「#創作大賞2024応募作品」❅ルナティックエンメモア Lunatic aime moi -紅紫藍―20.終わりの始まり
❅20.終わりの始まり
天上のヴァンパイア協会からの依頼を受けたヴァンパイア研究室の権力者の息のかかったごく限られた研究者たちで構成された、
通称“黄迦リコリス”では恐ろしい発見がされた。
「…ああ。…ああ…ああ!!」
一人の白衣を着た研究員が資料をペラペラとめくりながら感嘆の声をあげた。
「なんだ。どうした。」
「急になんですか。」
「うるさいよ。」
口々に別の作業をしていた研究員が苦言を溢しながら集まってくる。
「で?どうしたわけ?」
1人の女性研究員がイライラとしながらぐしゃぐしゃと髪を掻き聞いた。
「わかったのだよ!」
そう言って捲っていた資料を興奮気味にずいっと差し出す。
「なんだ簡単じゃないか!!」
「それで?」
まったく話し出そうとしない研究員に心底鬱陶しいと顔を歪めた研究員が促す。
「きいてくれたまえ。我々が自分が自分だと言えるのは何だと思うかね?
それは、魂ではないか。
ならば、この肉体はその外装。
自分が自分だと認識し、また他者から認識されるための肉の器に過ぎない。」
自慢げに話しだす研究員。
「これだけ施策したが。結局、我々はヴァンパイア。
我々ヴァンパイアは血液中の生命力を糧として生きていたがそこには生命の源となるものがあったから糧とした。
それが各個体として有り得るのは血液中のDNAに刻まれたその“個体としての識別”と“魂が故に”のものではないかね。」
トントンと片眉をあげて研究員の肩を叩く。
「だからこそ、そこに直接各個体有り得る識別と魂に刻み込む行為、ヴァンパイアが深く人間を噛むこと、言い換えるなら血液中に自分の遺伝子配列を送り込むことで眷属に。
ヴァンパイア同士で噛むことで自らの遺伝子配列“血の契約”を刻み込み細胞レベルで従わせる事ができるというわけだ。
だとしたならば、紫月の姫が紫月の姫有り得るのは血液中のDNA、識別と魂にそう記録されているからだろうね。
“血の契約”であろうが能力であろうが、その識別の記号にすぎない。
それなら、我々崇高なヴァンパイアらしくそのDNAを血液ごとあの男の肉の器から奪ってしまえばいい。
そうであろう?」
「ええ、確かにそれなら理にかなっています。」
「へぇ、これならいけるかも。」
「でも、それでは紫月の姫の能力を移し替えるためには紫月の姫の血液を全て抜かなくてはならないでしょう?」
「確かに。それじゃあ、紫月の姫が死んじゃう。」
「それでいいのだよ。我々黄迦リコリスは、紫月の姫の能力をヴァンパイア協会の元へ渡す研究を依頼されただけで、紫月の姫を生かせとは言われていないのだからね。」
「協会もあんな危ないもの置いておけないって言ってた。」
「ルナティックが迫っている今、そんなものは時間の無駄だからね。」
ーーーー―――「紫月の姫の血液を全て抜き取り紫月の姫を処分する。」
※この作品の初稿は2022年9月よりpixivにて途中まで投稿しています。
その作品を改定推敲加筆し続編連載再開としてこちらに投稿しています。
その他詳細はリットリンクにて。
➩https://lit.link/kairiluca7bulemoonsea