❅――価値屋《才能を開花させるペン》taste2-1 名前という価値 ・小説VER 2024.02.14-

❅キャプション
価値について探す物語。
≪投稿予定≫
・台本VER
・小説VER
・原案VER(現制作4時間)
(各セクション数は未定。大まか構図あり。設定など少しずつ追記形式。)
とある一言から連想したら物語降ってきた。
僕ならこうやってこたえたいな…なんて思いながら。
…いやなげぇよ、原案。
練り広げていったら脳内ではスクエアに居たので今回は台本tasteにも挑戦してみようかなって。独学の勘ですが。ボイスドラマと迷ったので構成はよくわからん。
あったかい瞳であったかい心で見守りお付き合いお願いします。

❅ *追記
随分本気になってめっちゃこだわってるので気まぐれに気が向いたら有料公開に移動するかと思いますのでよろー。
いつも通りの注意事項でよろしく頼むよっ!

藍堂翔琉




――《才能を開花させるペン》小説VER
2024.02.14-


Taste2-1 名前という価値


「運を掴むのは自分次第。
何の変哲もないものに価値をみいだせるのは君なんだ。」


キリリと胸を刺す静寂を帯びた冷たい空気、淡く広がる薄明は空が反転して深く深く深海へと潜っていく。
不意に聞こえてくるあのメロディーは誰のために謳われているのだろう。
まるで御伽噺の幻想のような惹かれずには居られないどこか不思議めいた音、
雪の結晶を踏みしめていくような哀しいような寂しいような声。


≪黄昏宵闇紛れる夜の魔物。黄金の湖、水鏡。その魔物授けるは魔法のペン。
その魔法にかかればたちまち自信に満ち溢れ生命の水浴びた妖精かのごとく光り輝きその未来は明るく照らされるだろう。
ネェ…キミハダレ?≫

その問いに誰かがこたえた。

  ―――「僕の名は、XXXXXX」


煤けたレンガの壁、肺を刺す痺れの香り、街を覆う霧、軋轢にすすり泣く声がこだまする工業地帯。
赤、緑、青、黒。色とりどりの酒瓶が打ち捨てられ風化をいまかいまかと待ちわびている。
道端で一本の黒色の空き瓶をつついて遊ぶ子ヤギはどうやらそれが気に入っているらしい。
この場所では子ヤギが悪魔の象徴だなんてことに気を止めるものは一人もいない。
薄汚れたレンガの壁に背をつけ恍惚そうな表情をする青年。
その視線の先には散らばった錠剤が虚し気に散乱していた。
それがただの風邪薬であったなら。ただの痛み止めであったなら。
どれだけよかっただろう。
それを証明するのはあまりにも簡単だ。
ここの地区にはジャッキと呼ばれる違法薬物を売る商人がいる。
ジャッキで売られている薬物はなんでもその薬をひとたび飲み込めばたちまち体が軽くなりしあわせを感じるらしい。
それは天にも昇る心地と噂の代物だ。
一度手を出したら強い意思がなければ抜け出すことは出来ない。
それがなによりの証拠だろう。
壁と壁を伝うようにして悲鳴が聞こえた。
また暴動が起きた。
煌びやかな電飾の纏わりついた家。
この荒れ地ではいっそ不気味なくらいに異質さを醸し出してそれがまた欺瞞を煽る。
自分は幸福だと言わんばかりの不釣り合いな装飾をしては束の間の安堵に手を伸ばす。
それをガラクタだと突き付けて遊ぶ隣人、悲しみをみて優越の蜜を舐めた。
嘘、イカサマ?そんなものは当たり前。見抜けない負け犬は誰も助けちゃくれない。
ひとりだけ幸せになるなんてここではだれひとり許さない。
それでも、ここの人間は幸福に手を伸ばさずにはいられない。

そう、ここは“溺れた”ものたちの街、
ーーーーーーー“フォルカロル(Forcalor)地区”。




薄暗い路地裏には翳が渦巻く。
風通しの悪いそれが滞って澱みと掃き溜めを増している。
その薄気味悪い路地裏を根城にケタケタと笑う三人がいた。
そのうちの一人が壁にもたれかかったまま口を開く。
「ねぇ、聞いた?最近また出たらしいわよ?」
そう腕組みを組みなおしながら心底鬱陶しいとでもいうように女は告げた。
「ん?何が出たんだ?」
そう問いて前髪を掻き揚げる。
無造作にセットしたそれは前髪だけが妙に崩れている。
前髪をてなみぐさに掻き揚げるのが癖なのだから仕方ないとまた無意識に持ち上げかけた手を意識的におろした。
「やだ、ホロゴーストよ!」
知らないなんてありえないとでも言いたげに声を張り上げた声が裏路地に反響していく。
その声に無意識に眉根を寄っていく。
結局おろしたはずの手は前髪を弄びながら「ホロゴースト?」と続けた。
そうすれば事の顛末を傍観していた最後の1人が答えた。
「なんだお前、知らないのか?あ。ほら、あれだよアレ。」
訝し気に言いながらふと口角を釣り上げて鼻で笑った。
同じようにその視線のを辿るが先に居たのは年端もいかない子供だけだ。
「?」
それより、なんでこんな路地裏に子供が?
そう考えている間に3人の視線に気付いたのか渦中の子供が振り返った。
薄汚れたぼろぼろ服に不健康そうに落ち窪んで濁りかけた瞳。
手入れのなされていない髪。
その姿は例えるならまさに灰被りのネズミだ。
「うーわ、さいあく。めぇ合っちゃったよ。今日は厄日かぁ?」
男の内の1人がキロリとその灰被りをねめつけた。
けれど、あんなちいさな体に睨まれて俯いてしまうような気の弱い子供に何が出来るというのだろう。
「なんで?ただの子供だ。」と前髪を撫でつけながら考えていたことが口をついて零れた。
ねめつけられて俯いた子供に害があるとは到底思えなかった。
「ちげぇよ、アレはホロゴースト。どっかから湧いて汚ねぇもん売りつけてくる餓鬼。親が捨てたんだろうよ。」
本当なんだろうか。どうしても到底そんなこと出来るようには見えないのだ。
けれど、心底嫌な物をみたとでもいうように男は言ってのけた。
「まぁ?簡単に言うなら“要らないもの”。みんな厄介がってるわ。だから、ゴースト、幽霊、“居ないもの”って言ってる。まぁわかるでしょう?あんなの見たくないもの。」
そう言って女はため息をひとつ吐き出して目を背け続けた。
それはこうだ。
この町にはどこからか時々物売りの子供が現れる。
町の民はこの子供を忌み嫌ってホロゴーストと呼んで倦厭していた。
ホロゴーストそれは、親に捨てられた無価値の烙印を押された子供、ホロとは全てゴーストは幽霊、この子供たちは“居ない者”。この子供もまた無価値という烙印を背負うみなしごだった。
それなら。
それならなおさら。
「でも、それならあの子が悪いわけじゃ…。」
視線を向ければいまだ物陰から覗く不安げな小さな子供。
「ははっ。お前はまーたそういう。きれいごとばっか言ってっと嫌われるぞ?
ははっ、それかおまえがアレ持って帰るか?」
親指を立てながら子供をさして楽しそうに男が問う。
それをきかれるとどうしよもないのもまた事実だ。
困り顔で「いや、連れて帰るわけには…俺、金ないし。」と目を逸らすしかなかった。
それを見てニヤと男は笑って口を開く。
「ははっだよなぁーー。」と大きな声が路地裏に響き渡った。
それに小さな声で目を背けたまま「まぁ…。」と返すのが精一杯だった。
ひたりひたり。背筋を誘う感覚に身震いをしたくなる。
男の笑い声が路地裏を反響して一人が笑っているにすぎないのになぜだか沢山の者が笑っているような錯覚さえ生まれる。
また男がニタリと笑った。
「あ、おまえアレ始末してこいよ。
どうせアレだってこんなとこで生きてたって先なんかねぇし、
つーかああゆうのはしつこく纏わりついて売ってくるし殴っても買うまでひっついてきて迷惑なんだよな。
俺は逃げたけど。逆に逃げた俺すごくね?
つか、悲壮感たっぷりで自分かわいそうですって顔して目障り。普通に迷惑だろ。」
「きゃははっ言い過ぎー(嘲笑)」
ひたりひたり。
笑いあう声に生暖かく感じていた空気が一気に冷めていくみたいに肌がピリピリとひりつく。
一体なんの話をしているんだ。そう言えたらどれだけいいか。
喉元すら上がらない言葉を意識の外に追いやることで保っていた。
はやくこの話題が過ぎ去って欲しいと願いながら。
「ほんとのことだろ?
な?みんなのために始末してやろうぜ?」
虚しいかな、そんな願いは誰も叶えちゃくれない。
男はそれはそれは面白いおもちゃを見つけたと言わんばかりの顔で悪戯を思い付いたように楽しそうに言い放った。
それは誇らしげに正義という名を掲げて。
「やだやだ、汚らしい。やるなら、あんたたちでやって。」
女が追い払うような仕草で吐き捨てた。
それに、「やだよ。俺二度と関わりたくねぇもん。お前やれよ。」だなんてあんなに楽しそうに豪語していた男が擦り付けるようにそばだてる。
お前は?という視線を向けられて
「俺は別にいてもいいと思うからやらない。」だなんて。
こんなことしか言えない自分に心底軽蔑が降り積もる。
「んだよ。ノリわるいな、つまんな。ってあ、ラッキー!見て見ろよ!」
唐突に男が何かを見つけて弾んだような声色に、二人が子供を見つけた時のようにまた視線の先を追っていけばそこには小さな路上で開かれている露店があった。
傍にあるトランクケース一つで商売をして渡り歩くと言われている其れ。
「ん?」
「やだ、ジャッキじゃない!いきましょ!」
ジャッキと聞きなれない単語に首を傾げてみるがそれに夢中な二人はもうこちらの話など興味がないみたいだ。
そうしてふと見つけた新しい話題に二人はさっきのことなど忘れてしまったようにジャッキと呼ばれたそれに向かって言ってしまった。
それはまるで何かに取り憑かれたかのようで怖かった。
けれど、同時に何事もなく早くこの話題が過ぎ去って欲しいと願った願いはあっさりと適ってしまった。
だけど、本当によかったのだろうか。
煮え切らないわだかまりに前髪を弄びながら子供が消えていった先をじっと眺めてみたが、その影が動く気配がないのを悟って前髪を乱雑に掻き揚げると先にいった二人の後を追いかけた。
物陰から子供が見ていたとも知らずに。


――――✩



※この作品の初稿はぷらいべったーにて投稿しています。
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