「#創作大賞2024応募作品」❅ルナティックエンメモア Lunatic aime moi -紅紫藍―40.miroku & yui = cocytus
❅40.miroku & yui = cocytus
偶然か必然か。
僕らは
「そうだ。おまえ、名は。」
「暁。暁陽翔(あかつきはると)言わなかったっけ。」
「ちがう。真名じゃない。」
「えぇっと?」
「はぁ、まがつな。…第二の名だ。」
「ああ!えぇと、僕のまがつなは…“シャムシエル”」
「ふっ、ふははっ。ああ、やっぱりな。
いや、懐かしいなと思っただけだ。ああいや、なんでもない忘れろ。
それより、名は体を表す。…知識を持ち昼を司る強き太陽…そのものだよ、おまえ。
暁陽翔、おまえにあってる。
これからは、まがつなを使え。名は己を証明するものだ。大切にしろ。
なにがあるかわからない、そう心得ておけ。
シャムシエル。」
「わかったよ、サマエル。」
子供がひとり駅で佇んでいる。
その衣服は水気を含んで水滴を滴り落としている。
龍浬駅。
またの名をティアマト駅
子供にしかたどり着けないという幻の駅
その駅には1本の線路。
行先も書いてなければどこにたどり着くのか他に停車駅があるのかそれすらも何処にも記されていない。
そんな駅でごく稀に電車が通るらしい。
その駅で異世界にいけばたまに願いが叶うらしい。
偶然に偶然が重なってたった一瞬過ぎ去る駅に飛び込む、ただそれだけのこと。
その垣間見えた瞬間に。
どれだけの子供が飛べるだろう。
どんな願いなら飛べるのだろう。
願ったそのさきに何があるのだろう。
大人しく待っててねと言いつけられ散策していた好奇心旺盛な小さな子供がきらきらとその大きな瞳をめいいっぱい広げながら海を指さした。
「弥禄兄ぃ(みろくにぃ)!!みて!!!うみ!!うみだよ、弥禄兄ぃ(みろくにぃ)!!」
そのにぎやかで躍るような声にその子より少し大きな子供は
「おまえの、瞳にそっくりだよ。綺麗だな、唯(ゆい)」と言ってはしゃぐ子の頭を撫でた。
その瞳は愛おしいと雄弁に語って、その表情は端正な顔も相まって神のように美しかった。
「俺の!!俺の瞳にも、うみ!!弥禄兄ぃ(みろくにぃ)、うみ、好き?」艶やかにさざめいた海を弥禄と呼ばれた子が少しかがんでのぞき込むようにして
「俺は、唯(ゆい)の海、すきだよ。」と言って朗らかに優しく笑った。
唯と呼ばれた子がきゃっきゃっと楽しそうに嬉しいを体現するようにはしゃいだ。
きらきらと水面が揺れて眩いひかりが二人を照り返す。
「ちょっと!ちょっと!!何やってんの!?」
どこからか似た声が響き渡った。
ふと見渡せば自分と同じくらいの小さな子がずぶ濡れで海岸からとぼとぼと歩いている。
急いで二人はその子の元へ走っていった。
到達すればすぐ「大丈夫?」と心配して二人は手を差し出した。
その子と手が触れた二人にばちっと小さな刺激が走った。
二人はびっくりして顔を見合わせたがその手を離したりはしなかった。
あおやみどりのなかでその子だけはオレンジで
その姿はまるで太陽が落ちてきたみたいだった。
ねぇ、と唯と呼ばれた小さな子が弥禄と呼ばれた子の気を引いた。
「ねぇ、弥禄兄ぃ。…あの子の瞳、“あかいうみ”。“あかいうみ”してる。」
そう言われて視線を上げた弥禄と呼ばれた子はその燃えるような紅の瞳に釘付けになっていた。
――――――あの子の瞳、“あかいうみ”
「みて、cocytusさまたちだよ!生きているうちにおめにかかれるなんて私はなんて幸運なんだろう!」
❅ルナティックエンメモア -紅紫藍― 1章 完結〚全40話〛
2019.09~2024.07.23
※この作品の初稿は2022年9月よりpixivにて途中まで投稿しています。
その作品を改定推敲加筆し続編連載再開としてこちらに投稿しています。
その他詳細はリットリンクにて。
➩https://lit.link/kairiluca7bulemoonsea