「#創作大賞2024応募作品」❅ルナティックエンメモア Lunatic aime moi -紅紫藍―27.忍び寄るは黒い翳
❅27.忍び寄るは黒い翳
ふと違和感を拾った。
そう、ひゅと息の詰まる感覚にふと目が覚めて寒気のような背筋が凍る嫌な感じ。
何度も繰り返したこの感覚。
なにか。
何かが違う。
なにかが少しずつ掛け違えて元に戻らなくなる。
この感覚を俺は知っている。
なんだ。
なにが起きている。
森の深まりに乗じて変わる夜更けの肌を撫でつける風のひりつく涼しさを無視して。
思考が感覚があの日々をなぞる。
まるで切り裂かれた古傷が痛むように痛みが自分はここに確かにあるのだと叫ぶ。
冷たさに侵食されていくように指先が痺れて現実から目を逸らしたくなる。
いつだって主張を続ける治りもしない傷なんか…いっそ抉り取ってやる。
そう決めたはずだ。
なにがここまで纏わりつく。
いらないものはそぎ取って捨ててきたはずだ。
それでもまだ俺から奪うのか。
このどこか俺を苛立たせるものはなんだ。
脳内をぐちゃぐちゃとかき回されるような音のない。
カタチさえない不穏さ。
ひたり、ひたりと見えないものが忍び寄って俺に摺り寄ってくる。
それでもまだ鳴りを静めようとしない相反した高揚感が不気味で一層違和感をぬぐえない。
途轍もなく嫌な予感がする。
こういう時の俺の予感程当たるものはない。
今度こそどうか勘違いであってくれ。
勘違いならば、ミハイルにあてられて俺までただ心配性が増えたと笑えばいい。
だが、そう願えば願うときほど現実はそうはいかないことなど嫌というほど経験してしまった。
現実はいつだって無常だ。
そうだろ。
擦り切れそうな理性とベットするように。
押しとどめるそれにギリと噛み締めた歯が苛立ちですり減った音がした。
みたくない。
だが、見なきゃならない。
どこまでも惨く残酷な突き付けられる現実を。
※この作品の初稿は2022年9月よりpixivにて途中まで投稿しています。
その作品を改定推敲加筆し続編連載再開としてこちらに投稿しています。
その他詳細はリットリンクにて。
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