カイ書林 Webマガ Vol 15 No10
このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。
【近刊案内】
徳田安春&鎌田一宏:バイタルサインでここまでわかる! 第2版
A5判 200ページ 定価2800円+税 11月20日発売
ISBN 978-4-904865-73-6
【好評発売中】
筒井孝子著:必携 入門看護必要度 2024年診療報酬改定対応
5月11日発売 A5判 254ページ 定価:2500円+税
ISBN 978-4-904865-70-5 C3047筒井孝子著:ポケット版 看護必要度 2024年診療報酬改定対応
5月11日発売 A6版 113ページ 定価:500円+税
ISBN 978-4-904865-71-2 C3047草場鉄周監修:「総合診療・家庭医療のエッセンス 第2版」
5月17日発売 A5判 380ページ 定価:3800円+税
ISBN 978-4-904865-72-9 C3047筒井孝子・東光久・長谷川友美編集:看護必要度を使って多職種協働にチャレンジしよう ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.18
梶 有貴、長崎一哉 編集:ジェネラリスト×気候変動― 臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか? ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.17
■2024年度の第11回Choosing Wisely Japanオンライン・レクチャー
とき;2024年12月8日 20:00~21:30
演題:「Measuring Low-Value Care」
演者:宮脇 敦士
東京大学大学院医学系研究科 ヘルスサービスリサーチ講座
特任講師
場所:(オンライン、Peatixでチケット購入願います)
Choosing Wiselyキャンペーンが米国でスタートしてから10年以上が経過し、Choosing Wisely Japanもオンライン・レクチャーなどを通して活動を展開しています。今回は、宮脇敦士先生が、「Measuring Low-Value Care」と題して講演し、参加者の皆様と対話します。
*第10回Choosing Wisely Japanオンライン・レクチャー:提言:日本のChoosing Wisely,こうして進めよう」
ご出席:山中克郎先生(諏訪中央病院),鋪野紀好先生(千葉大学),司会:小泉俊三先生(Choosing Wisely Japan 代表)
上記オンライン・レクチャーの記録は、Choosing Wisely JapanのNewsletterとして会員の皆さまにお送りします。会員入会ご希望の方はこちら
■全国ジェネラリスト・リポート
診断をせずに見守ることの大切さ
緑川早苗 宮城学院女子大学 生活科学部 臨床医学教授
内科医になり30年以上が経過した。サブスペシャリティが内分泌領域で、まれな疾患のため診断が遅れ適切な治療に繋がらなかった患者も多く診てきた。終末期などを除き、正しい診断を行って治療に繋げることは良いことと、長い間信じてきた。しかし、原発事故後の甲状腺検査に関わり大規模な若年者の甲状腺癌過剰診断を経験し、診断することそのものが患者にとって害となり、人生に負の影響を与える状況を目の当たりにした。検診など症状がない人への検査は癌であっても過剰診断が生じ得る。甲状腺癌や前立腺癌はその頻度が高い。超音波で甲状腺に癌を疑う結節が発見された時、私たちは「ガイドライン」というお墨付きに従って診断を進める。しかしガイドラインは過剰診断を抑制することよりも、見逃しを抑制することに比重が置かれている。患者もまた、癌が疑われていれば精査を望む。過剰診断は疫学的な確率の概念であるため、一旦診断された癌が、過剰診断であるかどうかは個別には判断できない。よって過剰診断は過剰治療を引き続いて生む。これらは患者に身体的・心理的・経済的・社会的害をもたらす。過剰診断は低価値では済まず負の価値を生む医療なのである。あなたや私がもしガイドラインに従って正しく「過剰」診断を行ったら、その害を引き受けるのは患者一人一人である。甲状腺癌の過剰診断の抑制には、無症状の人に超音波を行わないこと、偶然発見された結節は精査を行わないこと、が必須である。甲状腺診療に限らず、医療の中で「診断をせずに見守る」ことが最も患者さんにとって有益である場合があることをもっと共有できることを願っている。
■マンスリー・ジャーナルクラブ
レッドミートの消費量を減すことで、2型糖尿病、心血管病、大腸癌の発症がどのように変化するかマイクロシミュレーションを行なった初めての研究
永井 恵 日立総合病院主任医長・筑波医大学附属病院日立社会連携教育研究センター准教授
Joe Kennedy, Peter Alexander, Lindsey Smith Taillie, Lindsay M Jaacks.
Estimated effects of reductions in processed meat consumption and unprocessed red meat consumption on occurrences of type 2 diabetes, cardiovascular disease, colorectal cancer, and mortality in the USA: a microsimulation study. Lancet Planet Health 2024; 8: e441–51
「レッドミート」とは、牛肉、羊肉(ラム、マトン)を含む多くのほ乳類の肉を示し、いわゆる脂分の少ない赤身肉とは意義が異なる。レッドミートの消費量が多いことは、あらゆる慢性疾患の発症リスクとなることが知られている。マイクロシュミレーションモデルとは、政策決定のために開発された手法で、限られたサンプルの特徴量(健康状態、地理的情報、食事内容など)を確率的に表現し、国全体の動きに拡張するモデルである。本研究は、アメリカにおいてレッドミートの消費量を減すことで、2型糖尿病、心血管病、大腸癌の発症がどのように変化するかマイクロシュミレーションを行なった初めての研究である。
方法:National Health and Nutrition Exam Survey(NHANES)の2015年から2018年までの結果を用いてアメリカの一般人口を想定したモデルを構築した。対象者となった8665人には2日間の食事内容について思い出し調査を実施して基礎データを得た。レッドミートの消費量と2型糖尿病、心血管病、大腸癌の発症リスクおよび死亡リスクの関係性については、既知のメタ解析および大規模コホート研究の結果を利用した。レッドミートの消費量を削減した場合、アメリカ全体で疾患の発症数がどう変化するかマイクロシミュレーションした。
結果:2.42億人のアメリカ国民のレッドミート消費量75.8g/日を10年間30%削減することで、107.3万人の2型糖尿病患者、38.2万人の心血管病患者、8.4万人の大腸癌患者が減少する。
考察と結論:レッドミートの消費量を削減することは、アメリカ国民の健康の向上のための有力な政策となりうる。
【コメント】
Lancet Planetary Healthは、2017年に地球環境と人間の健康の両立を目指す理念から創刊された。レッドミート、特に反芻動物の飼育により生じる温室効果ガス量は甚大であり、その消費量を削減することは環境にも有益であることは前提であり、本研究は地球と人間のco-benefitを提示することを意図している。
■カイ書林図書館
徳田安春&鎌田一宏:バイタルサインでここまでわかる!第2版―14年振りの改定版刊行
バイタルサインは、体の徴候を定量的に評価する指標です。全身状態の安定性や変化を把握し、異常を早期に発見するために重要です。バイタルサインの共有と評価により、多職種と患者情報のコミュニケーションを円滑にし、緊急度と重症度、回復度の判断を迅速かつ正確に行うことができます。 バイタルサインの評価は、患者の健康状態を把握し、適切なケアを提供するために欠かせないスキルです。
目次
Introduction そうだったのか! バイタルサイン+α 21のポイント
第1章 聞き書き「日野原重明先生、バイタルサインを語る」第か!
第2章 ショックバイタル
第3章 バイタル & ビヨンド
第4章 バイタルサイン相談室
第5章 バイタルサインを地域医療に活かす―会津ルール10(什(じゅう)の(の)掟(おきて))
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