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変さ値の高い子

 私は子どものころ、いつも、「変な子」と言われていた。「悪い子」ではなかったようだが、どうも、他人と違うことをしていたらしい。

 たとえば、学校の休み時間。「雨でなければ外に出て遊びなさい」と言われる。その言いつけを守って、外には出るのだが、みんなとは遊ばず、一人で鳥小屋の前に行き、じっとしゃがんで鳥を観察していた。そこにはセキセイインコやキンケイチョウ、チャボ、ハトやアヒルがいて、見ていてあきなかった。キンケイチョウの雄は羽がキラキラと輝き、光の当たる角度によって、緑色にも紫色にも見えた。首をかしげると、その角度によって違って見える。
 鳥小屋に光が差し込むと、光のすじが見えた。どうやらそれは、鳥の糞などが舞い散ったものらしい。それでも、とてもきれいに見えた。これもやはり、首をかしげると、その角度によって違って見え、いろいろと試してみた。
鳥小屋の地面に、たまに羽が落ちていることがある。校庭に落ちている竹ぼうきの小枝を拾って、小枝を網のすき間からさしこみ、羽をたぐり寄せたりした。おもしろくて夢中になっていた。
 だが、先生たちからすれば、みんなと一緒に遊ばない子は、だめらしい。別に仲間外れにされていたわけではなく、一人で十分、楽しんでいたのに。

 「遅刻をしてはいけません」という「きまり」は守った。その代わり、朝早く(といっても、せいぜい30分前くらいか)学校に行った。朝早く学校に行くと、校庭には誰もいなくて、ふだんなら順番待ちのブランコに乗り放題、すべり台もすべり放題だった。だが、やはり、遅刻をする子はいても、朝早く学校に行く子は珍しいらしく、「変な子」のレッテルを貼られた。
高学年になると、林間学校などの宿泊がある。「夜遅くまで起きていてはいけません」「夜に外出してはいけません」という「きまり」は守ったが、朝早く起きて、一人で散歩していた。これも、どうもそんなことをする子は、他にはいなかったようだ。

親の話では、小学校の先生から「何十年も教師をやっているが、こんなに変な子は見たことがない」と言われたという。悪い子はいくらでもいるが、大人の考えもつかないことをしていたらしい。大人があらかじめ想定している「やってはいけない」ことをするのが「悪い子」だが、私は、「やってはいけない」ことはしなくても、大人が想定していないことをしていたのだ。

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