『喜劇の手法』をひらいてみよう
今回は、喜志哲雄先生の『喜劇の手法 笑いのしくみを探る』を読みます。
「読む」といっても、ニシワキが解説できるわけもないので、「ひらく」くらいになりますが。気になったところに付箋を貼ったり赤線を引く作業を、note上でやってみるといった程度です。
まず、取上げられている作品と、ヒントになりそうなカ所を少し抜き出してみましょうか。
Ⅰ だます―喜劇と意識
1【変装】 「十二夜」「ヴェローナの二人の紳士」「じゃじゃ馬ならし」
2【一人二役】 『主人二人の召使アルレキーノ』『ラン・フォー・ユア・ライフ』
3【嘘】 『真面目が大事』『恋敵』『田舎女房』『嘘つき男』
4【変身】 『じゃじゃ馬ならし』『ピグマリオン』
喜劇は、《観客にはすべての状況が把握できるている》から笑うことができる。この優位性が、喜劇の基本構造ということですね。逆にそれは、「観客にすべての状況が把握できていると思わせておく」ことができれば、そこから世界をひっくり返して見せることも可能かもしれない。
前回、演劇的仕掛けについて「主題と渾然一体となって全編にみなぎり渡る舞台上の知恵ある仕掛け。そのことによって観客に新しい体験をさせる手段」といった井上先生も喜劇の人でした。(もちろん喜劇だけじゃないけど)
井上作品も、世界をひっくり返す、笑いが驚きや恐怖に変わる、すごさがある。またそれは、感情をゆさぶるだけではなく、観察や思考を促すことにもなるだろう。
続く章も、小見出しと作品だけ拾っておきます。
ただただ自分が検索しやすくする為ですが。
巻末に50音順の索引があるのですが、「仕掛け」ごとに作品を上げておくとあとあと便利なので。
Ⅱ 迷う―喜劇と無意識
5【双生児】 『十二夜』『間違いの喜劇』『メナエクムス兄弟』
6【偶然の一致】 『守銭奴』
7【反復】 『自由交換ホテル』『花粉熱』『私生活』
8【循環】 『おかしな二人』『ゴドーを待ちながら』
9【逆転】 『田舎女房』『シルヴィアとは誰か』『慇懃な恋人』
Ⅲ 間違える―喜劇の状況
10【誤解】 『検察官』『間違いの喜劇』『警部来訪』
11【身代わり】 『シラノ・ド・ベルジュラック』『尺には尺を』
12【自縄自縛】 『壊れ甕』『オイディプス王』
13【誤算】 『一生にただ一度』
Ⅳ 語る―喜劇の言葉
14【傍白】 『守銭奴』
15【アイロニー】 『悪口学校』『櫻の園』
16【沈黙と間】 『昔の日々』
17【機智合戦】 『空騒ぎ』『世の習い』
18【スラップスティック】 『薔薇と棺桶』『略奪』
Ⅴ 考える―喜劇についての喜劇
19【バーレスク】 『乞食のオペラ』『三文オペラ』『ミカド』サヴォイ・オペラ
20【パスティーシュ】 『博愛主義者』『人間嫌い』
21【劇中劇】 『舞台稽古』『女中たち』
22【夢】 『真夏の夜の夢』
23【ハッピー・エンディング】 『あらし』
…ふぅ、けっこう疲れた。
それに、思いの外時間がかかった。
ん? なぜこのくらいの書き写しに時間がかかるかって?
それは、面白くて読み返してしまうからさ! わっはっはっはっはっ…。
今回は、もうこれでいいか。
ダメか、もう少しメモしておこう。
不勉強なニシワキは、そのタイトルをこの本ではじめて知った作品も多い。それでも、いくつか自分が扱ったことのある作品を読んでみる。
たとえば10の【誤解】で扱われるゴーゴリ『検察官』。
と、町の人々の【誤解】が、喜劇としてどのように仕組まれているのか(観客の視点の優位性)を丁寧に解説し、同じく【誤解】が構造として仕組まれている『警部来訪』を紹介したのちに、こう続く。
この本自体の仕掛けとしては、このように喜劇、あるいは戯曲を成立させる仕掛け(この章では【誤解】)を一つずつ取上げ、同じ仕掛けを用いている他の作品と比較して、その構造に対して意識的になるよう構成されている。
特にここでは、構造としては同じでも、作品と観客の関係によって喜劇にもなればスリラーにもなるという話。
チャップリンの名言「人生はクローズアップで見れば悲劇、ロングショットで見れば喜劇」にも通じる話ですなぁ。
一つ確認。
構造は、物語の筋とは、ちょっと違うということ。
物語の筋ももちろん絡んでくるけれど、ここでいっているのは、観客の視点をどこに置くか、どのように物語の過程を認知させていくかということだ。
それから井上先生が言っているのは、それだけはなく、たとえば音楽の使い方、歴史や時間の切り取り方、劇場空間としての効果といったことも含めての演劇体験の構造、仕掛けと言っているのだとニシワキは考えている。
はい。
この『喜劇の手法』から、もう少し続けます。
急がないぞぉ。
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