短歌と小説、言葉、ことば
短歌の本を読むようになった、と最初の日記に書いたのが7月13日のことで、以来、言葉に飢えるたび短歌の本を読んでいます。もったいないし、一度にたくさんは読めないから少しずつ。
自分で詠もう、という気にはなかなかなれないのですけども、やっぱり短歌、好きだなと思います。いつものように感情で動いてるから感情で言います。好きだ。
何もわからないままフィーリングで読んでるけど、それでいいんじゃないかと思います。いいですよね。自分で自分を許していくスタイル。(※無敵)
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俳句は(今は)それほど心惹かれないので、なんで短歌だけ、というのは自分でも謎です。詩もハードルが高く感じてしまいます。俳句は定型が短すぎるから、詩は自由すぎるから、なのですが、いちばん大きいのは私が何にでも「物語(性)」を求めてしまうから、だと思っています。本当に個人的な問題ですまない……。
たぶん、俳句も詩も物語とはあんまり相性が良くない。というか、物語の上澄み、反射した光、のようなものが詩や俳句なんじゃないかと思っていて、要するにそれらは心の動きです。物語は心の動きじゃない。
その中間にあるのが短歌なのかな、と勝手に考えています。
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だから、短歌でも画がぱっと浮かぶものが好きだし、あれこれと想像の余地がある作品が好きです。「ちゃんとした読み方」や「鑑賞方法」がわからないままなので、これまたフィーリングの話になってしまいますけど。
直接的に「こういうことがあった」という作品より、あんまり地に足がついていないような、ふわっとしたのが好きです。
歌集のおすすめをください、とTwitterでゆるぼしたときにおすすめ頂いた永田紅さんの作品を引くと、
一冊の書物に添いてゆくこころ部屋あたたかく結露をなせり
指先にまでかなしみは来るだろうあるべきものをさがす朝に
おいしいものをおいしく食べていろいろな所へ行ってこの世と言わむ
透明と透明ふるる界面に確かめるごとく光はありぬ
満月は空にのぼりて一日の体言止めのようなる白さ
(永田紅「春の顕微鏡」より)
すごく好きです。歌集は付箋だらけになりました。
というかですね、まず何よりもこれをおすすめしてくださったフォロワさんがすごいと思うんや……。その節は本当にありがとうございました。
短歌で使われる言葉は、磨いて、磨いて、整えて、あるべき場所にぴたっと嵌まったピースなんだと思っています。それが、よくよく見れば違和感だったり、一見してわかるランドマークだったり、バニラアイスに醤油をかけるような味わいだったりするんじゃないかなって。(伝わる人にだけ伝わればいいや)
何にせよ、詠まれたことばは「それ」でなきゃならないものでしょう。必然性。え、だって、たった三十一文字で「音数合うからこれ使っとけ」みたいな余裕ってありますか。
私は見て楽しむばかりなので、短歌の作り方・詠み方はわかりませんけど、なんとなく、でできるものじゃないのはわかります。
私は140字とか300字でSS(ショートストーリー/掌編小説)を書くことがありますが、この文字数で、かつ小説の形式で「物語」を書くのは、なかなかにしんどいです。140でも300でも、使う言葉は厳選するし、省ける主語は全部省くし(省きすぎて人称が行方不明になることもある)(アカン)、意図して、でない限りは同じ単語を二度使いません。言い替えた方が深みが出る(気がする)ので。
短歌は小説ではないにせよ、三十一文字、かつ57577の定型はむちゃくちゃ厳しい。短歌を詠まはる方って、思考が三十一文字なんじゃろうか、って真剣に考えてるくらい、難しい。すごい。
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一方、小説は、長くなるほど一単語あたりの重みは減ります。直近では(と言っても去年の話ですが)12万字の長編小説を書いて同人誌にしましたが、12万字すべてが「こうあるべき」文字列かと言われるともちろんそんなことはありません。言い替えはいくらだってできるし、「ここは絶対こうでなきゃならん」という箇所は12万分のいくつだろう。(単語単位になるので、まあざっくりした話ですが)
だからダメとかいいとか言ってるわけじゃないんですけど、短歌を読み始めて、なんとなくこういうことに意識が向くようになりました。
書くものが変わったか、と言われると「そうでもない」としか言いようがないですけど、執筆に行き詰まったとき、短歌を読んでるとするっと何かがほどける感じがして、楽になることがある、のです。私は。
短歌における言葉がパズルのピースなら、小説における言葉は絨毯の織糸なんじゃないかなあ。
まだまだ全然だけども、織りあがった絨毯を近くで見るのと遠くから見るのと、違ったふうに見えたら嬉しいし、短歌にならって言葉の自由度をどんどん上げてゆきたい。比喩がめちゃくちゃ苦手なので……。
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だからね、一言で済ませるなら、短歌への憧れは嫉妬と裏表なんです。
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