「#創作大賞2024応募作品」❅ルナティックエンメモア Lunatic aime moi -紅紫藍―1.モノローグ
❅1モノローグ
夜の闇を全速力で駆け抜ける。
もしも捕まったのなら俺たちを待ち受けるのは死か絶望かはたまたそれよりも惨い生き地獄か。
考えただけでゾッとする。
闇はすぐ後ろまで迫っている。
逃げても逃げても追いかけてくる。
一秒、また一秒無慈悲に刻むように真綿が喉元を締め上げるように。
息が上がる。
逃げなきゃ。
肩をあげて必死に取り込む酸素が肺を拒絶するように拒んでいく。
悲鳴に似た呼気の音。
薄暗い、影色を纏った木の葉が視界の邪魔をする。
栄養を少しでも飲み込むために張り巡らされた木々の根が足元をすくおうと狙っている。
身体が酷く軋んで重苦しい。
それでも、ぐるぐるとまわる思考だけが“逃げろ、逃げろ”と警鈴を鳴らす。
―怖い。
――恐い。
―――苦しい。
だけど、逃げ切れたらこの先には自由がある。
『“幸せがある。”』
狂ったように暴れまわる鼓動を無視するように唱えた。
俺には、希望がある。
手元にはアイツの結晶。それは艶やかに光を携えて真っ直ぐ行くべき道を照らしている。
約束したんだ。
必ずたどり着くと。
振り返るな。
恐怖も
絶望も
誘惑も
何も見ないように。
幸せだった。
アイツと再開して。
柄にもなく抱きしめあったりなんかして。
嗚呼もうコイツと一緒に自由になれる。
ずっと一緒だな、なんて笑いあったりして。
そんな幸せ、すぐに壊される。
永遠には続かない。
どれほど想ったって。
どれだけ願ったって。
“変えられない”
痛いほどわかっていたはずなんだ。
喜びに抱きしめた温かな身体は。
呆気なく崩れ落ちた。
気づけば背中に走る衝撃は俺を捕らえていて。
首元は傷を抉り続けるみたいにビリビリと熱く頭は割れそうに金切声みたいな悲鳴をあげている。
耳をつんざく1発の銃声。
何が起こったかなんて分からなかった。
ただ茫然と≪ミハイル≫を見つめれば「守れて…良かった。」と。
“よかった。”と呻き声に似た声で繰り返す。
意味が分からない。
何故俺は床に寝そべっている?
なんでコイツはこんなにも呻いている?
状況を理解したくて身をよじってみても≪ミハイル≫にのしかかられた体はびくともしない。
「…凛弥?」
不安になって真名を呼ぶ俺にニコッと笑う。
それなのに。
そのきれいな笑顔に似つかわしくない紅が≪ミハイル≫の口端からとめどなく溢れている。
――――それはまるで。
―――――命の燈火の色で。
いくつかは首を伝っていて。
雫になったそれが俺を染めていく。
一心にそれを見ていたら抱き寄せられた。
≪ミハイル≫の顔が見えなくなったことに途轍もない不安が容赦なく俺を引き摺りまわそうと手を伸ばしてくる。
「おいっ!、おい、ミハイル!!」
≪ミハイル≫の体がゆっくりと重力に沿って俺のもとにのしかかってきて俺はあわてて≪ミハイル≫を呼んだ。
「まだ、…サマエルの真名、教えてもらってないのに…」耳元で小さく囁かれた声。
「そんなのいくらでも教えてやる!!だから。…だから行くな!!」
――そんなの、なんで憶えてんだよ。
「…ねぇ。…名前…呼んで。」
「ミハイル、ミハイル、ミハイル!!」
―――『呼んでやるよ、いつだって。』
「名前。呼んでよ。」
――だから。俺の前から消えるな。
「…《紫月凛弥》。《紫月》、《凛弥》っ《凛弥》っ《凛弥》!!!!」
必死で呼んだ。
段々との声が大きく早くなっても≪ミハイル≫が返事をすることも動くこともない。
とにかく≪ミハイル≫をどうにか動かそうと力を入れても重さが何倍にもなって背中も、ズキズキと傷む首元も、ガンガンとうるさい頭も痛くて。
そして、何よりぬめって滑った。
そのぬめりが何色かなんて俺には簡単に想像できてそれが何かなんてわかったけど、脳が分かることを拒否していた。
これで全てが自由だと思っていた。
努力が報われたのだと。
たった1秒。たった一瞬。
目を伏せれば、
希望は。
光は。
幸せは。
それは瞬く間に自分の指の隙間をこぼれ落ちていく。
闇が光を喰い散らかし汚濁が全てを飲み込んだ。
温かい拠り所は必死で掻き抱くこの手を擦り抜けて無力さを突き付ける。
「なぁ、ミハイル…。お前が正しかったよ。」
グッと強めた両手は大切なたった一つさえ繋ぎ止められない。
サマエルの瞳から一つ雫が零れ落ちた。
――――――『神なんていない』
❅2話め以降はこちらからどうぞっ!
(絶賛連載中です、少しずつ増えていきます。
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現在ぷらいべったーにて38話まで先行投稿中…
❅2. いっそ残酷なほど美しい
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❅3.この先の寂しくて孤独で退屈な人生の最後の手向けに
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❅4.どうせ、捨てようと思ってた命だ。アンタの好きにすればいい。
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❅5.今でも俺はおまえにあまいらしい
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❅6.――「決めるのは君自身だよ。」
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❅7.いくら大切にしようと愛そうと守れんこともある。
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❅8.「言わせたい奴には言わせておけばいい。」
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❅9.僕の血統は紫月の姫の伝説
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❅10.誰でもないサマエルが僕を肯定してくれた。ただそれだけで僕は救われたんだ。
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❅11.サマエルのその当たり前がどれだけ僕を救っているかなんてきっとこれっぽっちもわかってはいないんだろう。
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❅12.――俺に役割があるのなら喜んで引き受けるさ。
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❅13.Luna s-a părăsit umbră
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❅14.――『許さなくていい。だから俺の前から消えるな。』
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❅15.相手違いのclosing
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❅16.忍び寄る真実という名の偽り
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❅17.抗いようのないほど君がほしい
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❅18.擦り切れた感情値
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❅19.想いの対価
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❅20.終わりの始まり
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❅21.Crystals of Testimony 証の結晶
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❅22.暴かれた優越
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❅23.トップシークレット
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❅24.紛いもののXXX。
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❅25.―――「なぁ、あんたは僕が必要なんじゃないの。」
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❅26.薄暗闇の天使
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❅27.忍び寄るは黒い翳
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❅28.―――たぶん、俺は“このために生まれてきた”。
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❅29.俺は今度だって諦めない。奪われるだけの俺でいたくないから。
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❅30.クリスタルコンシール
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❅31.溢していた彩を。
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❅32.墨彩の滲む雨
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❅33.どうか笑って生きて。
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❅34.その名前は、“黄迦リコリス”。
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❅35.「“奪われる覚悟”もなく、“奪った”なんて言わないよな。」
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❅36.何度も。何度でも。
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❅37.「だから、お前は死ねない。死なせない。」
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❅38.その日、人間界は紫の月が彼らをいざなっていた。
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❅39.裏が表で表が裏で、裏が表とは限らない。その役割は誰が成す?
➩https://note.com/kairi_kakeru/n/n2908b2a5e789?sub_rt=share_pb
❅40.miroku & yui = cocytus
➩https://note.com/kairi_kakeru/n/n12a04b0365e2?sub_rt=share_pb
❅ルナティックエンメモア -紅紫藍― 1章 完結〚全40話〛
2019.09~2024.07.23
拝読ありがとうございます!!
#叶えたい夢に手を伸ばして
#マルチメディア展開目指してます
#芸能活動創作希望
#共に歩むためどうかお力添えお願いできますか
#お仕事お話お誘いください
#スキルについてはホームページへ
#拝読感謝です
言霊ってだいじだからすこしでも多く伝えることを僕は選ぶ。
賭けてるので。これに。
何処かの誰かに届くように。
繋がっていけるように。
この想いが沢山の君に届いてほしいから。
いつか脚本とか演出とかプロデュースとかもしたいし、この機会に更に学びたいなぁ。もし出来たら各セクション面でいーっぱい教えてほしい学びたい、勉強吸収させてほしいなって思ってますのでみなさまお力添え応援お願いします。めっちゃ最高なの沢山お届け出来るように尽くすよぉ!
※この作品の初稿は2022年9月よりpixivにて途中まで投稿しています。
その作品を改定推敲加筆し続編連載再開としてこちらに投稿しています。
その他詳細はリットリンクにて。
➩https://lit.link/kairiluca7bulemoonsea
https://lit.link/kairiluca7bulemoonsea ↓
❅イラスト…6年前に不意に描いた作品を編集して表紙にしてみましたっ。