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デジタル通貨と「信用スコア」:デジタル通貨が作りだす未来の暮らし
皆さん、最近はスマートフォンで簡単に支払いができる便利な世の中になってきましたね。PayPayやd払いなど、いろいろなサービスが登場して、財布を持ち歩かなくても生活できるようになってきました。
前回のコラムでは、各国の中央銀行、さらにはメガバンクが一斉に新しい金融システムのインフラづくりに乗り出したという情報を紹介させていただきましたが、今後、デジタル通貨がより身近に暮らしに浸透すると、これからの未来の暮らしには大きな変化が起きるかもしれません。
今回は、そんなお話を紹介したいと思います。
その未来の暮らしを見通す上でデジタル通貨社会の先行事例として参考になるのが、お隣の国、中国です。
中国で進んでいる新しい仕組みを例に、日本の未来について考えてみましょう。
中国の「信用スコア」システム
中国では、お金の使い方だけでなく、日々の行動まで「点数化」する仕組みが一部からですが広がっています。これは「信用スコアシステム」と呼ばれ、商業目的で活用されるケースが増えています。
中国の巨大IT企業、アリババグループが始めた「芝麻信用」というサービスが、その代表例です。このサービスは、以下のような情報を基に信用評価として5段階で点数をつけます:
支払い履歴:請求をきちんと支払っているか
消費行動:どんな商品を買っているか
個人の属性:職業、学歴、住所など
人間関係:SNSでのつながりや、友達の信用度
社会的行動:交通違反やボランティア活動の有無など
つまり、お金の使い方だけでなく、利用者の行動の多くの部分が評価の対象になっています。
高得点のメリットと低得点のデメリット
高得点の利用者は、次のような特典を受けることがあります:
ローン審査が簡単になり、低金利で融資を受けられる
デポジット不要でホテルに泊まれる
賃貸契約の際に、敷金の支払い免除
一方で、スコアが低いと、特定のサービス利用や優遇措置が制限される場合があります。
デジタル人民元との関係
なお、「芝麻信用」は主に商業的なサービスで、中国政府やデジタル人民元と結びついたシステムではありません。
デジタル通貨でも技術的には信用スコアの採用は可能
ですが、この信用スコアシステムを皆さんが使う中央銀行が発行するデジタル通貨と結びつくとどうなるでしょうか?
すべての取引がデジタルで記録される
リアルタイムで支出が記録され、即座に信用点数に反映される可能性
国が個人の経済活動を詳細に把握することができる
例えば、環境に優しい商品を買えば点数が上がり、ギャンブルに使えば点数が下がる、というようなことがリアルタイムで起こる可能性があります。
信用スコアは、いいことも、心配なこともある
このシステムには、良い面も悪い面もあります。
良い面:
社会全体でマナーが向上する可能性
環境保護やボランティア活動が促進される
信用度の高い人が正当に評価される
心配な面:
プライバシーが侵害される危険性
点数による新たな差別の発生
日本ではどうなる?
日本でも、J.ScoreやLINE Scoreなど、信用スコアのサービスが始まっています。ただし、日本はプライバシーを大切にする傾向が強いので、中国の「芝麻信用」ほど広範囲な評価や、社会生活への直接的な影響は今のところありません。
日本銀行も「デジタル円」の研究を進めていますが、現時点では信用スコアとの連携は検討されていません。
ただし、将来、限定的な形での活用は考えられます。例えば:
ローン審査での利用
金利の決定への活用
契約時の審査簡略化
私たちが心がけるべきこと
このような新しい技術が広がると、生活が便利になる反面、様々なリスクも増えます。だからこそ、私たち一人一人が以下のことを心がける必要があります:
新しい技術をしっかり理解し、デジタル決済や信用スコアの仕組みを学日ましょう。
個人情報を慎重に管理し、SNSでの投稿やオンライン行動に気をつけましょう。
新しいサービスの利点とリスクを自分で考える力を養いましょう。
デジタル技術だけでなく、オフラインでの人間関係も大切にしましょう。
社会のためになる行動を点数にとらわれずに実践しましょう。
新しい技術についての議論に参加し、多様な視点でより良い仕組みを模索しましょう。
これからAIなど次々に便利なテクノロジーが生み出されていくと思います。僕は、その便利なテクノロジーを現代に生きる我々が積極的に活用するのは良いことだと思ってます。
でも同時に、テクノロジーを上手に使いこなしながら、人間らしさも大切にしていく。そのバランスが重要なんだと思います。デジタルとアナログ、両方のいいとこ取りができる社会を目指していけたらいいですよね。
結局のところ、テクノロジーと上手く付き合っていくのは私たち一人一人なんです。どう使うか、どう活かすか。それを考えながら、みんなで新しい時代を作っていけたらいいなと思います。