コンクール
この間、コンクールに参加してきたので、それについてというか、コンクールについて好き勝手書きなぐってみたい。
---
私は合唱コンクールが好きだ。毎年楽しみにしている。
高校生までとはちがう、社会人で構成された団体。皆、その団体にそれぞれの「何か」を求めて入団し、練習やイベントに参加する。
社会人団体でコンクールに出ることにも色々な背景があると思う。
・自分たちの演奏を団の外の人に聴いてもらおうという想い。
・結果を貰って周りからの注目を集めたいという想い。
・審査員からの講評を参考にし今後の演奏をより良いものにしたいという想い。
・みんなで向かっていく1つの目標として設定する。
一般的に言われてそうなのを述べてみた。それぞれに言及するつもりはない。面倒だから!
私がコンクールを好きで、出るのを楽しみにしているのはなぜなのか。
その地区で、私たちと同じように毎日を過ごしながら、その本番に向けて全ての団体が練習を積み重ねてきているという事実を確認するのがコンクールの目的であり、それを想像して演奏を聴くと、とても嬉しい気持ちになる。
高校の時から変わらない。
関東大会に、自分たちが3年生の代で出場することができた。千葉県で行われた。5年以上前らしいけど、まだ5年しか経ってないのかという気持ち。
県大会を勝ち抜くということが県大会出場の目標だった。
なぜ県大会を勝ち抜きたかったのかというと、努力が報われて結果として表れてほしかった(ゴールド金賞を貰い、関東大会に出場決定!という箔をつけたかった)から、という理由もありながら、ただ単純に、今いるところよりも、もっと強い高校があって、もっと自分たちよりも上手い演奏に出会えるんだという、期待感に満ち満ちていたからだった。もうただそれだけと言ってもいいくらいには後者の割合が大きかった。
…実際に関東大会では、自分が聴いたこともないような名演たちが待っていた。本当に、苦しいほどに、悔しいほどに、かっこいい演奏であふれていた。人数に圧倒されたり、県理事長の指導していない女声合唱に触れたり、ハーモニーの綺麗さと音圧に度肝を抜かれて涙が出たり、とにかくあの日のことが忘れられない。
関東大会では参加人数でA部門とB部門に分けられるが、私たちはA部門(人数が少ないほう)に出場し、ヤバい(魑魅魍魎が跋扈するてきな感じで)と言われていた関東大会でも金賞を受賞した。20団体くらい出ていたのかしら、そのなかでも上から4番目くらいだったけれど、全国大会への切符は手に入れられなかった。A部門とB部門で合わせていくつの団体が行けるのか決まっていて、その振り分けの割合はあまり決まっていなかったように見えた。関東代表枠はB部門にほぼほぼ掻っ攫われたのだった。
(賞の話をするには比べざるをえないため、「自分たちよりも」という表現を使うことにする。)
自分たちよりも、すごい、かっこいいと本気で思って、鳥肌が立って、胸を打たれた(というかもう殴られたに近い)演奏をした高校が、自分たちよりも下の賞を受賞していたことに心の底から驚いた記憶がある。審査とはわからないものだ。まあ審査も人間がやってるしね。
自分たちの演奏が劣っていたとかそういう自覚があるわけではもちろんない。やれるだけやった。
他団体の演奏を聴いているとき、ただ上手くて、心臓を掴まれた。釘付けだった。今でもその演奏音源を聴いては、当時観客として椅子に座っていたときの感覚を思い出し、身震いする。
自分と同じように、いろんな背景を持った人が合唱団に集まっていて、合唱団の数は人の想いの数だけあって、みんな「何か」を抱えてコンクールに出場する。「熱い想い」ではないかもしれないので、やはり「何か」に落ち着く。
自分は1人ではないと、思いたいのかもしれない。
この世にある全ての合唱曲を生きている間に歌うのは無理に等しい。新しい曲も増え続けている。
死後の世界でも合唱ができるかは保証されていないので、私はせめて生きている間保証されている「合唱をやる権利」を行使して、なるべく多くの曲に触れ、多くの演奏に触れ、作曲者の、作詩者の、指揮者の、団員の想いに触れていきたい。
その人たちと歌えるのはその日だけかもしれない。
いつか戻ってくる人がいるかもしれないし、もう戻ってこない人がいるかもしれない。
その場をみんなで共有できるのは、その日が最初で最後かもしれない。
形として残しておくこともできない儚いもの、みんなで作り上げて、その場で生成できるのに、無形。
無形の、そこには何もない、利益もないかもしれない、それでも私たちは集まって生成し続ける。
形あるものはいつか壊れる。恋人という関係も、友人という関係も、関係に名前がついたことで「有形」となり、いつか壊れるかもしれないものになってしまった。合唱だけは、その場に生成される無形の音楽だけは、壊されることはない。
なにか、悪意などという、同じく無形のものに衝突されさえしなければ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?