
【医師解説】過去最多の感染者数!かからない、うつさないためのインフルエンザ対処法
愛知県では2024年12月12日にインフルエンザ注意報が発令。名古屋市では2024年12月23日~29日におけるインフルエンザ患者報告数が、1999年4月以来過去最多となっており、インフルエンザが猛威を振るいました。
インフルエンザやコロナなど感染力の高いウイルス性の風邪を発症すると、体調不良で学校や仕事に行けなくなり、生活に支障をきたします。
自分の健康を守るため、日常を楽しむために、どんな対策ができるのか、名古屋共立病院 堀 浩院長に教えてもらいました。

インフルエンザが蔓延する理由
2024年冬、なぜこんなにも広まったのか?
長い間、新型コロナウイルスの感染対策を十分行ってきたことで、季節性ウイルスであるインフルエンザの感染は減少傾向にありました。
しかし、インフルエンザの免疫を持たない人が増えたほか、新型コロナウイルスが5類感染症へ移行したり、感染対策の緩和があったり、そういったタイミングとインフルエンザウイルスの蔓延条件とが合致してしまったことが要因ではないかと考えられます。
なぜ冬に流行りやすいのか?
空気が乾燥しているため
日本の冬は乾いた空気が流れ込みやすい気象条件なので、夏に比べて乾燥しています。
夏季は湿度が高いので、ウイルスは空気中の水分によって重くなり地面に落下しやすく、空気中を漂う時間が短くなります。
逆に、空気が乾燥しているとウイルスが空中を滞在できる時間が長くなるので、人と人との間で飛沫感染が起こりやすい状態になります。
そのため冬季では、感染している人のくしゃみなどで生じる飛沫が、人の鼻や口に近い高さで長時間漂うことになり、呼吸などを通じて鼻や口の粘膜からウイルスが侵入しやすいのです。
気温が低いため
気温が低くなると、体温を維持するために血液を体の中心に集めようとするので、鼻や喉など、中心から離れている部分の血流が悪くなり免疫力が低下したり、粘膜の乾燥によって炎症を起こしたり、バリア機能が低下し、ウイルスに抵抗する力も弱くなってしまいます。そうなると、ウイルスが体内に侵入しやすく、感染が起こりやすい状態になると言えます。
感染しやすい環境で出来る対応策
対策①生活習慣を整える
まずは日々の健康管理を怠らないことが大切です。
三食バランスのとれた食事や適度な運動をして、睡眠は自分にとって必要な時間を把握してしっかりとるようにしましょう。
免疫力が弱まると様々な病気に感染しやすくなります。
免疫を高めるため、免疫細胞の約7割が存在している腸の環境を整えることがおすすめ。
💡腸内環境を整えるために意識していただきたいポイント💡
・善玉菌など良い菌を摂取する
ヨーグルト、納豆、チーズ、味噌、ぬか漬けといった発酵食品は、腸内環境を整え、免疫機能を高めることが期待できます。
・お腹の中にいる良い菌を増やす
しめじやエノキなどのきのこ類、わかめなどの海藻類、ごぼうなどの食物繊維は善玉菌のエサとなり免疫力をアップさせます。
・ストレスをためない
ストレスを感じると交感神経が活発になり、副交感神経の働きは鈍ってしまうので腸内環境は悪化して腸の不調を引き起こします。リラックスできる時間を積極的に増やしましょう。
対策②マスクを着用する
飛沫感染を防ぐことに効果的なマスク。
大勢の人がいる場所に行く時などは、なるべく着用することをお勧めします。
自分自身に咳やくしゃみといった症状が出ているときは咳エチケットとして、マスクを着用しましょう。
無意識にマスクを触ってしまう時もあると思いますが、マスクの表面はとても汚れているので、触らないように注意しましょう。
外気による汚れやウイルス、細菌が付着している可能性があります。食事などでマスクを外す際には、ティッシュペーパーなどに包んで置くと良いですね。
鼻から顎までしっかりカバーするように着け、自分の顔のサイズにあった物を着用するようにしましょう。

対策③正しい手洗い・うがいを適切なタイミングで行う
毎日洗っているその手洗い方法は、十分ではないかもしれません。
正しい手の洗い方を知って、実践してみましょう。

手指衛生テクニカルリファレンスマニュアルに基づいて作成
軽く洗っていると、落とし切れていない汚れが付着していることが。

しかしその汚れは目に見えないので、汚れが付着した手で粘膜に触れると、あっという間にウイルスや細菌が侵入してしまいます。体内にいれないためにも、入念に洗うことが大切です。
手洗いの適切なタイミングとは
知らず知らずのうちに、ウイルスや細菌が付着した手で、自分の目・鼻・口といった粘膜に触れてしまい感染することを防ぐために、手を洗うタイミングをおさらいして、習慣づけましょう。
1.外から帰宅した後
2.トイレの後
3.調理・食事やおやつの前
4.手すり・ドアノブなど、多くの人が触る場所を触った後
5.咳・くしゃみ、⿐をかんだ後
6.介護・介助の前後
7.生肉、魚介、生卵を扱った後
8.掃除や洗濯の後
9.ガーデニングや土いじりの後
10.オムツ交換の前後
11.動物を触った後
すぐに手を洗えないシチュエーションもあると思います。
そんなときのために、除菌シートやスプレー、ジェルなどを持ち歩くと安心でしょう。
対策④インフルエンザワクチン接種
インフルエンザワクチンを打つと、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については発病を34~55%、死亡を82%阻止する効果があったとされています※1。
接種すればインフルエンザに絶対にかからないというものではありませんが、発症予防や、発症後の重症化や死亡の予防に一定の効果があるとされています。特に高齢者、基礎疾患を持っている人は重症化を避けるために接種を受けていただきたいです。
名古屋共立病院でも、【インフルエンザにかからない・うつさない】ため、ワクチン接種を推奨しており、多くの職員が接種しています。
いつ接種するのが良い?
個人差はありますが、抗体ができ始めるのがワクチン接種をしてから約2週間後。流行し始める前が望ましいので、毎年12月上旬までに接種を終えると良いでしょう。
インフルエンザの流行ピークは3月までと言われていますが、2024年度のように大流行している時期は、今からの接種でも遅くないでしょう。
風邪かなと思ったら
似た症状だからと、過去に処方されたお薬を飲み切らずに、古いお薬を飲んでいる方もいます。
ウイルスや細菌それぞれに効果のある薬があり、『ウイルス性の風邪には抗生物質は効かない』というように、異なった原因で異なった目的のお薬を飲んでいる場合もあります。
正しい診断・処方を受けるためにも、体調が悪いと感じたら、自己判断せずに病院を受診することをお勧めします。
環境要因によって大きく左右されるウイルスの蔓延。原因が分かっていれば、できる対策も多くあります。小さな心がけがご自身の健康を守ってくれることとなるでしょう。冬の厳しい寒さを乗り切るためにも、予防策を徹底して、今年の冬も元気に過ごして春を迎えましょう!😊
監修:名古屋共立病院 院長 堀 浩
※1 平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院))