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声を大きくしたければ声を小さくして下さい【配信の声を大きくする方法 #5】

皆さんこんにちは!今日もVTuber様のオーディオトラブルを解決しまくり!怪傑姫(かいけつひめ)です。

今回は「配信の声を大きくする方法」の第5回です。


コンプレッサーと副作用

声を大きくする方法を調べると、YouTubeでもブログでも「コンプレッサーを使おう」という内容がすぐに出てきます。たしかにコンプレッサーを使う事で、歌やトークの音量を全体的に底上げする事ができます。

しかし、コンプレッサーには副作用があるのです。

副作用というと悪い効果のように聞こえますが、実はその効果を好んで音楽に取り入れる事もあるので、適材適所ではあります。

VTuberが雑談をする時の音量底上げを全てコンプレッサーに任せてしまうと、副作用としか呼べないような現象が発生するので、コンプレッサー一つで音量問題を解決する事は、あまりおススメできません。

その副作用を回避するためには、コンプレッサーの前にあるひと工夫をする必要がありますが、まずはコンプレッサーの仕組みを解説しますので、そのひと工夫は記事の後半で解説します。

コンプレッサーは何のため?

声を大きくすると言っても、何がしたくてコンプレッサーを使用するのかあなたは理解していますか?

最近ではAG03や配信に特化したオーディオインターフェース兼ミキサーに、ボタン1つでかけられるコンプレッサーが搭載されています。しかし、自分の話し方や声質に合わせて、さらに限界まで声を大きくするためには、仕組みを理解して個別に設定を詰めていく必要があります。

詳細な設定は次回以降に解説するとして、今回は仕組みの概念を説明します。コンプレッサーは音を大きくするエフェクターとして認識されていますが、大間違いです。

音を小さくするものです。

コンプレッサーは「圧縮する」という意味の「コンプレス」から来ています。その機能は増幅ではなく圧縮という事です。

音を大きくするためには音を小さくせよ。なんて禅問答みたいですよね。
しかし、音響工学はとんちではなく科学です。なぜ音を圧縮して小さくすると大きくなるのか説明しましょう。

これ以上大きくできない音

サンプルとしてこのような音声を用意しました。

波形を見るとそこまで凹凸が激しい訳ではありませんが、このセンテンスの中でも音量差があるのが分かりますね。

第1回の記事で書いた「常に大きい音が一番偉い」という原則は、数分という規模だけでなく、一文や一単語においても適用されます。この波形の面積が大きくなればなるほど、視聴者にとっては声が聴き取りやすくなるという事です。

ここでOBSのメーターが全て真っ赤になる

しかし、丸の部分が0デシベルに達しているので、これ以上フェーダーを上げて音を増幅すると、0デシベルを超えた部分が音割れしてしまいます。

では、先ほどの禅問答に答えるために音を小さくしてみます。

単純に12dbほど音量を下げた画像

小さくなりましたが、ただ面積が減っているだけで、一切音は大きくなっていませんよね?このまま音を小さくし続けていくとやがて無音になり、
沈黙!!それが正しい答えなんだという事になってしまいます。

ここがネックでこれ以上音量を上げられない

この行き詰まり感溢れる状況を打破するために、丸の部分だけ小さくする事が出来れば何とかなりそうな気がしませんか?そんな気がしないあなたのために一つ例え話をしましょう。

ゾルディック家登場

暗殺一家の5兄弟

ここにとある暗殺一家の5兄弟がいます。この5人で集合写真を撮る事になりました。長男と次男が一番長身なので、彼らに合わせるとどうしても下の3人があまり映らない写真になってしまいますね。

かと言って、下の子達を優先すると、長身組の顔が見切れてしまいます。

こんな写真を5兄弟のおじいちゃんに見せたら、念で出来た龍に殺されてしまうかもしれません。

あなたがカメラマンならどうしますか?長男と次男に屈んでもらうのはどうでしょう?地べたに座ってもらっても良いかもしれません。とにかく頭の位置が低くなるように調整してもらいましょう。この場合、次男の体型からくる屈みにくさは無視するものとします。

するとこうなります。

下の3人に合わせて上の2人が頭の高さを調整した状態

ここまで来ればあとはカメラの画角を下げるだけです。

5兄弟全員が綺麗に写真に納まるようになりましたね。この、身長を自動的に調整してくれる役割がコンプレッサーの機能です。

まずは大きい音だけ小さくする

先ほどの波形に戻りましょう。

0dbに達している丸の部分が、集合写真で言う長身組に当たります。ここだけに狙いを定めてコンプレッサーで圧縮します。詳細は今後の記事で説明しますが、コンプレッサーのパラメータで、「音が何デシベルを超えたら何分の1に圧縮する」という条件を設定します。

「身長が何センチ以上の人は何センチ屈んでください」という指示です。これにより、他の小さい音に影響を与えずに大きい音だけを小さくする事ができます。

コンプレッサーをかけた後の波形がこちらです。

大きい音だけ3db圧縮した後の波形

大きい音が小さくなっていますね。しかし、このままでは波形の形が変わっただけで、全体の音量としては小さくなっています。

先ほどの集合写真の時は最後にどうしたか覚えていますか?そう!被写体の面積が大きくなるように画角を下に動かしましたね。

小さくなった分全体を大きくする

3dbほど圧縮した事によって、0dbまで3dbの余裕が生まれました。という事は、この分は音割れのリスク無しで増幅できるという事です。この小さくなった分を増幅する機能もコンプレッサーに搭載されているので、トラック自体のフェーダーを上げまくる必要はありません。

コンプレッサーで3db増幅した後の波形がこちらです。

大きい音だけ3db圧縮した後に全体を3db増幅した音の波形

処理前と比較すると、明らかに波形の面積が大きくなっていますね。波形の面積が大きくなっているという事は、声が大きく聞こえている時間がより長くなっているという事です。

これが「コンプレッサーで声を大きくする」という処理の意味です。

ただし、これに味を占めてコンプレッサーをかけ過ぎると、困った事が起こります。それが冒頭で言っていた副作用です。

副作用の詳細と回避策について解説したいのですが、思ったより記事が長くなってしまったので、申し訳ありませんが続きは次回に回したいと思います。

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