雨の街と夜のカフェがお好き?Lesser Uryの話。
今、東京の展覧会界隈でちょっとしたニュースになっている、ドイツ系ユダヤ人画家のLesser Uryさん。
知ってます?たぶん、知らない人がほとんどだと思います。で、じゃあ何そのニュースは?と言いますと、
こちら(↑)の展覧会でね、いきなり彼の作品のポストカードが即日完売するという、異例の事態になったのですよ。
その絵がこちらの、「夜のポツダム広場」。
雨の街、濡れた路面に建物の灯りが光り、傘をさす人々が歩いています。
この光の路面、まるで目の前で見ているかのようです。
あまりの人氣ぶりに、美術館では彼の作品の展示場所を移しました。
今回の展覧会は、展示数69点のうち、何と59点が日本初公開。
クールベ、モネ、ルノワール、ゴッホなどなど、ビッグネームの作品が並びます。
その中で、Lesser Ury氏の作品が人氣をかっさらったとなると、どんな人?って氣になりません?
Lesser Uryさんは、ドイツ系ユダヤ人。パン屋さんの息子でした。
旧プロイセンのビルンバウムで1861年に生まれ、その後ベルリンに移り住みます。
1878年に学校をやめ、商人に弟子入りするものの、翌年にはデュッセルドルフの美術アカデミーに入学し、絵を学びます。
その後、パリ、ブリュッセル、ミュンヘン、シュトゥットガルト、カールスルーエなどに住み、1887年にベルリンへ。
1915〜22年にかけては大規模な展覧会も開催。生前から評価高かったんですね。
彼は都市風景だけでなく、自然の風景も、静物画も描いていますが、とりわけ雨の街の様子や、夜のカフェを題材にしたものの評価が高いようです。
聖書に出てくるモーゼを題材にした作品も描いていたようですが、どうやらそちらはほとんど現存しておりません。
そして1931年にお亡くなりに。
彼はオリジナルを残して、それと同じ構図の絵をばんばん描いて売るというスタイルだったようで、要はコピーを多売していたことになりますが、それが彼の名声を下げる一因となってしまったようです。
元々内向的で、晩年になるほど人間不信に拍車がかかり、貧困の末にお亡くなりになったとか……
何かちょっと切なくなってきます。
とは言え、彼の光の描写はやはり美しいです。今回の人氣を受けて、日本でも彼主体の展覧会がいつか企画されてほしいなあと思います。