、こんな作品を仕立ててしまう種族(作家)は間違いなく鬼だと思う。
02月22日
https://bookmeter.com/books/18832501
違国日記(10)
ヤマシタトモコ/フィールコミックス
「やりたいことやんなさい」はいまでもむずかしいけどでもいまやりたいことやってはいるな。
02月23日
https://bookmeter.com/books/20546928
下手な評論家やなんかよりも、作家たちのほうがよほど鋭い眼差し現実を切り取っている。
そうこうしているうちにまーじで「異次元」に相応しい提言がエライヒトたちからぽんぽんと。立派な非国民認定される日も近いぞ!がんばれじぶん。