知っておきたいスタンド・オフ兵器7つのこと

1. スタンド・オフの意味

ニュースなどで、スタンド・オフ兵器だとかスタンド・オフ・ミサイルとかという言葉を見たり聞いたりすることがあります。stand-offとは、「離れている」というくらいの意味ですが、なんだかピンとこない方もいるかもしれません。

ざっくり言ってしまえば、スタンド・オフ兵器とは、敵の防空ミサイルの射程圏から遠く離れた(スタンド・オフ)場所から攻撃可能な兵器のことです。

実は、スタンド・オフ防衛能力(防衛省による呼称)の明確な定義はありません。ただ、「国家防衛戦略」によると、"島嶼部を含む我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して脅威圏の外から対処する"能力であると言及されています[1, 強調引用者]。

また、あるスタンド・オフ兵器の評価書には、"着上陸侵攻事態等に際して、相手の脅威圏から離れた地域に展開し、遠方の海域の防空能力の高い相手方の海上目標及び相手方の地上目標を攻撃する"という説明があります[2, 強調引用者]。

スタンド・オフ兵器運用イメージ, 我が国の防衛と予算(案) 令和5年度予算の概要, 防衛省資料参考.

中国は、台湾有事の際に米国が関与するためのコストをつりあげるため、第一列島線・第二列島線内で接近阻止/領域拒否(A2/AD)を構築しています。中国沿岸部や南シナ海の人工島に配備されたHQ-9やロシア製S-400地対空ミサイル、加えて水上艦艇に搭載されたHHQ-9艦対空ミサイルがその役割を担っています。

一方で、A2/ADというアプローチを、対中戦略として組み込んでいくことのメリットは、以前から専門家によって指摘されていました[3]。それゆえ、昨今の我が国のスタンド・オフ防衛能力の拡充は、まさに"相手の能力に着目した防衛力の構築"と言えるでしょう[4]。


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