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減る階段


 これは数年前、とある大学に通うAさんから聞いた話です。

 大学が夏期休暇に入り暇をもて余したAさんは、同じく暇をもて余す友人と二人で肝試しに行くことにしたのだそうだ。

 肝試しといっても心霊スポットなんて大したものじゃなく、深夜に近場にある古びた神社へ行って写真を何枚か撮影し帰って来るだけという単純なもので、その神社には何も曰くなどなくただ単に近かったから行ってみた程度のものでした。

 その夜Aさんたちは神社の長い階段の下に集合した。深夜でしたが夏独特の蒸し暑さで、首もとが軽く汗ばみ深いな蚊の羽音、来て早々に違う意味で、こんな所に来るんじゃなかったと後悔した。

 暑い中、長く急な階段を上らなければならない。そう考えると少々げんなりしたが、折角来たのだからと神社に向かう事にした。境内へと続く石階段がなんとなく気になり、段数を数えながら登って行った。

 丁度30段目を数えたところで階段が終わり、神社に到着した。

 暗闇の中、懐中電灯に照らし出される神社は迫力満点で、暑さと階段のきつさにだだ下がりだったテンションは一気にヒートアップした。

 Aさんたちはデジカメとスマホで各々思い思いの風景を撮影し、最後に御賽銭を投げ込んで神社を後にした。
 神社を帰る際も、長い階段の段数を数えることになった。友人と共に、小声で段数を数えながらゆっくりと階段を降りた。

 27段目。そこで階段は終わった。上るときより3段も少ない。

 おいおいそんなはずないだろ。そう思ったAさんは友人に何段あったかを確認したのですが、やはり友人も27段しかなかったと言うのです。

 ぞくりと悪寒がしましたが、きっと二人とも数え間違えたんだ、もう一度数えながら階段を登ってみようとAさんが言い、二人で再び境内を目指し登って行ったのです。

 やっぱり30段ある……。
そして今度は慎重に一歩一歩踏みしめながらゆっくり階段を降りた。

26段。

 さっき以上に段数が少なくなっている。

 さすがに不気味に思ったAさんたちは、焦ってたから数え間違えたのだと、無理やり自分たちを納得させ逃げるように神社を後にしたのでした。

 なんとなく不気味な現象に、釈然としない思いを抱えたままでしたが、お互い思い出したく無かったのでしょう、その話題を口にすることなくその日は早々に解散し自宅へ帰ったそうです。

 しかしこの不思議な出来事の原因はすぐに判明したのでした。後日確認した神社の写真。その中にあった階段と鳥居を写したもの。

 そこには 、階段の最上段に折り重なるように倒れる何か。暗がりの中撮った写真に映ったそれは不鮮明で確証は無かったのですが、そのシルエットはまるで人のような形。
 そう、Aさんたちはあの夜、"何か"を踏みしめ神社の境内へと入ったのだ。

 それ以来、この神社には絶対に近づかないようにしているとのことでした。


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