ナースコールを押さない理由
病院や施設で生活を送る際に,「ナースコールを押して,支援者を呼ぶ」という行為が必要になることがある.
特に,ADL(排泄や更衣など)に介助を要する場合は,重要性が増す行為となる.
時々,支援者から,「ナースコールの理解ができていない」という話を聞くことがある.
これは,「支援者がナースコールを押してほしいとき」と「クライエントがナースコールを押す必要があると思うとき」に齟齬が生じていることが多い.
この齟齬をそのままにしていると転倒や転落などの事故につながり,クライエントの健康に思わしくない影響を及ぼしてしまう可能性が高まる.
もちろん,クライエントの状況によっては,センサーマットなどを使用し,ナースコールを押さなくともいい方法を選択することが必要だ.
ただ,その過程で,「なぜナースコールを押さないのか」という理由を考え,対策を練らなければ,事故発生のリスクの軽減にはつながりづらくなってしまう.
「人の手を借りたくない」
「自分でできる」
「呼んでうるさい人と思われたくない」
「いつ押せばいいのかわからない」
「嫌いな人がいる」
「人見知りしてしまう」
など,様々な理由がある.
「認知機能が低下しているから」,「危険認知ができないから」という評価だけでは不十分だ.対話をして,観察をして,押さない理由を知り,対策に反映していく.
病院,施設という環境では,「ナースコールを押して,支援者を呼ぶ」という行為は,その人の作業と環境の重なりを深くし,作業遂行をより良い状態にするために必要なことである.作業療法士として,クライエントに関わる上で,一つの大切な視点として,備えておきたい.