アポロンとルシファーって似てない?
先日、「古代ギリシャナイト」プレゼンツ、古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家、藤村シシンさんのYouTube生配信をディレクターとしてお手伝いしました!
その中のお話で「えっもしかしてアポロンとルシファー...似てるのでは?」と思ったことと、そして感じた「神話研究はこれだからやめられねぇぜ!」という魅力を、悪魔学の視点から解説します!
神話沼の楽しみ「ミルフィーユをめくって食べる」
今回の『エアアポロン祭だよ!藤村シシン~Youtube生放送~』
聞き手としてお手伝いしながら、なんと言っても個人的に興味を惹かれたのは
「ギリシャ神話の中で新参者ながらも、オリンポス12神の一柱に躍り出たアポロン、医術・芸術・太陽...太古の神々の権能を吸収(習合)してその地位を確立した神だが...それらを剥がすと<疫病>が残る」という衝撃の事実。(1:14〜)
そこで、私、放送後に紛らわしいことをしていたのに後ほど気がつかされました。
この生放送、及び「エアアポロン誕生祭」というTwiitter上でアポロンを祝う祭りを行うにおいて、簡単なパンフレット的なものをデータ販売したのですが。
その中に寄稿した漫画がこの話の解釈と反対のことをやっている!
*4Pあるので続きは買って見てください↓*
ここのシーンをまさにシシンさんはYouTube内で指摘している!
「イリアスで傷を癒す神、パイエオンは別のキャラである」
ここでアレスを治癒しているのは『医神パイエオン』なんですよね...アポロンだと思い込んで描いてしまっていた...やっちまった。
ただ、ここの解釈、どうやら見方次第との事のようで後ほどシシンさんに伺ったところによると。
紀元前8世紀ごろの解釈だと『アポロン≠パイエオン』
だが、紀元前5世紀ごろには『アポロン=パイエオン』と捉えられている。
「イリアス」は口承で詩人が歌い紡いできた叙事詩なのですが、
それが文字化されたのは紀元前6世紀後半。
つまり、連載開始時には『アポロン≠パイエオン』だった設定が、終了時には『アポロン=パイエオン』になっていた。
シシンさんは紀元前5世紀ごろの古代ギリシャ人として意見を言ってくれるシーンが多いため「私(紀元前5世紀ごろの古代ギリシャ人)から見てもアポロン=パイエオン」とのことらしい...なるほど!!
神話はどこの時代から眺めるかでガラリと景色が変わってしまう。
まるでめくって食べるミルフィーユ
これが神話を読み解く難しさでもありますが、めくる位置により味が変わるので
幾層にも楽しめるのです...!!
アポロンとルシファーはタマネギ
さて、この話を伺っていた時に脳内によぎったのは「俺の推しルシファー」です。
いや、正確には"俺の推し"は「サタン」です。この辺りを併せて解説させてください。
シシンさんの生放送時の話によれば、アポロンは"疫病"の神としてギリシャ神話に鳴り物入りしたが、時代を経るにつれ土着の神々を吸収していき多彩な権能を持つか神となった、というお話でしたがこれは私の推し、悪魔サタンにも言えるとこです。
紀元前、まだキリストが登場していない時代、旧約聖書の...ユダヤ教のサタンは悪魔ではありませんでした。古代のサタンは"見張りの天使"ギリシャ語ではディアボロス(告発者)と呼ばれていました。
(古代のサタンについて詳しくはこちらの記事)
彼はユダヤ教からキリスト教へ引き継がれ、新約聖書が編纂されたとき、初めて悪魔としてジョブチェンジします。
これは、ユダヤ教時代は異教徒の神を悪魔と位置付けることで信者(フォロワー)を増やすという勧誘戦略を行なっていたのが、信者が増えるにつれ異教徒の数が少なくなり「悪魔=異教徒の神、より唯一神は優れている」と言う売り文句が効かなくなっためです。
困った信者たちは神話内部に絶対悪=悪魔を作ることによって、
「唯一神はこの世の悪事から我々を守ってくれる」という新たな売り文句を打ち出し、キリスト教の隆盛は今に及びます。
そう、"俺の推しサタン"元々見張り天使であったのに、神様の経営不振をみかねて、あえて子会社に移り「悪役」業務を買って出たことで本社を支えたのである。エモい...。
この際に、子会社「悪魔」を運用するためにサタンは自分のキャラ立てをしようと試みるのである(実際は神学者が、ですが。)
なぜなら、神様を史上最高の唯一神に引き立てる悪役は最悪最強の悪魔じゃないと成り立たないからだ!
サタンは試行錯誤し、今までの古代神話の敵役、畏怖される神々、まだジャンルが確立されていないものの"悪魔"と呼ばれていた諸先輩...ベリアル、アザゼル、サマエル、アスモデウスなどを参考にし、紀元後4世紀についに
「神に反旗を翻した堕天使ルシファーの成れの果て、悪魔王サタン」
俺の考えた最恐の魔王としてブレイクするのです。
この経緯...似てませんか?
かたや疫病の神として鳴り物入りをし、人気を得るために土着の神々を吸収し、オリンポス12神に名を連ねたアポロン。
かたや見張りの天使として神に支え、(神の)人気を得るために古代の神々や悪魔を吸収し、地獄の王ルシファーとして最も有名な悪魔になったサタン。
アポロンの話を聞いていて思いました...似ている、と。
そしてシシンさんの「吸収した権能を剥がしていくと...疫病しか残らないね...」
の一言に。
サタンが好きで調べて行ったら好きな設定が剥がれ、ルシファーの名が剥がれ、紀元前には悪魔でもなくなった...。
中身が気になって剥いていたら何もなくなったタマネギ現象
を思い出しました。
より推しを知りたかったのに、残ったのは薄ーい何もない推し、
後に残るのはバラバラになったタマネギ、
ルシファー(サタン)と同じく、アポロンもタマネギだったんだね...。
神話沼は味のなくならないガム
このタマネギ現象、大なり小なり他の神々や神話でもあるかもしれません。
これに気がついたとき、私は消えて無くなりそうな推しに衝撃を受けました。
今回、シシンさんの話を聞いておんなじ気持ちになった人もいるかもしれない。
だが、あえて言いたい。
神話沼はこの、バラバラにしてしまったタマネギを味わうのが本懐であると!
剥いて散らかしたタマネギを食べて見てください。
中心の方(古代)、真ん中の部分(近代)、薄皮(現在)
それぞれに別々のおいしさがあると思います。
創作ができる人は料理してみてください。
中心の方(古代)で作った炒め物と、真ん中の方(近代)で作ったサラダはどれも味わいが違うはずです。
どの部分を使っても間違いでなはいです、ただ、
薄皮しか知らないのと、剥き尽くして中心を食べた後では、推しというタマネギへの調理法が、全然違ってくるはずです!
大事なのはここだと思います。
そして、この楽しみ方を知ると一つのタマネギで毎日違う料理をして楽しめるんですよね、もう無限にタマネギを食べ続けられる...ずーっと噛んでられる。
かれこれそんな感じで悪魔学を噛みしめ続けて20年は経とうとしています。
神話沼は味が尽きない噛み続けられるガム。
皆さんも、この奥深い沼においでください。もうずーっと神話のこと考えてればお家で過ごせますよ!
<悪魔学参考文献>