いったん最初の悪魔の話をしようと思う。
前回は旧約聖書の天使だったころのサタンについて語りました。
今回はどうやってサタンが堕天(宗教史的な意味で)したかを話し...たかったんですがこれには前置きが必要なのでまずはその前置きから。
天使サタンが旧約聖書に書かれた段階では、聖書世界には
まだ「悪魔」という概念がありませんでした。
例えば古代ギリシャには「ダイモーン」という何か悪さをする霊的なもの…と言うのがおり、時には人を死に追いやることもありますが。
「ダイモーン」は善いものも悪いものもおり、人類に必ず悪意をもって攻撃してくるわけではありません。
このように、神話には必ず悪魔がいるというわけではありません。
ではいつから神話の世界に悪魔=悪役が出てきたのか
長くなりますが、原始、古代の神話感から順を追って語ろうと思います。
神様という概念はアニミズム-万物に魂が、神々が宿っている-という発想から生じていると言われています。
こういうと日本人は「神々ってそういうものでしょ?」と思いますが、
西洋では古代...もしかしたら原始の時代に置いてかれた発想です。
(なので西洋の神話・宗教史の本ではこの"八百万の神"の概念が長々と説明されていて「そんなに理解し難いのか!」と驚かされます、日本人には慣れ親しんだ概念なので)
このアニミズムに基づき、世界には八百万の神々が生まれました。
多神教では絶対悪=悪魔が生まれない
この八百万の神々の考え方により原始〜古代世界にはたくさんの神々が生まれ、神話が紡がれていきます。
神話の中で神々は、神々同士で争ったり、化け物を退治したりします。
化け物退治はその神々の力を示すために語られますが、化け物は結果的に人間に害をなしますが絶対悪ではありません、クマやイノシシみたいなものです。
神々同士の争いはどちらにも言い分があり、どちらが絶対に悪いとは言い切れないのが常です。
多神教の神々の争いは、A国の神とB国の神の喧嘩、という構図もよくあり、 A国側の神話がメジャーになったものの、B国側の真逆の神話が存在する、というのも珍しい話ではないのです。
絶対に悪い神が生まれた神話
そんな中「世界には善神と悪神がいた...」という、
最初から理由などなくとにかく悪い奴が存在した、という”善悪二元論”を打ち出した神話...宗教が出てきました。
それがゾロアスター教です
ゾロアスター教はペルシャで世界最古の預言者と言われるゾロアスターが創設しました。
このゾロアスター教のに登場する神々...というのは、インド神話と基盤を同じくします。
ゾロアスターの最高神アフラ・マズダーはインド・イラン神話の「ヴァルナ」のことであると言われていますし、
インド神話から仏教が生まれたので「ヴァルナ」は仏教界では「水天」として信仰されています。
彼の部下には善神スプンタ・マンユがおり(後の世でアフラ・マズダーと同一視される)善神に対立して悪事をなす悪神アンラ・マンユ(アーリマン)が存在します。
そして面白いことに、悪神アンラ・マンユの部下には帝釈天やシヴァがいる
魔王インドラ(帝釈天)、魔王サルワ(シヴァ)という、あれ...神様じゃなかったけ?っと思うメンツが悪の軍団に名を連ねています...。
神様のディスり合いは当時の人間模様を表す...
インドとペルシャの2派閥、仲悪かったんでしょうね。
そんなゾロアスター教の悪の軍団にはオリジナルキャラがいる
それがインド・イラン神話にいなかった絶対悪の部下の魔王たちです。
怒りの悪魔アエーシュマ、背教の悪魔タローマティ、疫病の悪魔ドゥルジ、娼婦の悪魔ジャヒー...
彼らは悪魔アエーシュマを筆頭とし、世界に悪をなしたとされます。
インド神話にも悪魔は登場しますが、そこに登場する悪魔は気まぐれで多少のいたずらをする悪鬼のようなキャラクター。
善神に徒党を組んで世界を悪に染めようとする悪魔という構図は、ゾロアスター教が初とされます。
この、世界最古の悪魔たち...そのリーダーの一柱アエーシュマ、
キリスト教世界ではてアスモデウスとして悪魔業を続けています。
ソロモン神殿の建設を手伝ったというソロモン72柱のうち1柱、
そして七つの大罪のうち色欲を司る悪魔アスモデウス。
実はルシファー=サタンより歴史が古いのです。
つまり!アスモデウスが最初の悪魔!元祖悪魔だ!!
...というわけで、アスモの話だけで一記事が終わってしまう!推しにたどり着くまで長い!
ですがその成立までの道筋も含めて好きなんです!!サタンが!!
次回こそはサタンの話の続きをしたいと思います。
その前にベリアルの話になるかもしれない。推しにたどり着けない。