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火星に住むということ

寒さと砂嵐がシェルターの無機質な壁を掻き鳴らす音で目が覚める。

40分ほど長い1日は少し余裕のある朝をもたらす。


季節の変わり目を感じる。

昨日まで30℃前後を行き来していたのに急に-80℃まで冷え込む。

ペットボトルは使えない。

すぐに沸騰してしまうから。

しょうがなく圧力鍋のように重々しい水筒に水分を入れる。

1気圧に調整されたゴツゴツの仕事着に着替え、

見た目に反した身軽さでいってきます。


タコみたいな宇宙人なんていない。

見渡す限り岩と赤褐色の土。

学生時代に留学したオーストラリアを思い出す。

たまに地球が恋しいけれど、

たまにね。


地中探索の仕事を終え帰宅。

インディジョーンズのようなワクワクする冒険はない。

穴に小さいキャタピラ型ユニットを投げ込み、あとは室内でカタカタ。

地球と違って残業はない。

早く帰らないと寒すぎて凍ってしまうから。


夜は冷え込んで-120℃。

大気がないなら雪もないけれど。

相変わらず風は強く吹いている。

配給の無機質なレトルトパックを温め、温室ポットからじゃがいもを採る。

ポトフのパックがあまりがちで渋々減らす。

コンソメにもブイヨンにも届かないような薄いスープ。

次回の本部アンケートにはこれのクレームを入れようと固く決心した。


これの繰り返し。



ふと何のために生きているんだろうと考え込んでしまうベッドの上。

火星に住むということ。

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