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【探偵】明智小五郎の事件簿の読む順番

日本を代表する名探偵といえば世代問わずで「明智小五郎」の名前が挙がるのは異論はないかと思います。

少年探偵団を率いて、世紀の大怪盗:怪人二十面相と知略を尽くして戦う名探偵として昭和初期の戦前戦後の子供たちのヒーローとして人気を博し、未だに名探偵の金字塔であります。

明智小五郎は、日本の推理小説のパイオニア江戸川乱歩が生んだ名探偵です。

江戸川乱歩全集の全てに明智小五郎が登場するわけではありません。
発表当時は、変態小説とも揶揄された「人間椅子」や「パノラマ島奇譚」は、明智小五郎は登場しない短編になります。

改めて「明智小五郎」が活躍する物語を読もうとすると、作品が多すぎて何を読んでよいのかわかりませんでした(笑)

集英社で全12巻で販売されている「明智小五郎事件簿」は、初期作品から子供向けの少年探偵団も含めて要点は抑えていましたが、後半の作品が無かったりしていました。

今回のテーマは、大人向け・子供向け関係なく「明智小五郎」の事件簿を読むとしたら、この順番で読むと良い!という私の独断と偏見を紹介します!
※この記事で紹介する作品は、明智小五郎の事件簿において、私が最低限抑えておくべきと思った作品のみです。
私もすべての作品を網羅できていないので、江戸川乱歩ファンでは必須と思われている名作が漏れているかもしれませんがご了承ください。


■初期・貧乏書生時代

明智小五郎は作品にはじめて登場したときは、着物姿で冴えない風貌な貧乏生活を送っている書生風の理屈高い人物として描かれている(笑)

凶悪で変態殺人犯の怪人たちを戦うような話ではなく、本格推理モノとして秀逸な作品ばかりです。
特にこの4作品は必読だと思います。

・D坂の殺人事件
・心理試験
・黒手組
・屋根裏の散歩者


怪人二十面相などのシリーズから読み始めた私は、初期短編を読んで、ますます「明智小五郎」の虜になりました!
特に「心理試験」は題名の通り、文字だけでも心理戦・頭脳戦に手に汗握る展開で何度でも読み直してしまいました!

■名探偵時代(戦前)

戦前日本のモダンな雰囲気漂う時代。
よく事件が起こって明智小五郎探偵事務所に依頼が来るときには、明智が上海帰りでお洒落なスーツ姿でダンディな風貌で登場する。
初期作品とは異なり、スタイリッシュな名探偵としてのイメージが確立された。まさに全盛期の明智小五郎の時代と言える

※作品の表紙絵は、ポプラ社:少年探偵シリーズ(絶版)で使われていたもの。いくつか出版社が販売していますが、このシリーズの表紙を上回る絵柄に出会えていないので、再販を希望します!

・蜘蛛男

モダンでスタイリッシュな探偵の明智小五郎として最初に対決した強敵の怪人ともいえる「蜘蛛男」
殺人を芸術と考えるまさに狂気の殺人鬼。
物語の冒頭で新聞広告の仕事募集を募って自分好みの女性を物色するなどもし現実にあったなら恐ろしい。
 物語上では、劇場型犯罪として世間を恐怖に陥れた「蜘蛛男」との対決の結末は注目です。
 怪人二十面相でもよく出る「ピストルの弾は抜いておいたよ」という明智小五郎の特技もこの作品から見れます!

・黄金仮面

作品の発表ほぼ同時期ながら事件の順序性としては「黄金仮面」「魔術師」「吸血鬼」であるため、黄金仮面をこの順番で紹介した。
 黄金仮面の正体は、江戸川乱歩ファンには常識であるが、未読の人もいるかもしれないので敢えて伏せておきます。
 黄金仮面と明智小五郎の知略を尽くした戦いは、どちらも相手に勝ったと思った矢先に立場が逆転したりと互角の勝負。
 黄金仮面から宝石「志摩の女王」を奪うと犯行予告を受けた大富豪の娘:大鳥不二子が、黄金仮面と恋仲になり、捜査をかく乱したりと明智小五郎もかなり手こずる展開に・・・・。
ストーリー展開が、後の「怪人二十面相」にそのまま昇華しているような気がする。
「名探偵VS大怪盗」という構図をはじめて日本に持ち込んだ作品ではないだろうか? まさに日本の推理小説の金字塔です。

・魔術師

「魔術師」を名乗る復讐鬼が、玉村家を襲う。
殺害予告のために、10→9→・・・→3→2→1と毎日、玉村家のどこかに数字を表示させて恐怖を煽らせたり。
 時計塔の窓から首を出した刹那、時計の針が首を挟むように仕向けたり。
復讐実行のために、邪魔になりそうな明智小五郎を誘拐する「魔術師」一味の犯行、仮面の部屋・・・など。見どころ満載。
また、この作品では、明智夫人となる文代さんが登場する。
その出会いは、禁断の恋でもあった
ドラマチックな展開満載の明智小五郎事件簿の中でもベストと思う作品です

・吸血鬼

ポプラ社では題名を「地獄の仮面」としていた

冒頭で、ヒロイン倭文子(しずこ)を巡り、毒の入ったワインでロシアンルーレットの勝負をする二人の男(三谷と岡田)の描写から話が始まる。 
この勝負に負けた岡田の水死体が見つかる。
その後、倭文子の周りでは、顔が骸骨のように不気味な「くちびるが無い男」が現れ怪事件が起こるようになる・・・。
「魔術師」事件後の話ということで文代さんが、明智探偵の助手として登場。
そして、少年探偵団シリーズに欠かせない「小林芳雄」少年もこの話が初登場になります。
また怪人二十面相の逃走でお馴染みの風船や気球に乗って空へ逃げる発想も、この作品で原型が出来たのかもしれない!
明智小五郎シリーズのプロットがいろいろ登場する必読の作品!

・人間豹

「人間豹」こと「恩田」という人間離れした牙や身体能力を持つ怪人が登場する。
文代さんが捕まってしまい、サーカスの猛獣の折に入れられてしまうなどトラウマ回もあり・・・
明智小五郎事件簿シリーズに登場する怪人の中でも最凶最悪のストーカー的な殺人鬼。
ジュブナイル作品で人間豹を読んだ時のインパクトは凄かった(笑)

・黒蜥蜴

ポプラ社では題名を「黒い魔女」としていた。

数々のドラマや映画で明智小五郎と名勝負を繰り広げる女怪盗「黒蜥蜴」
美しいものを収集する盗賊の首領なのだが、美しいものとは宝石や絵画、アートだけではなく、美しい若い男女もその標的であるという・・。
 予告状を送りつけて、堂々と明智小五郎と会話をし、勝負の掛けとして、明智小五郎には「探偵という職業」を掛けさせるなど、心理戦も面白い。
「黄金仮面」と並んで、宿敵との対決を楽しめる娯楽作品

・怪人二十面相

明智小五郎といえば「怪人二十面相」。その逆もしかり・・・。
光と闇のような存在の名悪役!
「黄金仮面」や「黒蜥蜴」という強烈なキャラクターをさらにポピュラーに仕立て上げたような感じでしょうか?
子供向け明智小五郎シリーズの第一弾にして金字塔!
ここから数10作品の少年少女向け(ジュブナイル作品)が生まれる。
大人向け明智小五郎事件簿の途中、このタイミングでこの作品だけは、読んでおくべきだと思います!


・悪魔の紋章

ポプラ社では題名を「呪いの指紋」としていた

実業家の川手氏に「お前の一家を根絶やしにする」と脅迫状が届く。
「三重渦状紋」という珍しい指紋を持つ人物が犯人とされるが・・・
かなりインパクトのある指紋に引き込まれる作品。
宗像教授という明智小五郎と同等に有名な探偵との共闘も見もの。

・暗黒星

港区麻布の洋館に住む資産家・伊志田家の家族団らんで家族旅行のフィルムを上映している最中に、姉妹の右目が焼け焦げる映像が流れる・・。これをきっかけに伊志田家に怪事件が連続する。
 時折、蝙蝠男が屋敷に現れる・・・
「暗黒星」とは「光を放たないが故にその存在が目立ない」象徴として犯人を揶揄している。

・地獄の道化師

「道化師」「ピエロ」のイメージが恐怖になってしまうトラウマな作品(笑)
「地獄の道化師」が放った言葉
「この世に絶望した人間の気持ちがお前にわかるか!」
が強烈なインパクトで共感もするしトラウマにもなる・・・。
最後まで読むと、そのストーリー性に脱帽。
明智小五郎の事件簿の中でもベスト3には入ると思う。


■名探偵時代(戦後)

戦後の江戸川乱歩は主に「青銅魔人」「透明怪人」など少年探偵団シリーズで明智小五郎事件簿を執筆していた。
その合間に、大人向け作品を2つ残している。
40代~50代になりますます渋い雰囲気になった明智小五郎の最後の作品です。

・化人幻戯

ポプラ社では題名を「白い羽根の謎」としていた

ヒロイン由美子をめぐる愛憎劇。
熱海の別荘でパーティー中に望遠鏡を除いていると先にある、断崖から男が身を投げる姿を目撃したり、殺される直前に「白い羽根」が入った封筒が送られるなど謎と伏線が散りばめられており本格ミステリという内容。

陣内孝則さんが明智小五郎を演じたテレビドラマ「吸血カマキリ」で原作ほぼそのままで面白かった記憶がある。


・影男

(大人向け作品としては)明智小五郎の最後の事件簿が、この「影男」である。
はじめて読んだときに、上流階級の人たちが夜な夜な集まる地下の道楽で繰り広げられる「闘人」(いわゆる地下格闘技?)の描写がインパクトあった記憶ある(笑)
「影男」が狙うのは資産家などに限られ義賊の側面もありそうだが・・。

■まとめ

すべての明智小五郎事件簿を読んだわけでもなく、これから読み直す作品もあるのだが、この順番で最低限の作品を読むと 明智小五郎シリーズの全体像が見えてくるのではないかという提案でした。
本当にポプラ社の表紙絵を復刻版として再販して欲しい!







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