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短編小説 職人
あなたは人を殺した事がありますか?と言われてあると言える人は殆どいないだろう?
しかし私はそうとは言えない。
私はある銃器メーカーに勤めている職人だ。
鍛造の技術や傭兵の経験を生かして日々銃の改良、開発を行なっている。
銃は何よりも手っ取り早く人を殺し、生き残れる道具だ。
その時の罪悪感は瞬間的には残らない。
倒れた者を見なければさらに半減する。
出来るだけ1発で仕留めるなり、苦しんで戦力や士気が下がるような武器を日々考えている。
人工AIに兵器を載せて戦地に行かせる。という考えも最近はあったが、感情を入れたAIは使い物にならない、所詮警備員止まりだ。
もうしばらくは戦争の主役は人間のようだ。
あなたは私が酷い人間に見えるだろう。人殺しとも言うかもしれない。
しかし考えてくれ。戦争従事者の食事を作るコックは?材料を作っている農家は?はたまた兵隊の服を作る会社は?
彼らは人殺しなのだろうか?
ビジネスと捉えれば終わりかもしれないが私は
それだけで割り切れるほどできた人間ではない。
人は印象や見た目によって勝手に意味も本質も変えられる。
都合の良いものだ。それが言いたかった。
私は今日も銃を作る。これでなくては守れないものがあるからだ。
ある日妻が私に別れを告げにきた。
私のことを人殺しとして見てしまうと言ってきたのだ。何年もその仕事の収入で生きてきたというのに。
世間の目もあったのだろう。
私は受け入れた。もはやどうでもいい。
私はやらなくてはいけない事がある。もっと効率の良い銃を作らなくてはならないのだ。
子供は妻が引き取った。犬を連れていった子の最後の顔は私にいつもの笑顔を向けていた。
私の祖父や曽祖父は先の戦争で亡くなっている。生きていたら人生変わっていただろう。戦争で人生を変えられた者がどれだけいようか。
言っておくが私は戦争が嫌いだ。
私の行動は否定していることを助長している。
狂った思考と行動だろう。
この世に宗教や政治、理由様々であれ戦争、紛争は終わりがないのかもしれない。
ただ、皆皆が私の銃を恐れ、戦争が短期で終わり。それを警察が使い、抑止に繋がれば少しはマシになるのか。
私のやっていることは一時凌ぎなのだろうか。都合の良い答えなのだろうか。
平和ボケした平和主義者のやっている事が正しいのか。正解は無いのであろう。
正解を知っている人がいたら教えてくれ。一生養うと約束する。
逆に世の中が戦争なく平和になったとしたら、何が抑止になる。銃はなくならない。
私は戦争をしている。相手は世界とだ。